小なるものの美しさ: Gibson Mini-Humbuckers

Michael Leonard | 2019.07.20 製品記事

今回はGibson.comによるアーカイヴ記事(2017年1月当時)をお届けします。

ギブソンのハムバッカーについて、その物理的なサイズ感は一般に広く知られているでしょう。PAF同様にヴィンテージスタイルのアルニコマグネットを擁するバーストバッカーからホットなサウンドでセラミックマグネットを擁するダーティ・フィンガーズまで、様々な異なるトーンを持つピックアップが、あらゆるジャンルのギタリストに幅広いトーンの領域を提示しています。

では、“ミニハムバッカー”として広く知られている小型のハムバッカーについてはどうでしょうか?ハムバッカーとの違いはそのサイズ感だけなのでしょうか?

Size Matters

通常サイズのハムバッカー以外では、ギブソンは2種類の素晴らしいハムバッカーのデザインを生み出してきました。ミニハムバッカーとファイアーバード・ハムバッカーです。そうです。これらは似て非なるものです。まどろっこしいでしょうか?

これらのピックアップのデザインは、ともにハムバッカーより小型です。2-5/8インチx1-1/8インチのサイズ感です。重大なことに、これらのピックアップの幅が1-1/8インチとハムバッカーの1-1/2インチと比較して狭くなるにつれ、弦振動の感知幅も狭くなり、弦から生じる高域のハーモニクスを拾うようになるということです。僅かにブライトな明るめなサウンドで、幾分より焦点のはっきりしたサウンドが得られるでしょう。

ミニハムバッカーのトーンは、コイルのコアに収まっているものにより色づけられます。コイルのサイズとその材質はピックアップのインダクタンスを左右し、アウトプットと周波数特性に影響を与えます。

  • 一般的な原則として、高めなインダクタンスは高アウトプットと低域の増加を意味します。
  • より小型のピックアップは弦振動のより凝縮されたエリアを感知します。コイルの中で鉄含量がより少なくなるため、幾分小さめなアウトプットで僅かに明るめでよりクリアなサウンドになります。
ミニハムバッカー vs ファイアバード・ハムバッカー

ミニハムバッカーはPAFのミニチュア版としてデザインされています。一個のバーマグネットが各コイルの下に配置され、鉄成分を含む合金から作られたアジャスタブル・ポールピースが取り付けられています。他方のコイルではアジャスタブルではない鉄成分のメタルバーが取り付けられています。これは、一方のコイルにアジャスタブル・ポールピースを配し他方のコイルにアジャスタブルではないスラッグ・ポールピースを配するギブソンPAFと一致する内容なのです。

ファイアバード・ピックアップは伝統的に、各コイルに1個ずつのバーマグネットを擁しています。各コイルは個別のバーマグネットの周りに巻かれています。一方のコイルともう一方のコイルは逆向きになるよう配置されています。また磁場の形とサイズについては、ミニハムバッカーとファイアーバード・ミニハムバッカーの間に僅かながら違いが見受けられます。

聞こえてくるサウンドについては、個人個人で違ったものになるのでないでしょうか。しかしながら改めて、一般的には下記のように捉えられています。

  • ミニハムバッカーの方がより多くのサスティンを含みアタック感がより滑らかになる。
  • 伝統的なファイアバード・ミニハムバッカーの方は、よりタイトでより勇猛なトーンになる。アンプのヴォリュームを上げた時でさえ、トーンの明確さがより際立つ傾向がある。

敢えて言うまでもありませんが、ギター自体の構造、弾き手の演奏スタイル、アンプ、プレイヤーごとに異なるアタックの度合などが全て影響しあってサウンドが形成されていくのです!

Player Sounds and Opinions: Les Paul Deluxes with Mini-Humbuckers

ミニハムバッカーは、1969年から70年代を通して製造されたGibson Les Paul Deluxeモデルに搭載され脚光を浴びました。デラックスを弾く有名なプレイヤーは、The WhoのPete Townshend、Thin LizzyのScott Gorham(彼は現在、Les Paul Axcessの大ファンです)です。それでは、どうしてScott Gorhamは数あるレスポールの中からデラックスをチョイスしたのでしょうか?

