【連載】Gibson CustomとHistoric Reissueの軌跡 (第4回)

栗田隆志 | 2020.05.15 - 特集記事
第四回
人気木目のパラダイムシフト

 

1996年を境に、日本では輸入代理店の尽力により、ローカルの嗜好とこだわりを反映させた、日本市場向けモデルを主軸とした製品展開の新潮流が生まれていたことを前回は述べました。その象徴となるニッチな製品、Les Paul Reissue ’58 Figured Topが企画されました。経時変化によってチェリーが抜けきったサンバーストの色味を再現したレモンバースト・カラーに、ライト・フィギュアド・トップを組み合わせるというリアル志向の心憎い演出がされた仕様です。当時の誌面広告からそのまま引用すると「ヒストリック・コレクションのLP59、LP60リイシューのような鮮やかなフレイム・メイプル・トップではなく、ややうっすらとした木目の仕様である」とあり、今にして思えば、その後にやってくるリイシューの木目の多様化を示唆したものでした。

市場のニーズを掴んだヒストリック・コレクションは、リイシューのニュー・スタンダードとして、サンバースト・レス・ポールの魅力を広く世に知らしめました。その“木目”で売れるスピードが決まるとされる1959 Les Paul Standard Reissueですが、木目のトレンドは不変ではなく、時代とともに変化してきました。

広義にとらえるとギブソンのハイグレード・メイプル材と言えば、Super400、L-5CESなど、アーチトップのバック用となります(特にナチュラル・フィニッシュに使われるもの)。プリ・ヒストリック・コレクション、及び初期のヒストリック・コレクションでは、卸業務の営業担当が「こういうの持ってきて!」と販売店から求められる一般的に人気の高い木目と言えば、そのような柾目の太いストライプでした。今でもストライプ木目のファンがおられることも確かですが、1996年、ストライプ一強が揺らぐパラダイムシフトが起こりました。

80本以上の実在するヴィンテージ・レス・ポールの写真を網羅、しかもその類の本では一般的であった木目が一番美しく見えるアングルの決めショットではなく、全個体が平等に正面、さらに背面もあり!という、ヴィンテージの一級資料と言えるTHE BEAUTY OF THE BURST(発行リットーミュージック 著 岩撫安彦)が上梓されました。潜在を顕在化したヒストリック・リイシューという製品が切り開いた市場に、木目とカラーのバリエーションという無限の組み合わせをもたらしたこの本が、このタイミングで世に解き放たれたのは偶然ではないでしょう。著者が人生の何分の一かを捧げるに値する仕事と確信して、時はまだフィルムカメラの時代、自ら膨大な撮影機材をその肩に全米中のコレクターを訪ね歩いた、その熱の源泉はテッド・マッカーティーの言葉であることが同書には書かれていますが、この本により、皆がストライプを求めて血道を上げる状況に変化が起こり、一般のギタリストの間でも、フレック、板目、柾目という言葉が普通に使われるようになりました。販売店からは「揺れてる波うった木目ないの?」というオーダーが入りはじめ、店頭では「木目が角度によって、出たり消えたりするのがリアルだよね」といった会話がなされ、木目のトレンドはリアル志向に振れていきました。BOTB本カバー(表紙)、ブロックバースト(後のバーボンバースト)といったカラーオーダーも、この本以降に一般的になったものです。

今はインターネット、スマートフォンの普及で、真偽はともかく情報が一瞬で拡散される世の中ですが、まだほとんどの情報源を書籍に頼っていた当時、この本の業界とファンへの普及率と影響力たるや凄まじいものでした。瞬く間にレス・ポール・ファンのバイブルと化し、触発された読者の旺盛な知的好奇心と探求心は尽きることが無く、ハードロック・メイプルとソフト・メイプル、マホガニーの産地などが、一般の人々の間でも広く論じられる素地ができあがりました。こうしてリイシューがカスタム・オーダーのベースとなることで広大な沃野が広がり、新たなビジネススキームが構築されました。

 

Tiger stripe

 

HRM

 

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