Pickup The Pace

ピックアップ交換でパワーアップ!

ピックアップ交換に向けた手引き

お持ちのギターをパワーアップ:
臆することなく取り組んでみましょう。

(注: ピックアップ交換は本来熟練のリペアマンが行うべき作業です。以下は情報シェアの主旨で掲載いたします)

ギターリペアにおいて議論の余地なくプロに任せるべきもの、例えば大掛かりなネックの調整、ナット周りの調整、フレットの打ち替えと仕上げなどの場合、確実にプロのリペア工房行きの内容ですが、ピックアップ交換の場合はそこまで大掛かりな内容ではありません。手順は比較的平易ですぐにでもこなせる内容です。難しそうですって?いいえ、ギター弾きではないドラマーでさえもできることでしょう!

以下は、ピックアップ交換について、事細かに十分すぎる内容で作業手順を示しています。しばしお時間をいただき参考画像を参照ください。きっと内容をご理解いただけることでしょう。

(注: 当ページはピックアップ交換における方法論の情報開示を主旨として公開しています。本来、プロのリペアマンが行うべき修理作業となります。もしご自分でピックアップ交換をトライされる場合、その作業内容や仕上がりの状況について、予め自己責任の原則をご理解いただきますようお願いいたします)

必要な工具類:

  • ピックアップとバックプレートを取り外すためのドライヴァー
  • 新たに装着するピックアップのリード線の絶縁部を剥くためのワイヤーストリッパー
  • ハンダごてとフラックス入りハンダ

以下では、エピフォン・レスポールを実例として、リア・ピックアップの取り外しと新しいリア・ピックアップの取り付けのプロセスを紹介いたします。

コントロール類を確認する

弦、ブリッジ、テイルピースを取り除きます。

ギターをひっくり返し、コントロールノブ類の裏側にあるバックプレートを取り外します(小さい方の丸いプレートはそのままにしておきます。それはトグルスイッチ用のプレートです)。

左側の2個のポットがヴォリュームコトンロールです。上側はフロントピックアップ用で、下側はリアピックアップ用です。右側の2個のポットはトーンコントロールです。上側はフロントピックアップ用で、下側はリアピックアップ用です。

もしデジカメやスマートホンをお持ちでしたら、コントロール図の写真を数枚撮っておきましょう。もしお持ちでなかったら、目に見える内容をすべてスケッチしておきましょう。

ピックアップ・キャヴィティからリアピック用のヴォリュームポットのほうに向かって太く黒いワイヤーが走っています。2本のもう少し細いワイヤーが、ヴォリュームポットのあたりでその黒いワイヤーの端から伸びています。これらの細いワイヤーのうち片方がポットの裏側にハンダづけされます。これは、リアピックアップのためのアース線です。もう一方の細い線は、ポットの横の一番下側の突起したところ(端子)にハンダづけされます。これはリアピックアップ用のホット線です。下の写真では、アース線は剥き出しの状態の方で、ホット線は白色の線です。

最初からついているピックアップを取り外す

ハンダごてが温まっていてクリーンな状態であることを確認してください。(基本的なハンダごての使い方は別途ご確認ください)アース線をヴォリュームポットの裏側に留まらせているハンダに、温まったハンダごての先端を用いて軽く触れるようにします。はんだは直ぐにでも温かくなりアース線は外れるでしょう。同様のやり方で、ポットの耳(端子)のところからホット線を切り離してください。これでピックアップをコントロール部から切り離すことができます。

ギターをひっくり返し、エスカッションの4本の止めねじを取り外し、ピックアップ・アッセンブリー(エスカッションも含めて)を引き上げます。そして注意深く、ボディ内部の経路に這わされたワイヤーを引き抜きます。ピックアップがギターから完全に離れた状態となり、次にピックアップをエスカッションに留まらせている2本のねじを抜き取ります。その2本のねじは、新しく取り付けるピックアップをエスカッションに取り付ける際に再び使用します。ピックアップをエスカッションに取り付ける際、高さ調整ばねのテンションのせいで取りつけづらいため、最初はまどろっこしいかもしれません。

新しいピックアップのワイヤーを、ボディ内部の所定の経路を通りぬけるように這わせ、余分な長さのワイヤーをきちんとぐるぐる巻きに巻き上げ、コントロールキャヴィティまで通していきます。次に、エスカッションの4本の止めねじを使用し、新しいピックアップをギター上でねじ止めします。

新しいピックアップを装着する

2芯のヴィンテージタイプの場合

もし、57 Classic、Burstbucker、P-90、P-94のようなヴィンテージスタイルのピックアップを取り付ける際、極めてシンプルで分かり易いでしょう。

絶縁部分を剥き、ワイヤーを剥き出しにして、ホット線のリード線を露わにします。ワイヤーストリッパーもしくは剃刀の刃を用いて、ワイヤーの絶縁部の不要物を取り除きます。ハンダごての先端を剥き出しのリード線に触れさせることでリード線を温めます。そして、ハンダを少しだけ溶かし込みより線の間に満たします。こうすることで、残りの配線の取り付け作業がずっと楽になるでしょう。

ポットをハンダごてで温め、マイナスドライヴァーを使ってワイヤーを仮押さえしながら一方でハンダを溶かす要領で、シールド線のごく一部分をヴォリュームポットの裏側にハンダづけします。もし元々ついていたピックアップのハンダの塊が多く残っている場合、新しいピックアップのアース線を取り付ける際のハンダ量は既に十分ということになるでしょう。もし、その状態でハンダを更に溶かし込んだら、ポット上でハンダの量が多すぎるということになります。ハンダが冷めるまで数秒待ってから、やさしくワイヤーを引き寄せてみて、しっかりとハンダづけがなされているか確認してください。

