すり減ったフレットの手入れをしよう
フレットの打たれた楽器をいつも演奏していれば、遅かれ早かれ、フレットはすり減っていくことでしょう。どんなに指板やフレットの擦り合わせをしても、磨きこんでも、ネック調整しても、セットアップしても、何をおいてもフレット交換が必要だという事実から避けることはできません。
もし皆様がプロのリペアマン並みの修理技術や忍耐力をお持ちでないならば、リフレット(フレットの打ち換え)はプロのリペアマンに任せるべき作業です。フレット打ち換えの技術習得の唯一の道は、実際の作業経験を通してのみです。本ページでは、フレット打ち換えの方法論の情報開示を主旨として、バインディングの施されていない指板のリフレット作業の手順を公開しています。本来、プロのリペアマンが行うべき修理作業となります。もしご自分でフレット交換をトライされる場合、その作業内容や仕上がりの状況について、予め自己責任の原則をご理解いただきますようお願いいたします。
指板のバインディングを剥がしたり付け直す作業は、また別の作業手順と作業スキルを要す内容であり、作業上の難点や落とし穴が待ち構えている難度の高い内容です。そのため、リフレット(フレット打ち換え)の基礎が完全に身に付くまで、バインディング付きの指板でのフレット交換はトライされないようにご注意ください。
必要な工具類:
- フレット抜き用の小型ペンチ(Fret puller pliers)
- フラッシュカットプライアー(Flush cut pliers)
- トラスロッドレンチ(Truss rod wrench)
- フレットハンマー(Fret hammer)
- スーパーグルージェル(Super glue gel)
- フレットプレイン(Fret plane)
- 1インチ幅のバスタードファイル(1" bastard file)
- フレットクラウニングファイル(Fret crowning files)
- 400番と600番のサンドペーパー
- スチールウール(#0000)
- サンディングブロック(Sanding block)
- クロス・ラグ(Cloth rag)
- ストレートエッジ・直定規(Straight edge)
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いかなる失敗も許されません。以下の各作業ステップをよく読み、実際に作業を開始する前に、全工程の作業内容を確認してください。ゆっくりと着実に作業を行ってください。
(注: 再三申し上げます。フレットの打ち換えは熟練のプロのリペアマンこそが適切に行える作業です。以下、情報シェアの主旨で掲載いたします。本記事をお読みになりご自分でフレット交換をトライされる場合、その作業内容や仕上がりの状況について、予め自己責任の原則をご理解いただきますようお願いいたします)
- トラスロッドレンチを用いて、トラスロッドを時計回りで回し一番タイトになるところで止めます。こうすることでネックは逆反りとなり、フレット溝が開きフレットが抜き取り易くなります。
- フレットプラープライアーを用いて、フレットの抜き取りを開始します。左右どちらかの端の部分から慎重に作業を始め指板を横断していきます。指板をチップ(欠けること)させることのないように注意深く行ってください。指板かけが発生しそうだと予測される場合、フレットを抜き取る前に、ハンダごてを使い各フレット上を熱すると良いでしょう。全てのフレットが抜き取られるまで続けてください。
- トラスロッドの位置を反時計回りで回し、もとの位置まで戻してください。ネックをチェックしネックのストレートが出ていることを確認してください。
- 作業中のギターに合ったフレットを選択し、フレット溝の深さが適切であることを確認してください。たいていは、64分の3インチか64分の4インチの深さです。
- 事前にネック・アールに沿って僅かにフレットを曲げてアールをつけてください。そうすることで、フレットが打たれたとき、フレットの指板への収まりがよくなります。
- ネックをクロスに覆われた木製のブロック(ネック用の枕)の上に置き休ませます。
- フレット溝のそれぞれの端のところにジェル状の瞬間接着剤(Super glue gel)を一滴ずつ落としこみます。
- 指板上の両脇に突き出るようにフレットを置き、ハンマーを使ってフレットをフレット溝に打ち込みます。フレットが完全に指板にしっかりと打ち込まれるよう、よく注意を払ってください。
- フラッシュカットプライアーを用いて、指板から飛び出ているフレットの端を切り取ります。
- この工程を全てのフレットが打たれるまで繰り返します。ハイフレット・ポジションの作業中、ボディトップが傷つかないようクロスなどを活用しトップを保護してください。
- 1インチ幅のバスタードファイル(1" bastard file)を用いて、ネックの両サイドで飛び出ているフレットをヤスリがけします。
- 色の濃いフェルトペンを用いて、各フレットの頂点に印付けしていきます。
- フレット・レヴェル・プレインを用いて、フレット全体を通してマークした箇所が均一に消えていくよう、フレットの擦り合わせを行います。
- 各フレットの頂点を横切るようにストレートエッジ(直定規)を置き、均一な高さであることを確認します。全てのフレットの高さが揃うまで、12番から14番の工程を繰り返し行います。
- 適切なサイズのフレットクラウニングファイルを選択し、各フレットのフレット頭を削りこみ整形します。各フレットの上部に細い線の平面が出るように注意を払いながら、各フレットの上部に丸みをつけます。
- バスタードファイルを用いて、ネック両サイドの全フレット端で、30度の傾斜をつけて均一にサンディングします。
- 400番のサンドペーパーを用いて手作業で、全てのフレット上の微細なスクラッチ傷などをサンディングします。次にサンディングブロックを用い、400番のヤスリで傾斜がつけられた全てのフレットの両サイドの部分をサンディングします。
- 600番のサンドペーパーでヤスリがけし、0000番のスチールウールで仕上げます。
- より完璧な仕上がりとするために、サンディングブロックの上に100%コットンクロスを取り付けフレット磨きを塗布し、フレットの上部を磨き上げます。
フレット打ち換えにより、弦高、フィーリング、音程感などが、一新され完璧なものになるでしょう。