【連載】Gibson CustomとHistoric Reissueの軌跡 (第2回)

栗田隆志 | 2020.05.02 - 特集記事
第二回
カスタム・ショップ

 

1991年、トム・マーフィー(1994年退職→2020年再入社)、エドウィン・ウィルソン(2017年退職)により、ギブソンUSAファクトリー内にカスタム・オーダーを受け付ける部門が開設しました。カスタム・ショップの胎動です。

ミュージシャン志望のためナッシュビルに移り住み、バンド仲間から誘われるままにギブソンに入り、リペア~ペイント部門で働いていたマーフィーと、10代からギター・ショップに勤め、リペア、カスタマイズを学んだエドウィンのゴールデン・デュオの誕生でもあります。オーダーの内容によってはマーフィー自身がペイントを行う場合もあったようですが、この時点でカスタム・オーダー専門の工房的なものができたわけではなく、主にオーダーを受ける際の仕様の相談や、受注したオーダーの仕様が生産現場に正しく伝わるようにアドバイスする監督的な立場であったとのことです。

間もなくヒストリック・プログラムと呼ばれるプロジェクトが立ち上げられて、レス・ポール、カーヴドトップ、コリーナ・モデル(フライングVとエクスプローラー)等のスペックを正確に再現するための調査が開始されました。このシリーズを押し上げる原動力になったのは、マーフィーが陣頭指揮を執り1993年1月のNAMM(米国で行われている楽器のトレードショー)で、お披露目となった新生1959レス・ポール・リイシューでした。
ディープジョイント(LONG NECK TENON)という、指板の末端より長いネックの中子をリズム・ピックアップの位置まで奥深く差し込んだヴィンテージ同様の構造を採用するなど、その内部構造までもが再現されていたため、ヴィンテージを知るディーラー、プレイヤー、ファンから注目されました。詳しくは後で述べますが、この市場の趨勢に後押しされて、リイシュー・ビジネス拡大の成長戦略が固まり、1993年12月、ついにカスタム・ショップとしての独立したファクトリーが準備されて、その立ち上げに前述の2名を含む7名程度の選りすぐりの人材が集められました。

直後、この部門の総責任者に任命されたのが、1993年当時、ボーズマン(現在はアコースティックギター生産の拠点になっているモンタナ州の地域)にあったマンドリン製作部門の責任者としてギブソンに入社したリック・ゲンバー(2017年退職)で、カスタム・ヒストリック・アートという主要製品群に加えて、エース・フレーリー、ジョーペリー、スラッシュなどのシグネチャ・シリーズを拡充することでカスタム・ショップを成功に導きました。

リック・ゲンバーの求心力と人と人との輪を重視する人間性により、カスタム・ショップには常に多くのミュージシャン、ヴィンテージ・コレクター、ディーラーが集まるようになり、その輪は、やがて日本を含む世界に拡大し、本国以外のリージョンのシグネチャ・モデル、ローカルの嗜好に合わせたリミテッドラン、実在するヴィンテージのクローンを製品化するコレクターズチョイスといった製品を産み出し、カスタム・ショップは存在感を増していきました。

リック・ゲンバーが早くから目を付けたところに、ギブソン・ブランド、ヴィンテージギター、音楽の、いずれにも造詣の深い日本があげられます。このため1995年頃からは日本市場にも重きを置く政策がとられ、YCS 1968 Les Paul Custom(1996)、Burstbuckerピックアップ(1996)、Tak Matsumoto Les Paul(1999)に代表される日本人シグネチャ・モデル等、先ず日本に初期導入して以後グローバルに展開されるという新潮流が生まれました。日本とカスタムの関係は緊密になり、双方による往来が頻繁になったことで、日本のディーラーの渡米によるファクトリー・ハンドピック、カスタムの代表の来日による日本のディーラー訪問、セミナー・イベントが盛んになり、双方の理解を深めていくことになります。

「私たちはファミリーだった」 カスタムの立ち上げ時から働いていた女性社員、パトリシア・スタンレーは今年2020年にリタイアする際にそう言いました。この言葉に集約されるように、先見の明があるリーダーの下で、手間ひまをかけた仕事を楽しむかのように、日々黙々と製作に取り組むクラフツマン、それを支えるスタッフらの存在があり、さらにディーラー、ディストリビューター、コレクター、そして名だたるアーティストがサポートに加わることで、カスタム・ショップはその存在を確固たるものにしてきました。

 

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Long neck tenon

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