元々ついていたピックアップのホット線が繋がっていた端子と同じところに、新しいピックアップのホット線をハンダづけします。リード線の端をポットの端子の穴に通し、ハンダごてを端子に触れさせます。そして、僅かのハンダを端子の上に溶かしこみ、ワイヤーをつなぎます。同様に、ハンダが冷えてきたら、線を引っ張ってみてしっかり接続されているか確認します。

モダンな4芯のピックアップの配線

もし皆様が、トニーアイオミ・ピックアップやダーティフィンガーズ、500Tのようなモダンなタイプのピックアップを取り付ける場合、もうひと手間が必要になります。モダンなピックアップは2本ではなく4本のリード線を持っており、コイルスプリットが可能です。(シングルコイルのサウンドを得るため、ハムバッカーの持つ2個のコイルのうち片方のみを使用する状態です) コイルスプリッティングについての説明は、また別の機会でとさせていただきます。今のところしなければならない事は、緑と白の線をいっしょにねじって寄り合わせて逃がし、今のところは忘れてください。黒い線とむき出しの線をいっしょにねじり上げ、端の部分をハンダごてで温めヴォリュームポット裏にハンダづけしてください。2芯の配線の手引きの箇所で示したように、ホット線を端子にハンダづけしてください。

さあ、遂に新しいピックアップを取り付けました!

バックプレートを閉める前に、ギターとアンプを接続し、ドライヴァーを使って軽くピックアップの上をコツコツと触れてみます。もし正しくピックアップが取り付けられていれば、アンプからコツコツとタップした音が聞こえてくるでしょう。

バックプレートを閉じ、弦を張りなおし、チューニングをし、実際に演奏してみましょう。皆様のご自分の耳にとって最高なサウンドに鳴り響くピックアップの高さへと調節し、スイート・スポットを探ってください。もし、ピックアップが弦に近づき過ぎている場合、悪い意味でサウンドはぼやけて歪んだ音になります。逆に、弦から遠すぎる場合、弱弱しい響きとなり絶好のトーンを失ってしまいます。時間をかけ、耳を頼りにいろいろと試してみてください。

これにてピックアップ交換作業は終了です。

ハンダづけの基礎

ハンダづけは、”比較的に低い融点を持つ合金の融合の性質を利用した金属の接合”と定義されています。基本的にハンダづけとは、溶融金属での接着のようなものです。ハンダづけしたいパーツをハンダごての先端で触れて温め、ハンダをそのパーツに触れるようにすると、ハンダは溶けて流れて接合部ができあがります。ハンダづけについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

必要な工具

ハンダづけするためには、ハンダごてとハンダが必要です。ギターの配線部の作業では、15ワットから45ワット程度のハンダごてで十分です。ポットの端子部分でハンダづけする際、15ワットの方で十分でしょう。ポットの裏側にハンダづけする場合、45ワットの方がベターでしょう。ハンダごての先端はクリーンで光沢がある状態に保つよう心がけてください。ハンダごての先端をクリーンに保てるよう、湿った台所用のスポンジを手元に置いてください。フラックス入りの酸化していないハンダのみを使用してください。より大きなハンダごてを必要とする太いハンダよりも、容易に溶ける0.75mm程度の細いハンダの使用がお勧めです。安全のため、換気されたエリアで作業されることが望ましく、保護眼鏡を着用してください。ハンダから生じる煙を飛ばすために、手近なところに小さな扇風機を置くと良いでしょう。もしハンダを外す場合、余分なハンダを逃がすのに役立つハンダ吸取器かハンダ取りを使用しましょう。

ハンダづけする表面部分の準備作業

ハンダづけされる表面部分はクリーンでドライな状態に保ってください。小さな金属ブラシやスチールウールを使用して、ハンダづけするパーツが剥き出しの金属になるよう磨いてください。ピックアップを交換するだけの場合は、これは必ずしも必要な手順ではありません。もしポットを交換される場合、ポットの裏側はコーティングされている場合があります。その場合は、ハンダづけの前に剥き出しの金属の状態になるよう、コーティングは剝がさなければなりません。

全体の配線の位置決め

ポットの端子の穴を通してワイヤー類をつなげて位置決めし、端の部分を僅かに曲げ適切なところに留めてください。ポットの裏側にハンダづけする際、小型ペンチやドライヴァーの先端部を使ってワイヤーを適切なところに押さえつけ作業すると良いでしょう。

熱を加える

少量のハンダをハンダごての先端に付けます。こうすることで、熱をハンダづけされるパーツに伝えていくのに役立ちます。ハンダごての先端をハンダづけされる配線部に触れるようにし、全体が温まるよう数秒間そのままにします。

ハンダづけを行い熱を取り除く

そして十分な量のハンダを加え、接合部周辺にハンダを流します。ハンダの量が多すぎると、塊になってしまうので注意してください。そっとハンダごてを取り除き、ハンダの熱が冷めるまで接合部はそのままのじっとした状態にします。接合部は、クリーンで光沢のある状態が望ましいです。もし接合部が乱れていてキメが粗い状態の場合、再加熱してハンダづけのやり直しが必要です。加えたハンダの量が多すぎた場合、前述したハンダ吸取器を使用して対処してください。