"我々は一文無しだったのさ!” とGorhamはGibson.comに話しこう続けました。“Thin Lizzyに加入した時、日本製の安物のレスポールのコピーモデルを持っていたんだ。加入した時にPhil [Lynott]が私に最初に発した内容のひとつは、新しいギターを買ってやらねばな、ということだったんだ。我々はDenmark Street [ロンドンの有名なギターショップ街] に出向いて、私は素敵なレスポール・スタンダードを何本か見つけたんだ。Philはただ首を横に振ったさ。高価すぎたんだ! 次にLes Paul Deluxeがディスプレーされているところに来た時、彼は、これなら大丈夫だ、といったんだ。もともとは金銭的な事情だったんだよ。その時点でバンドが賄える金額だったってことなんだ”

言い伝えによると、Pete Townshendは当時のDeluxeがとりわけ重かったためDeluxeをプレイするのをやめた、という説があります。このことで、ドラムセットやアンプ類を破壊するThe Whoの過剰なパフォーマンスを助長できただろうにと推測しますが、もしそうなっていたら彼らの音楽性はより扱いづらいものになっていたでしょう。

Gorhamは重量の点について同意しています。“70年代のレスポールはどれも重かったんだ。重い道具だったよ。ギブソンは、今はよくそのことを理解してるね。新しい重量軽減処理が施されたギターがその問題を解決しているね。このところビリー・ギボンズと話をしたんだけど、彼はこう話していたんだ。もう、木部の大きい重いギターは必要ないよね、とね。ペダルやアンプを含め、積極的に活用して得られるサウンドはずらりと並んでいるんだ。でもね、自分のDeluxeとBrian RobertsonのLes Paul Standardの違いは分かっていたよ。もし手にいれることができていたのなら、Les Paul Standardをプレイしていただろうと思いますよ。しかし実際は、Les Paul Deluxeを弾いて自分のキャリアが開けたんだ。Les Paul Deluxeを使って最高の曲を書けて演奏できたんだから...””

実際に彼はそうしてきました!スタンダードなハムバッカーとミニハムバッカーのトーンの違いについて参考までに、Thin Lizzy’sの大定番である Live & Dangerousand Still Dangerousというライヴアルバムを聴いてみてはいかがでしょうか?Scott Gorhamのトーン(ミニハムバッカー搭載のLes Paul Deluxe)は明らかに、Brian Robertsonのトーン (Les Paul Standard, full-sized PAF-style humbuckers)とは異なっており、益々彼らのユニークなスタイルを印象付けています。

70年代のThe Who におけるTownshendのトーンはよりハードです。彼はDiMarzioのフルサイズのハムバッカーを手持ちのDeluxeのミドルポジションに後付けしました。下図のギブソン・アーティスト・シリーズのPete Townshend Deluxeモデルをご確認ください。

Player Sounds and Opinions: Gibson Firebirds with “Mini-Humbuckers”

ジョニー・ウィンターは最も著名なギブソン・ファイアーバード・プレイヤーのひとりでした。それは、彼の死後にもかかわらず、未だにそうだといえます。彼は生前こうコメントしていました。“私はもとはと言えば、ファイアーバードのあの形がなんとも言えず好きになってしまい、ファイアーバードの虜になったんだ。そして実際にプレイしてみたらそのサウンドにもノックアウトされたんだよ。ファイアーバードはいいとこ取りのギターなんだ。フィーリングはギブソンらしく、サウンドは他のギブソンのモデルに寄ってなくフェンダー寄りなんだ。個人的にはハムバッキングの熱烈なファンということではなかったんだ。ところが、ファイアーバードに搭載されているミニハムバッカーは幾分バイト感(噛み付く感じ)や高域成分が強調されているんだ”

