奥田民生が新作『Tamio Okuda J-45』について語る 未公開インタビュー公開!
ーーまず今回の新作ギターのベースとなった民生さん所有の45年製のJ-45についてお話をお聞かせください。このJ-45は数々のライブ、レコーディングなどで民生さんのメイン機として活躍していますが、このギターとの出会いはいつですか?かれこれどのくらい使用されていますか?
奥田民生(以下奥田)この(45年製の)ギターとの出会いは、ソロになってからだと思うので、かれこれ20年以上も前だと思います。ヴィンテージでネックが太いJ-45がすごく欲しくなりまして、たまたまどこかの楽器屋さんに出ていたのものを購入しました。50年代のJ-45にもネックが太いのはありますけど、その(45年製の)ギターは根本的にネックが、もう真ん丸というか、丸太の様なネックでして、それが一番の特徴だと思います。
ーーこの45年製J-45を愛用される理由は何ですか?
奥田)基本的にネックが太いギターの方が、音も太い様な気はしていまして、それが自分の好み。弾き語りをする時、僕は割と声も大きい方ですので、そうした時に音量が大きくて、強弱が付けられる、いざという時にドカンと音がでるギターが欲しかったんです。
楽器は強く弾けばいいものじゃなくて、強く弾くと実は鳴りが良くなかったりすると思うのですけど、それでも僕はライブの途中とか勢いでやっちゃう時もあって、そういう時にこのタイプのギターが一番乱暴な扱いに耐えてくれます。そういう時は、音は潰れるは潰れるけれど、それでも音が(前に)出てくるという印象です。
ネックがものすごい太いと弾きづらいと思っている人が割と多いと思うのですが、(勿論プレイスタイルにもよりますが)速弾きをするとか、テクニカルな事をするのには、この極太ネックは向いていないかもしれませんが、ただ、コードを押さえて弾くだけなら、むしろ楽なんですよね。実はネックの厚みが薄い方が、ずっとぎゅっと握り続けていると疲れるのです。(それに比べて)このネックが太いギターの方が、アコギの弾き語りとかにもあっているし、疲れません。ハイフレットの方も思ったより弾き易いと思います。手も小さくて、ネックが太いと弾きにくいと言う印象の人が多いと思うのですが、案外大丈夫なんですよね。
ーーギブソンJ-45の特に好きなところはどこですか?
奥田)僕は元々声も大きいですし、綺麗な音で弾くというイメージではないので、つい演奏も乱暴にやりがちなんですが、この古いJ-45以外でも、ギブソンのアコギって乱暴に弾いてもいい感じで音が出ると言うか、そういうイメージが昔からありましたし、実際ずっと(ギブソンを)使ってきている理由もそこなんです。他のアコギだと緊張するというか、なんかちゃんと弾かなきゃって思いがちですけど、このJ-45は安心できます。
僕の45年製のJ-45はもう、ルックスもボロボロですし、(ボディに)隙間も空いているくらいです。これを弾く時は傷が付いたらどうしようなんて心配は全くないですし、ネックも太く、頑丈だから大抵の弾き方しても大丈夫だという安心感がありますね。
ーーそれでは45年製のJ45をベースとして製作された今回の民生さんのシグネチャーモデルである新作『Tamio Okuda J-45』についてお話をお聞かせください。まず、J45の民生さんのシグネチャーモデルを製作する事になった経緯、決まった時の感想等あれば教えてください。
奥田) 大抵僕の(先にシグネチャーで出ている)エレキもそうですが、ネックが太いシリーズが多いんです。今回のJ-45もその流れもあるのかなと思います。たしかに、この古い45年製J-45のリメイクという話は、僕からしてもとても興味がありました。元々自分がいいなと思って実際に使っているギブソン・ギターを、自分モデルとして出してくれるというのは、やっぱり嬉しいですね。
ーーこの新作J45を「サウンド」、「ルックス」、「弾き心地」、それぞれこだわったポイントを交えて紹介していただけますか?
奥田)
この新作J-45の特徴で一番わかりやすいのは、ヘッドのギブソン・ロゴが(45年製と同じ)昔のスクリプト・ロゴなところですね。あと、その下の宣伝の様なバナーロゴも特徴ですね。ペグもクラシカルな感じです。
それでネックは先ほどから話している様に極太で、なんなら真ん丸です。
色に関しては試行錯誤ありまして、僕の持っているJ-45にできる限り近づけてもらって、このような色になったのですけど、赤みが少なめの方が割と近いなと思いそのようにしてもらいました。
それと、このJ-45は、(45年製と同じく)サウンドホールの周辺のパーフリングが7つあるんです。ギブソンのアコギの中でもそれが一番レアらしいです。それだけでも価値がありますね。
このギターは、弾いた時に低音が自分の体にも響いてくる気持ち良さがありますね。ネックが太いことによる(特有の)音色があると思うので、それを弾いて試して頂きたいなと思います。
ーー他のギター、もしくは他のJ45には無い、特別なポイントをあげるとしたら、どういう点になるのでしょうか?
奥田)
新しいギターは慣らし運転が必要というか、馴染んでくるまでに時間もかかりますし、弾けば弾く程どんどん鳴ってくるみたいなところがあります。ただ、昔はそれがもっと顕著だったのですが、最近のギブソンは、(エレキを作った時も思いましたけど)すごい新品なのに既に鳴る印象があります。
例えば、この新作のJ-45のトップ材は、「サーマリー・エイジド」というギブソン独自の特殊加工が施されているのですが、新品だけど時間がたったギターのような風情にしてあります。そういうギブソンの技術の進化は凄いと思います。なので、このギターも新品の音でもないんですよね。凄い技術です。
ーーギブソン・ギターの良さはどういったところでしょうか?
