
創業者ファミリーの故郷・ギリシャで、「共鳴」を意味する言葉にも通じるEpiphone(エピフォン)。創立150周年を迎える2023年、この時代に鳴り響くエピフォンの「サウンド」を伝えるため、数々のエピフォン・プレイヤーが登場する「THE SPECIAL COVERS」を展開します。「共鳴・反響」「重なるサウンド」「夢を受け継ぐ」というブランドテーマに沿ったスペシャルインタビュー。第10回目は関口シンゴと山本幹宗が登場。Shingo Suzuki、mabanuaとともにOvallとして活動しながら、藤原さくらやあいみょんをはじめとした幅広いアーティストのサポート・プロデュースを手掛ける関口と、銀杏BOYZやエレファントカシマシらをサポートし、自身のプロジェクトであるsunsiteや好芻でも活動する山本は、それぞれエピフォンを代表するホロウボディのギターであるCasino(カジノ)とRiviera (リビエラ)のオーナー。自身のヴィンテージギターとエピフォン150周年を記念して製造された「Casino Vintage Sunburst 」現行モデルの 「Riviera Sparkling Burgundy」を弾き比べてもらいながら、ホロウボディの魅力について、思う存分語り合っていただきました。
[共鳴・反響] 運命的なギターとの出会い
――まずはお二人が今日お持ちいただいたギターを手にした経緯を教えてください。
関口シンゴ(以下、関口) 実は20代前半のときにいただいたギターなのですが、それまで箱モノ(ホロウボディ)をほとんど弾いたことがなかったので、当時お世話になっていたリペアマンの親方のような方(以下、おやっさん)に「いい箱モノないですかね?」と相談したら、「ちょうど倉庫に眠っているのが1本あるから、調整して使っていいよ」と言われたのが出会いでした。その人が言うには、このギターはもともと前の持ち主が修理を頼みに来たものの、修理代が高額で払えず、その代わりにギターを置いていったみたいで。その後、その人とは連絡が取れなくなって倉庫に眠っていたそうです。初めてこのカジノを弾いたとき、とても良くて感動したのを覚えています。


――関口さんのギター紹介動画を拝見したんですけど、このカジノは泡盛と交換したとか。
関口 そうなんです。当時、家庭教師のバイトをしていたのですが、生徒が沖縄出身の子で、成績が上がったときに泡盛をいただいたのですが、僕はお酒が飲めないんですよ。でも瀬戸物みたいな瓶に入っていて、とても良さそうなお酒だったので、「これおやっさんなら飲むかな?」と思い持っていくと「関口さん、これは大変な代物ですよ」と言われて、ちょうどその日に箱モノの話をしたので、ギターの代わりに交換してもらいました。もうそのおやっさんは亡くなられてしまったのですが、亡くなる直前に一度このギターを持っていったんです。あくまでお借りしていたものなので。ですが、「いや、もうそのギターは使ってください」と言われて、譲り受けました。
――このギターは何年製のモデルになるのでしょうか?
関口 おそらく1980年代の日本製。実際に買った人とお会いできていないので正確なことはわからないのですが、おやっさんが言うにはそれくらいなのではないかなと。あと、このギターの表の塗装は剥がしているんですよ。
関口さん愛用のヴィンテージ Casino
山本幹宗(以下、山本) ジョン・レノン・スタイルですね。
関口 そうなんです。だから音の鳴りがアコギみたいで。部屋で弾く際はアンプを通さなくてもいいんです。あとブリッジはおやっさんの工場の庭に生えていた、柿の木で削り出したもので。その背景もあって、なんだか温かみがあり、とても気に入っています。もちろん、元から付属しているブリッジも抜けが良くていいんですけど、1人で弾くにはこのブリッジが馴染んでいますね。

――山本さんのリビエラについてはいかがですか?
山本 これは2020年に買いました。ちょうどコロナ禍に突入して、やれることに制限がかかったときに、むしゃくしゃするので、楽器でも買おうと思い立ちました。そこでいろいろ探していたらちょうどリビエラを見つけて、これだ!と思い、すぐに買いに行きました。


――なぜリビエラだったんですか?
山本 もともとリビエラは、20歳ぐらいのときに、当時の現行のモデルを手に入れて、それからずっと使っていたので、いつかヴィンテージを持ちたいという思いが強かったんです。それで2020年にたまたま自分好みのヴィンテージのリビエラと巡り会えたので、「試奏しに行くので、取っておいてください」と楽器屋さんに電話をして、そのまま楽器代金の全額を現金で下ろして買いに行きました。キャッシュで購入した方が楽器屋さんも喜んでいただけるかなと思いまして(笑)。
――当時は音楽業界のどの業種も大変でしたもんね。このギターは何年製ですか?
