Lacquer Finish – Care and Maintenance

ラッカー塗装
– ギターのケアとメンテナンス

過去100年以上もの間、ギブソン製造によるほとんどのギター、バンジョー、マンドリンはニトロセルロースラッカーで仕上げられてきました。(後年ギター業界でラッカー塗装に取って代わってきた他のフィニッシュは、ヴァーニッシュ仕上げ、ポリウレタン仕上げ、ポリエステル仕上げなどがあります)ニトロセルロースラッカーは、伝統的に愛され続けているフィニッシュですが、もっとも耐久性に優れているとは言い難いものです。容易にスクラッチ傷はつきやすく、適切なケアを怠ればフィニッシュのクラックや変色なども容易に起こります。

但し適切にケアをすれば、ニトロセルロースラッカー・フィニッシュは、その美しさと機能美を何10年もの間、保持できるのです。

以下では、ラッカー塗装のギターのケアについて、”推奨する事”と”してはいけない事”を列挙いたします。


Do...(推奨すること)

  • ギターをプレイし終える度に、100%コットンのクロスを用いてギターに付着した汗や汚れなどを拭き取ってください。ギブソンギターの購入時に付属されている、たいていのギターショップでも入手可能なギタークロスは、100%コットンのクロスです。しかし、リペアマン達が通常使用しているのは、柔らかいフランネル生地のクロスです。ここで一番重要なことは、必ずラッカーフィニッシュに使用可能なクロスを使用するということです。そしてついでに言いますと、必要に応じて金属パーツもしっかり拭き上げることが大事です。

  • しっかりとしたギターケースで楽器を保管するようにしましょう。ハードケースでの保管を推奨いたします。

  • お持ちのギターを磨き上げたい場合、必ずハイクオリティなギターポリッシュを使用してください。あらゆるポリッシュは、その化学成分の内容が異なります。なかにはフィニッシュにダメージを与えるという悪評のあるものも存在します。しかし、ポリッシュによって被ったとされるフィニッシュのダメージの大半は、実際には100%コットンではないクロスを使用した結果である場合が多いのです。ご注意いただきたい点は、ギターに余分なポリッシュを残さず拭き残しなく完全に拭き取ることです。

  • ギターが保管されている温度・湿度環境をチェックしてみてください。フィニッシュとギター自体の寿命を延ばすために、保管時の湿度は常時45-50%が望ましいです。保管時の理想的な温度と湿度について大雑把にいえば、皆様が心地よいと感じられる環境であればギターにとっても理想的だということです。

  • もしギターを発送したり長期間弾かずに保管する場合、一音程度チューニングを落とすようにしてください。

Don't...(してはいけない事)

  • 決して、100%コットンではないクロスを使用してギターを拭き上げることはしないでください。フィニッシュにスクラッチ傷(スリ傷)がついたり、フィニッシュの光沢が奪われる危険性があります。

  • 決して、ギターに水分や汗、油脂や汚れなどがついたままの状態でギターを収納してしまうことがないようにしてください。もしギターに水分や汚れが付着したままで一晩そのままにした場合、付着したプレイヤーの汗は容易にフィニッシュを酸化させ光沢を奪い、塗装にダメージを与えます。また、金属パーツについても、ギター使用後に乾拭きを怠ってしまうと、人間の汗の成分が容易にパーツの損傷(酸化や錆び)や変色をもたらします。

  • 決して、冬季の外出帰り時などのように冷え切ったギターケースを暖房の効いた暖かな部屋でいきなり開けるようなことはなさらないでください。また、その逆の場合もなさらないでください。寒暖の差が激しい環境はフィニッシュに容易にダメージをもたらします。もし急激な温度・湿度変化の環境に遭遇したら、いきなりケースを開けることはせずに暫くの間ギターはケースにいれたままの状態に保ち、徐々にギターがその環境に順応するようにします。例えば、冬季などに暖房のされていない車のトランクで数時間ギターを運んだ後、目的地到着後に暖房のされた部屋へギターを運び入れギターケースを開けるような場合、ラッカー損傷のトラブルに見舞われる確率が高いです。それはちょうど、冷やされたグラスに熱したお湯を注ぐとグラスが割れてしまうことに似ています。そのような状況では、まさに目の前でギターのラッカーフィニッシュがクラックすることになるでしょう。温度湿度変化への適切な順応時間は、温度湿度変化の過酷度によって異なります。いざ、実際にギターをケースから取り出す際、徐々にケースを開け、一定時間気温の変化にギターを徐々に慣らしてから行ってください。

  • ベルトのバックルでギターを傷つけないように気をつけてください。積もり積もったバックル傷は、しまいにはその箇所の塗装の剥がれにつながっていきます。

  • ギターを直射日光に晒さないように気をつけてください。ギターのカラーの変色や色褪せのもととなります。レッド色の色合いがもっとも速く褪色しやすいです。

  • 家具用のポリッシュや自動車用のポリシュ、もしくは他の研磨剤を含んだポリッシュなどはギターには使用しないようにしてください。ギターのフィニッシュを損傷するおそれがあります。

  • ギターに擦り傷や打ち傷がある場合、ご自分でその箇所のみのタッチアップ修理を試みることは避けてください。仕上がりレベルの低い簡易塗装を施された車のように、クールな仕上がりとは程遠いものとなるでしょう。ギターに付いた傷の内容によっては、大規模なリフィニッシュ(再塗装)することなくタッチアップで修正できる場合もあります。しかしながらこの手の調整作業は、熟練したリペアマンによってなされるべき作業となります。

  • 最後に、ギターのラッカーフィニッシュの大敵となるギタースタンドや譜面立てなどにも注意を払ってください。多くのギタースタンドに付いているゴム製のクッションの成分は、ラッカーフィニッシュ内部に容易に侵食していき、ギターの塗膜から木部にいたるまで塗装にダメージを与えることがあります。ギタースタンドを利用される際、ラッカー塗装に対応したスタンド以外は絶対に使用されないようご注意ください。