奥田)
僕はやっぱり、(ギブソンの良さは)どこか武骨な所だと思っています。
ギブソンのギターは弾く人がその癖を分かった弾き方をしないといけないみたいなところが、またやる気が出るというか、誰が弾いても綺麗な音がしたらつまらんみたいなところもありますし。
ーー初めてギブソン・ギターを手にした時の事を覚えていますか?また、初めて弾いた際の思い出や印象など覚えていますか?
奥田)
初めてのギブソン・ギターは、普通のレスポール・スタンダードの黒だったかと思います。やっぱりヘッドにギブソンと書いてあるか、書いていないかが重要でした。子どもの頃は、よく授業中にギブソンのロゴをノートに書いて遊んだりしましたし、とにかくギブソン・ロゴが書いてあるギターに憧れていました。
当時のギブソンはもう凄い高額でしたから買えませんでしたが、それを僕がプロになって手に入れた時には、やっと買えたんだという喜びがありました。最初はヴィンテージでない、そんなに高額のものではなかったですが、それでも喜びがありました。
ーー民生さんにとってギターとは何ですか?愛着あるギターには人間と同じ位、特別な感情や思いなどはありますか?
奥田) 他の人がこのギターを持って弾いたら、このギターも違う音がでるんだろうなって思うと、ずっと自分の癖でしか、弾かれないギターになっている状態がかわいそうでもありますね、もっと本当は色んな事ができるのに、これだけしかやらせてもらえない的なところがあると思うのですよ。ただ、そうやって弾いていると、自分の癖にギターもついてくると言う感じもあります。例えば、ある一か所しか弾いていないギターは、そこがめちゃめちゃ鳴るギターになるんです。長く使っているとそういう癖みたいなのが、多分もうついているギターもあると思いますが、そうなってくると弾いてて馴染んでるなとは思います。
ーー今はどのように民生さんは曲作りされていますか? 昔と変わった点などありますか?
奥田) 最近は、企画でその場で作る、大喜利みたいな曲作りも良くやっているので、そっちの方が楽しかったりします。最近は、ちゃんと考えて整頓して綺麗にメロディーを作るみたいな作曲はちょっと少ないですね。
ーーコロナ禍でステイホームが多くなり、ギターを始める人が増えていますが、ギターを継続していくコツなどありますか?
奥田)
ギターを始める人は、ギターを弾く事ばかりに集中し過ぎているような気がするんですよ。
ギターを弾く事よりも、ギターを弾けるようになったらどうするのかという事、ギターで何を弾きたいのかという方が大事かと思います。
例えばバンドをやりたいからギターをするというのであれば、もう下手なうちにバンドもやっていいと思います。
弾き語りをしたいなら、その弾き語りと合わせて歌も同時にやらないと意味がなくて、ただ、コードを押さえるのがどうのとか、それができるようになったら次はこれというのではなく、下手でも、本来やりたいことを得意になる様に練習した方が、上達が早いと思います。
ギターが難しい、難しいと思うのは、やっぱりそのギタ―を弾かないといけないと思うからで、なんならジャカジャカ音を出していくだけでもいいみたいな、勢いでやればいいのにって思ったりもします。
形から入るのも含めて、次のステップにいくのに時間がかかったりしててもいいんですよ。テンポは変えないで、ダメでも次に曲を進んでいく練習をした方がいいと思います。
ーー最後に今回の新作『Tamio Okuda J-45』を手にしたプレイヤーへ向けて一言お願いします。
奥田) このギターは、本当に頑丈なギターだと思いますし、(値段もそこそこするので、ピカピカのままで置いておきたい人もいるかもしれませんが)やっぱりガンガン使って、こき使ってあげて欲しいなと思います。それに耐えうるワイルドなモデルだと思いますので。
【名称】 Gibson Tamio Okuda J-45
【製品ページ】 Tamio Okuda J-45
【リリース記事】 ギブソンから、奥田民生が愛用する1945年製J-45をベースにした 最新シグネチャー・モデル『Tamio Okuda J-45』がリリース
【奥田民生氏の一部インタビュー、試奏動画】
【奥田民生氏が新作『Tamio Okuda J-45』を紹介する公式YouTubeチャンネル】
ギブソンについて
ギターブランドとして世界でアイコン的な存在であるギブソン・ブランズは、創業から120年以上にわたり、ジャンルを越え、何世代にもわたるミュージシャン達や音楽愛好家のサウンドを形作ってきました。1894年に設立され、テネシー州ナッシュヴィルに本社を置き、モンタナ州ボーズマンにアコースティックギターの工場を持つギブソン・ブランズは、ワールドクラスのクラフツマンシップ、伝説的な音楽パートナーシップ、楽器業界の中でもこれまで他の追随を許さない先進的な製品を生み出してきました。ギブソン・ブランズのポートフォリオには、ナンバーワンギターブランドであるギブソンをはじめ、エピフォン、クレイマー、スタインバーガー、ギブソン・プロオーディオのKRK システムなど、最も愛され、有名な音楽ブランドの多くが含まれています。ギブソン・ブランズは、何世代にもわたって音楽愛好家がギブソン・ブランズによって形作られた音楽を体験し続けることができるように、品質、革新、卓越したサウンドを実現していきます。