山本 1967年製で、いわゆるナローネック※なので、深くグリップして弾くのが好きな僕にとって、ぴったりなギターなんです。アコースティックギターもエピフォンのTexan(テキサン)を使っているのですが、それも1967年製のナローネックで、弾きやすくていいんですよ。
※ナローネック:1965年~1969年に作られた一部のギブソンのギターナット幅が狭いギター。
山本さん愛用のヴィンテージ Riviera
――ホロウボディの魅力についてはどのように感じられていますか?
関口 やはり音の太さや、奥行きの感覚が全然違うので、同じギターでもソリッドギターとは別物という感じはしますね。自分のプレイスタイル的にギターインストも演奏するので、1音で成り立ってほしいときに、フルアコやセミアコを使う割合がかなり多いんです。やっぱりFホール※はついていてほしいなって。
※Fホール:表板の中央付近にあけられている左右対称の穴で、胴の共鳴によって起こる胴内の空気振動を外気に伝えて、豊かな音として響かせる働きをしている。
山本 深みがあるサウンドと、何より見た目が好きですね。機能的な理由でF字に穴が開いているのですが、見た目もいい。ちょっと癖の強いモデルで、センターブロック※が入っているし、ミニハムバッカー※で、フリークエンセイター・テールピース※だし、これが絶妙に合わさっている。やはり、クラシカルなデザインに近い方が正統派でかっこいいですね。
※センターブロック:セミアコの、ボディ中央部分のネックジョイント部からエンドピン部分まで入っている木材。
※ミニハムバッカー:小型のハムバッカーでトレブリーでクリアな明るいサウンドが特徴。(https://gibson.jp/news-events/1738)
※フリークエンセイター・テールピース:低音と高音が段違いに分かれた形状のテールピース。
――山本さんはビートルズをはじめ、ブリティッシュロックがずっとお好きだと思うのですが、エピフォンのギターは常に憧れでしたか?
山本 そうですね。ポール・ウェラー、バーナード・バトラー、ノエル・ギャラガー、みんな使っていますからね。
――20歳くらいのときに当時の現行のリビエラを買ったというお話でしたが、それはどのような経緯だったのですか?
山本 2006年ぐらいから韓国製の当時の現行モデルをずっと使っていたのですが、それは当時お付き合いしていた彼女が買ってくれました(笑)。今そのギターは福岡のFOOLS GOLDというお店にあります。そのお店のオーナーが古くからの友人で、お店を作ったときにリビエラをプレゼントして、飾ってもらっています。そこにはいろんなミュージシャンの方が来るので、みんな酔っぱらってそれを爪弾いているんです。
[重なるサウンド] ホロウボディがもたらしてくれる、音楽との親和性
――お二人とも様々な現場でご活躍されていますが、ご自身の奏でる音楽にホロウボディはどのような親和性をもたらしていますか?
関口 僕はジャジーな現場に呼ばれることも多いですし、Ovallもその中のひとつで。完全なジャズではなく、ジャジーなヒップホップなど、ジャズ寄りのサウンドを求められたときにカジノが一番合うんです。フルアコだけど、いわゆるジャズギターではないじゃないですか。その中間の音が自然と出せるので、そういう現場では一番ぴったりかな。あとは、ソロギタリストの方はたくさんいらっしゃいますが、アコギで演奏される方もいればフルアコで演奏される方もいます。その中で自分の個性を出せるのがこのカジノだと思っています。抜けがいいので、自分が求めているようなジャズのソロギター過ぎない音色で演奏できる。その二つが大きいですね。
――比較的最近、関口さんが関わった作品の中で、カジノの良さがすごく出ている作品を挙げていただけますか?
関口 アレンジを担当した土岐麻子さんの楽曲でも弾いています。明る過ぎず、少し温かみが欲しいときに、クリーントーンで使うことが多いです。藤原さくらちゃんのレコーディングでも結構使いますね。
――あとはやっぱりソロギター、部屋で弾くときは特に親和性抜群ですよね。
関口 それは本当に大きくて、動画をSNSに上げると海外の人から「そのカジノは何年製だ?」とか「どこのやつだ?」っていう質問がめちゃくちゃ来るんですよ。動画で演奏するときはアンプシミュレーターで音を出しているのですが、カジノで弾いた動画はすごく反応がよくて、見た目もあるけどやっぱり音色が魅力的だからだと思います。海外の人の食いつきはすごいですね。マニアックというか、本当に知識欲が感じられて面白いです。


――ご自身の活動とホロウボディの親和性について、山本さんはいかがですか?
