Getting down with Mandolin set-up

Above photo: Sam Bush's Limited Edition Inspired By '34 Fern

 

マンドリンのセットアップに慣れよう

by Roger Fritz

弾き心地の素晴らしいマンドリンを形作る要素といえば、フレットバズ音がほとんどせずに正確なイントネーションが保たれローアクションに設定されているということです。その状態であればハイフレットのポジションまで一貫性をもってプレイできます。最高のプレイヤビリティと最高のトーンの両方の実現は、プレーヤーならば誰しも望むことでしょう。

お手持ちの楽器に本来備わっているトーンについては、あまり手を加えることは出来ないかもしれません。但し、以下のセットアップの手引きを参考にしていただければ、もともとのトーンを最大限に活かすことはできるようになるでしょう。

以下が必要な工具類です。

  • 12インチのストレートエッジ
  • 小型のメジャー
  • 小型のプラスドライヴァーもしくは小型のマイナスドライヴァー
  • トラスロッドレンチ
  • 64分の1インチで計測が可能な直定規

作業を開始される前に以下の手順をよくお読みになり、作業中はご自分のマンドリンに細心の注意をお払いください。

(注: 当ページはマンドリンのセットアップにおける方法論の情報開示を主旨として公開しています。本来、プロのリペアマンが行うべき修理作業となります。もしご自分でトライされる場合、その作業内容や仕上がりの状況について、予め自己責任の原則をご理解いただきますようお願いいたします)

 

手順その1:ブリッジが適切な位置にあることを確認してください。ナットの頂部からハイE弦の12フレットまでの長さを計測してください(fig 1)。次に、12フレットからブリッジの頂部までの長さを計測してください(fig 2)。このふたつの値は必ずしもぴったり同じではないにしろ、同じ値に限りなく近いものになるべきでしょう。ブリッジ位置を動かす必要がある場合、ブリッジ位置を動かす前に弦を十分に緩め、マンドリンのトップ板のフィニッシュに引っかき傷をつけることがないようご注意ください。


fig 1:ナットの頂部からハイE弦の12フレットまでの長さを計測する図


fig 2:12フレットからブリッジの頂部までの長さを計測する図

 

手順その2:レギュラーチューニングでチューニングしイントネーション(音程感)をチェックします。12フレット上を軽く触れフレットまで押さえ込まないようにしてハーモニクス音を鳴らします。次に12フレットの実音を鳴らします。もし実音のピッチのほうが高ければ、ブリッジ位置をテイルピース方向にずらしてナットからブリッジまでの弦長を伸ばします。もし実音のピッチがハーモニクス音のピッチよりも低い場合、ブリッジ位置を指板方向にずらします。ブリッジを動かす際、必ず弦を緩めてから行ってください。

手順その3:小型のドライヴァーを用いてトラスロッドカヴァーのネジを取り除きカヴァーを外します(fig 3)。トラスロッドナットが確認できるはずです。


fig 3:トラスロッドカヴァーのネジを取り除きカヴァーを外す図

 

手順その4:ネックのストレートがでているかを確認します。指板上で縦方向になるようにストレートエッジ(直定規)をセットします。弦と弦の間でフレットの頂部を通るように置きます。もしネックに盛り上がっている部分がある場合、トラスロッドレンチを反時計周りに回転させネックができるだけストレートになるまでトラスロッドを緩めます。もしストレートエッジの下部に1/64インチ以上のくぼみが見られる場合、トラスロッドナットを時計回りに回しトラスロッドを締めます。一般的には、先ずネックを可能なかぎりストレートになるようにトラスロッド調整し、その後に若干のリリーフをネックに与えるようにします。(ネックのリリーフとは若干の順反りの状態を意味します) ネックにリリーフを与える際、トラスロッドナットを4分の1回転分だけ反時計回りに回しトラスロッドを若干緩めます。そして、ストレートエッジの下部を確認し1/64インチ以下の若干のくぼみができているか確認をします。


fig 4:トラスロッド調整の図

 

手順その5:副弦を含めて全ての弦の1フレット上での弦の高さを確認します(fig 5)。この作業は実際に定規で測定しなくてもできます。もし現状で問題がなければ次の作業手順に進んでください。もしプレイヤビリティが思わしくない場合、小型の定規を用いて第一フレットの頂部から弦の下部までの弦高を計測してみます(fig 6)。標準的な値は1/64インチです。もしナットの弦溝を掘り下げなければならない場合、その作業にはナット専用の金ヤスリが必要となります。その場合は腕利きのテクニシャンの助けを借りることをお勧めします。


fig 5:副弦を含めて全ての弦の1フレット上での弦の高さを確認する図


fig 6:小型の定規を用いて第一フレットの頂部から弦の下部までの弦高を計測する図

 

手順その6:ブリッジの高さを調整します(fig 7)。可能な限り弦高を下げる場合、フレットバズ音が発生するまでブリッジを下げ、次に若干ブリッジの高さを上げるかフレットバズ音が消えるまでブリッジの高さを徐々に上げていきます。フレットバズをチェックしている間、くれぐれも弦はレギュラーチューニングでチューニングされている状態で確認を進めるようにご注意ください。もし皆様のマンドリンがかなり良い状態であれば、このちょっとした調整作業だけでもプレイヤビリティに加えトーンの向上に役立つでしょう。


fig 7:ブリッジの高さを調整中の図