ウィンターのライヴアルバムの名盤、Captured Live! を聴いてみてください。ファイアーバードを弾くウィンターの突き抜けるようなスライド・プレイをご堪能いただけるでしょう。ボディセンターが一段せりあがっている伝統的なファイーバードのボディ構造がファイアーバード・サウンドのトーン特性に一役買っているのは疑う余地もありません。ジョニー・ウィンターが実際に使用していたファイヤーバードのコレクションの一部は、なんと40万ドル以上の価格でオークションにかけられました。

ロキシーミュージックのフィル・マンザネラの切り裂くようなリードプレイは、ミニハムバッカーを搭載した赤いFirebird VIIで繰り広げられました。彼は愛器を“Roxy Lady(ロキシーレディ)”と名付け、“最高のサウンドで録音できるんだ” とコメントし、こう続けています。“ファイアーバード・ミニハムバッカーはとても制御されたディストーション・サウンドが出せるから、レコーディング時にしっかりと音源内にギターサウンドを収めることができるんだよ。決して他のパートの楽器を侵食することなく的確な帯域に収まるディストーション・サウンドなんだ”

1968年から1969年のクリームの Farewell期とブラインドフェイス期、エリック・クラプトンは1ピックアップ仕様のミニハムバッカー搭載のFirebird Iをプレイしていました。“当時のあのファイアーバードの個体について、最高の記憶が残っているよ。1ピックアップ仕様で最高のサウンドだったんだ” とクラプトンは回想しました。更に尖ったトーンを求めるクラプトンの探究心は、70年代の大半をシングルコイル搭載のギターへと向かわせることになりました。

Gibson Firebirds 2017

2017 Gibson Firebirdは、TモデルでもHPモデルでも、アップデートされたデュアル・セラミック・マグネットを擁するファイアバード・ミニハムバッカーを搭載しています。それらは1960年代のヴィンテージ期のピックアップとは幾分異なっています。ですが、進歩・改良といった話であれば、皆様、期待できますよね?

Firebird StudioにはフルサイズのPAFスタイルのハムバッカーが搭載されていることにご留意ください。Firebird Studioのボディセンター部分はファイアーバードと異なりせり上がっていません。Vintage Copper Firebird Limited(ノンリヴァース仕様)はフルサイズのPAFスタイルのピックアップである57クラシックが搭載されています。

レスポールについて、Robbie Krieger 1954 Les Paul Customにはセイモアダンカンのミニハムバッカーがネックポジションにマウントされています。ミニハムバッカー搭載のLes Paul Deluxe で直近のモデルといえば、高く評価されていた2015年製となります。もしかしたら、まだどこかのギターショップで2015年製のGibson Les Paul Deluxeが並んでいるかもしれません。もし見つけたら入手されるよう、ご検討をお勧めします!

幸運にも1970年代製か2015年モデルのLes Paul Deluxe、もしくはヴィンテージ期のファイアーバードをお持ちの皆様、はたまた、近年製造のファイアーバードをお探しの皆様、これらのモデルに搭載されているミニハムバッカーのトーンには発見すべき美点が多々あります。フルサイズのハムバッカーは確かに肉厚なサウンドです。しかしながらミニサイズの方だって、スイートで美しい響きなのです!

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ギブソンについて

ギターブランドとして世界でアイコン的な存在であるギブソン・ブランズは、創業から120年以上にわたり、ジャンルを越え、何世代にもわたるミュージシャン達や音楽愛好家のサウンドを形作ってきました。1894年に設立され、テネシー州ナッシュヴィルに本社を置き、モンタナ州ボーズマンにアコースティックギターの工場を持つギブソン・ブランズは、ワールドクラスのクラフツマンシップ、伝説的な音楽パートナーシップ、楽器業界の中でもこれまで他の追随を許さない先進的な製品を生み出してきました。ギブソン・ブランズのポートフォリオには、ナンバーワンギターブランドであるギブソンをはじめ、エピフォン、クレイマー、スタインバーガー、ギブソン・プロオーディオのKRK システムなど、最も愛され、有名な音楽ブランドの多くが含まれています。ギブソン・ブランズは、何世代にもわたって音楽愛好家がギブソン・ブランズによって形作られた音楽を体験し続けることができるように、品質、革新、卓越したサウンドを実現していきます。

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