山本 基本リビエラを使うときはローコード※をクランチトーン※でジャカジャカ弾いて、そこに全く同じフレーズをアコギで弾いて重ねるんです。僕が作った曲には90%くらいその技法が入っています。ただ、だんだん落ち着いた年齢になってきたので、ウォームな音でリードをとることも増えてきましたね。
※ローコード(オープンコード):開放弦と1〜3フレット辺りの低フレットを含むコード。
※クランチトーン:クリーンとオーバードライブの中間程度の軽い歪みのあるサウンド。
――最近の活動の中で特にリビエラが活躍している作品を挙げていただけますか?
山本 今年出る「sunsite」の新しい曲でもリビエラを使い、ザ・ジャムとスタイル・カウンシルの中間のようなサウンドを出しているので、聴く人が聴けば、「こいつ遂に何のフィルターもかけずに演奏したな」と感じると思います(笑)。あと、先日リリースした僕の兄のソロ(山本政幸『LUCKY』)でも、ほぼ全ての楽曲でリビエラを使っていますね。
――エピフォン150周年を記念して製造されたモデル・現行モデルを試奏しての感想を聞かせてください。
関口 金属パーツがきれいなのはやっぱりテンションが上がりますね。僕のカジノは相当年季が入っているので。あとは感触が全然違う。僕のカジノはネックがもっと薄いので、現行モデルの方が弾き応えがある印象を受けます。そして見た目に艶があるからなのか、音も艶があるように感じますね。
左:関口さん愛用のヴィンテージCasino / 右:Casino Vintage Sunburst (現行モデル)
――ライブなのかレコーディングなのか、ご自身の活動のどんな場面で使いたいですか?
山本 ライブでもレコーディングでもどちらも向いていると思います。もっと弾き込んでいきたい。伸び代が見えますね。
関口 確かに。現行モデルのギターは家で弾いてもいいなと思いました。やっぱりフルアコ特有の鳴りがあるので、家で練習するにもバッチリだと思います。クリーンで弾いてもすごくきれいな音で、エフェクターのノリもいいだろうから、ライブでも使いやすいんじゃないかな。ピックアップもリアの感じと、フロントの丸くてちょっとジャジーな感じが両方いいと思います。
関口 音の抜けがいいですよね。自分のギターと比べるとフレッシュさが全然違う。
山本 そうですね。ヴィンテージはバランスよく鳴るけど、現行はミッドがブリッと鳴る感じ。
左:山本さん愛用のヴィンテージRiviera / 右:Riviera Sparkling Burgundy(現行モデル)
関口 現行の方が艶っぽい音で、ヴィンテージはちょっと乾いた音、でもそれが良かったりする。あとヴィンテージは音がまとまっている印象がありますが、現行のモデルだとレンジが広く、いい意味で分離がちょうどいいです。アタックがある感じも好きですね。自分のカジノに比べてもっと幅広いジャンルに対応できて、ポップスだったらこの一本で補えそう。エフェクターの乗りもよさそうだし、オールラウンドで行けそうですね。
[夢を受け継ぐ] ギターを選ぶときは、ビビッと来る感覚を大切に
――現行品とヴィンテージ、それぞれのよさについてはどのようにお考えですか?
関口 ヴィンテージにはヴィンテージしか出せない、歴史が積み重なってきての音もあるし、総じて音の情報量が多い感じがするものが多いので、説得力を出したいとか、より印象付けたいときには、ヴィンテージを選ぶことが多いです。それに対し、現行モデルは構造がすごくよく考えられている印象を受けました。特にピックアップは今の時代の音楽に上手くフィットしているものが多いと思います。流行りのグルーヴを出したいときにヴィンテージで弾くと、「なにか違う。これじゃないんだよな」ってなることもあって、そういうときに現行のギターで演奏すると、現代のノリにマッチしたグルーヴを出しやすいんじゃないかな。
――現行モデルはちゃんと時代に合わせて移り変わっていくわけですもんね。山本さんはどう感じられますか?
