【連載】Gibson CustomとHistoric Reissueの軌跡(序説)

栗田隆志 | 2020.04.28 特集記事
第一回(序説)
「全く同じ」を求めることで、作り手、買い手がともにヴィンテージ・レス・ポールについて知見を深めてきた。

 

昨年2019年に60th Anniversary 1959 Les Paul Standard、そして今年2020年には、60th Anniversary 1960 Les Paul Standardと、2年連続でサンバースト・レス・ポールのアニバーサリー・モデルがリリースされました。どちらもブランドの意匠であるヘッドストックのギブソン・ロゴとシルクスクリーンが刷新されたことにより、ヴィンテージ・オーナーの評価軸で見ても、よりリアルな印象を与えると思います。

 

これらの出自となるギブソン・カスタムの人気シリーズ、ヒストリック・コレクション(現在はヒストリック・リイシューと呼ばれる場合が多い)1959 Les Paul Standardの誕生から、すでに四半世紀を超えました。このシリーズによって、レス・ポールの奥深い世界にハマったという方も多いかと思います。同モデルが長きにわたり人々から愛され、支えられて、ここまで続いてきたことに深く感謝の意を表し、同じ時系列の共通体験を持つ古くからのファンの皆様とは、その記憶を共有するために、また近年ファンになられて、もっと深く知りたい、掘り下げたいという知的欲求がある方々には、それに応えるために、その軌跡を記しておきたいと考えました。

「ヴィンテージには、ヴィンテージにしか出せない音がある」多くのギタリストが語る、的を射た表現かと思います。対して現行製品については「新品には、新品にしか出せない音がある」とは言われません。そこで日々、演奏と制作を生業とする、ヴィンテージ・レス・ポールとヒストリック・リイシューのどちらも所有、使用しているトップ・プロ・ギタリストは新品をどのように表現しているのか、そのコメントを集めてみました。

「機能性という意味では進化した現在のギターの方が弾きやすい」

「現代的な使いやすさと、伝統的な魅力が両立している」

「よく似ているということだけではなく、ギターとして凄く良い」

「違いはあるけど、どちらが良いという話ではなくなってきているくらい完成度が上がってきている」

「新品はどれもピッチがいい」

仕事道具だからと言ってしまえばそれまでですが、リイシューをヴィンテージへの興味を掻き立てる代替品的な存在として捉える視点に加えて、実用レヴェルでハイクオリティな楽器として認識されているようです。

「ヴィンテージ・レス・ポールと全く同じ」を完全なリイシューとするならば、2020年の最新スペックでも「まだまだ」という声があるかもしれません。しかし、その「全く同じ」を求めることで、作り手、買い手がともにヴィンテージ・レス・ポールについて知見を深めることができたという考え方もできます。

今ヴィンテージと呼ばれているギターが、当時すでに完成度の高いものであったからこそ、その「全く同じ」を目指す作り手側はヴィンテージを深く学び、試行錯誤を繰り返してリイシューの完成度をあげてきました。そして市場には、その進化を楽しむという空気ができていき、供給側と需要側が相見互いに四半世紀かけて育てた結果、前述したコメントに見られる「良いギター」として認められるに到ったと言えます。

楽器を大別すると、音楽性を高める楽器と演奏性を高める楽器があると言われます。皆さんにとっての「良い楽器」はどちらでしょうか? その答えは「どんな音楽が好きか」、「何を聴いて育ってきたか」、「何を弾きたいか」で見えてくるはずです。

「ヴィンテージ・ギターの研究は、まるで考古学」とは、かつてのヒストリック・プログラム・マネージャー、エドウィン・ウィルソン(2017年カスタム・ショップを退職)の言葉です。残された資料の検証と分析により歴史をひも解きながら実体を明らかにしていく。そして最新の情報と技術で最高の製品を作ったとしても、研究を続けていくうちに新たにわかってくることがあるし、技術革新や最新機器の登場で、新たにできることも増していくので尽きることがないという意味です。今では商取引が制限されてしまった材、産業の進化により使われなくなった素材、環境規制により昔とは成分が変わってしまった塗料があるという現実と、1950年代とはまるで異なる流通の規模、範囲、方法という背景から、供給を絶やさず、全世界に製品を流通させる製品として「全く同じ」を実現するのは至難の業です。ですが、時代が違うから「同じモノはもう作れない」と言っても詮無きことで、それでも「全く同じ」という永遠のテーマに近づくために、世界のコレクター、ディーラー、そしてミュージシャンら、同時代を生きるシンパの方々による協力体制が得られたことは、製品にとってたいへん恵まれたことでした。人が人を呼び、新製品を企画する上で必要となれば、喜んでヴィンテージ・ギターを持って駆けつけてくれる人の輪が広がっていったのです。本当に良いと思ったものを、世間、他人と価値共有したい、それを次の世代へと繋げたい。この類まれな作り手と買い手のコミュニティは自然発生したのではなく、人と人を結びつける役割を果たした環境と人材ありきでした。次回は、そのカスタム・ショップ(Gibson Custom)について振り返ってみましょう。

60th Anniversary 1960 Les Paul Standard

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