山本 現行モデルは、最新の英知が集結されたギターなので、性能的にも素晴らしいと思います。あとは手に取りやすい価格帯なのもいいですよね。まず、ギターを買わないことには始まらないので、価格帯というのは大事だと思います。
――これからギターを始めたいと思っている人たち、またはもう一度チャレンジしたいという人たちに、お二人からメッセージをお願いします。
関口 なんだかんだ、まずは見た目が大事だと思います。よく「最初に買うギターはどういうのがいいですか?」と聞かれるのですが、これは人それぞれとしか言いようがないので、楽器屋さんやネットで実際に見て、「これが欲しい」と思うことが大事。そういう気持ちが、触りたい、音を出したい、練習したいという衝動に繋がっていく気がするので、見た目はホントに重要です。音ももちろん大事なのですが、特に最初となると、相棒となるギターを手に取りたいかどうかがポイントになってくるかと思います。

山本 僕は最初の2年間くらいはギターを担いで鏡の前に立っているだけでしたからね(笑)
関口 それだけでも嬉しいですよね。ビビッと来る感覚は大事にしてほしいです。
――では最後に、これからのお二人の活動について聞かせてください。
関口 今はOvallの制作をかなり頑張って進めているので、来年ぐらいには良い知らせがお伝えできるかと思います。あと、ソロ活動でも8年ぶりくらいにアルバムを作っているので、楽しみにしていてください。ギターインストとヒップホップのような、ビートが混ざった曲がこの何年かすごく好きなので、それを凝縮させたような1枚になっていると思います。
山本 僕はsunsiteの制作が佳境で、年内に新曲を配信して、来年春頃には作品を出せそうなのと、好芻っていうtricotのイッキュウちゃんと活動しているバンドの新曲も、同じ時期にリリースできるように進めています。あと、関口さんの話を聞いて僕もソロアルバム作りたいと思いました!
関口 これだけずっとサポートをされてきて、蓄積しているものがあるでしょうし、ソロとなると濃度の高いものが出てくるから、絶対おもしろいでしょうね。
山本 何かやってみたいですね。その際はギターインストの作り方を教えて欲しいです。

Text:金子厚武
Photo:興梠真穂
Profile
関口シンゴ
ギタリスト、コンポーザー、プロデューサー。レイドバックしたサウンドの中に、切れ味抜群なバッキングやソロギターを共存させるチルギタリスト。ジャズ、ソウル、ロック、ポップスをバックグラウンドに持ちつつも、どのジャンルにも当てはまらない独自のサウンドメイキングが話題となる。ソロアーティストとしてオランダのジャズシンガーWouter HamelやGiovanca、iriなどを招いて制作したアルバム『Brilliant』をリリース。
またシングルリリースされた楽曲『North Wing』はストリーミングで1300万回再生を記録。また、mabanua、Shingo Suzukiと共にバンド、Ovall(オーバル)としても活動。
FUJI ROCK FESTIVAL 、GREENROOM FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVAL、Sunset Liveなど日本全国の大型フェスや、台湾、フィリピンなどアジアツアーも成功させる。またCM楽曲制作も数多く手掛けるほか、プロデューサー、アレンジャー、コンポーザーとしてあいみょん、米津玄師、アイナ・ジ・エンド、川崎鷹也、ASOBOiSM、Wouter Hamelなど国内外のアーティストをサポートするなど多岐に渡るシーンで活躍中。劇伴音楽を担当した映画「1秒先の彼」のサウンドトラックを今年7月にリリース。
9/27(水) 最新シングル「Dance」リリース!
配信はこちらをチェック:https://sekiguchi.lnk.to/Dance
山本幹宗
2007 年 The Cigavettesのギタリストとしてデビュー。2013 年に解散。 現在はsunsite, 好芻のメンバーとしてや、銀杏BOYZのサポートギタリスト、 その他様々なレコーディング、楽曲制作、編曲等で活動中。
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ギブソンについて
ギターブランドとして世界でアイコン的な存在であるギブソン・ブランズは、創業から120年以上にわたり、ジャンルを越え、何世代にもわたるミュージシャン達や音楽愛好家のサウンドを形作ってきました。1894年に設立され、テネシー州ナッシュヴィルに本社を置き、モンタナ州ボーズマンにアコースティックギターの工場を持つギブソン・ブランズは、ワールドクラスのクラフツマンシップ、伝説的な音楽パートナーシップ、楽器業界の中でもこれまで他の追随を許さない先進的な製品を生み出してきました。ギブソン・ブランズのポートフォリオには、ナンバーワンギターブランドであるギブソンをはじめ、エピフォン、クレイマー、スタインバーガー、ギブソン・プロオーディオのKRK システムなど、最も愛され、有名な音楽ブランドの多くが含まれています。ギブソン・ブランズは、何世代にもわたって音楽愛好家がギブソン・ブランズによって形作られた音楽を体験し続けることができるように、品質、革新、卓越したサウンドを実現していきます。
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