Basic Guitar Set-up

ギターのセットアップの基礎

なぜ、時に易々と弾ききれてしまうようなギターが存在するのでしょうか?多くの場合、肝心な点は"セットアップ"の問題なのです。セットアップとは、それぞれのプレイヤーの演奏スタイルに合うように、ネック、弦高、弦長などを正しく調整することです。以下では、プレイヤーの手で行える平易なギターセットアップの手順について、順を追ってご確認いただけます。

必要な工具:

  • トラスロッドレンチ、5/16インチ
  • メタル・ルーラー(金属の定規) もしくは、ストレート・エッジ(直定規)、 20-25インチの長さのもの
  • 1/64インチ刻みのメタル・ルーラー

  1. 先ず、新しい弦を張ります。
    弦の高さ、フレットと弦が当たるバズ音(ビビリ音)、そして音程感(ピッチ感)は、張る弦のゲージが変われば変化しますし、同じゲージでも古い弦から新しい弦に替えただけでも変化します。セットアップの際は、実際に皆様が演奏時に使われるゲージの弦を張るようにしてください。もし、皆様が新品で購入されたギブソンギターの弦を交換される場合、ほとんどのソリッドボディのエレクトリックギター(Les Pauls, ES-335s, Nighthawks, Flying V's, SG's)の工場出荷時の弦は、.009よりはじまるライトゲージです。Chet Atkins SSTやホローボディのエレクトリックギター(ES-175)の場合は、.010からはじまるゲージです。ほとんどのフラットトップについては、.012からはじまるライトゲージが張られています。
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  3. 再度確認しますが、これからセットアップするギターはすぐにでも演奏可能な状態にしておく必要があります。
    そのため、レギュラーチューニングもしくは、皆様が実際に演奏の際にセットするチューニングで調弦を行います。

    Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Tuning
    Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Neck Check
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  5. ネックがまっすぐかどうかを確認してください。
    上の図のように直定規を当てて、トラスロッドの調整が必要かどうか確認してください。もしネックが順反りしている場合、直定規の中心あたりでネックと直定規の間に隙間ができ、ネックは直定規に触れていない状態になります。もし、ネックが逆反りしている場合、直定規の中心部あたりでフレットが直定規に触れるでしょう。

    ご注意:あらゆる演奏スタイルにおいて、僅かに順反りしているネックが理想的です。完全に真っ直ぐなネックの場合、たいていのケースにおいて若干順反りしているネックの場合と比べると、ハイフレットでのバズ音(ビビリ音)を最小に留めるために弦高をより高く設定する必要がでてきます。プロのリペアマンの表現を借りれば、順反りに設定することは弦の振幅する余裕を確保するようネックに幾分の"リリーフ"を与える、ということになります。しかしながら、必要とされるリリーフの程度は演奏スタイルにより異なります。完全にストレートなネックは、とても軽いタッチで演奏するプレイスタイルには良いのかもしれません。もしお使いのギターのネックが僅かばかりの順反りの状態であるのならば、トラスロッドを使用した調整の必要は無い場合が多いです。

    ここでは、完全にストレートなネックの状態からの調整を行ってみましょう。もし、ネックをストレートに出来ない場合は、その場合は他の症状・問題が潜んでいることを示しています。例えば、ハイポジションでのフレット浮き(フレットがフレット溝から浮いている状態)、低すぎるか磨耗したフレット、もしくは指板上での様々な経年変化などです。例えば、ヴィンテージギターや古いギターの多くには、ネックブロックの上部の指板にこぶのような突起がみられることがあります。これらの症状のほとんどは、修理・調整は可能です。但し、プロのリペアマンの卓越した修理経験と技術力に頼るより他はありません。

    Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Truss rod adjustment
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  7. もし必要な場合は、トラスロッドでの調整を試してみてください。
    最初にトラスロッドカヴァーを外します。もしネックの順反りが大きすぎる場合は、トラスロッドナットを時計回りの方向へ回転させトラスロッドを締める必要があります。時計回りにトラスロッドを回転させるときは、トラスロッドレンチの持ち手の部分は1弦側から6弦側へと動かします。決して、いちどに4分の1回転以上トラスロッドナットを回さないようにしてください。逆反りのネックについては、トラスロッドナットを反時計回りに回転させることでトラスロッドを緩めます。ネックを可能な限りストレートにすることができたら、次に4分の1回転程度トラスロッドを緩め、ネックに"リリーフ"を与えてみてください。
    Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Truss rod adjustment
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  9. 弦高をチェックします。
    小型の定規をフレットの頂点に当て弦の下側までの間隔を計測します。(もしくは、すきまゲージを使用しての計測も可能でしょう)

    1フレット上での弦高をみれば、ナット溝が適切な深さで切られているかが確認できます。もしナット溝をもっと深く掘り下げる必要があったり、ナット溝を埋める必要がある場合、それらは熟練したプロのリペアマンが適切な工具を用いて調整を行う作業となります。

    12フレット上の弦高については、その高さによりサドルを上げるべきか下げるべきか判断することができます。

    ギブソン・エレクトリックギターでの標準弦高:

    • 1st fret- treble side - 1/64"
    • 1st fret- bass side - 2/64"
    • 12th fret- treble side - 3/64"
      Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Truss rod adjustment - 12th fret- treble side

       

    • 12th fret - bass side - 5/64"Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Truss rod adjustment - 12th fret- bass side

    ギブソン・アコースティックギターでの標準弦高:

    • 1st fret- treble side- 1/64"
    • 1st fret- bass side- 2/64"
    • 12th fret - treble side- 5/64"
    • 12th fret- bass side- 7/64"
      Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Saddle

  10. サドルの高さを調節してください。
    チューンオーマチックブリッジを搭載したエレクトリックギターや弦高調整可能なブリッジを搭載したアーチトップギターの場合、サムホイールを回すことでブリッジの高さを上下に調節することができます。ブリッジを上げる場合、張ってある弦を少し緩めることで幾分か容易にブリッジ高を調節することができるでしょう。アコースティックギターの場合、弦高を下げる際にはサドルの底部を削り取り、紙やすりで研磨して調整する必要があります。もし弦高を上げる場合は、シムを仕込むかサドルを新しいサドルと交換する必要があります。サドルをギターから取り除く際、張られている弦を緩めてから行ってください。平型ヤスリの上でいちどに少しずつヤスリがけをし、再度ギターにサドルを載せチューニングを行い弦高を確かめます。ポイントは少しずつヤスリをかけ、何度もこのプロセスを確認しながら行うことです。サドルの上面、弦が載る上面側は決して削らないことを推奨いたします。サドルの上面は指板のアールに合うように予めカーヴ・丸みがつけられているからです。また、サドルの底面が完全にフラットで平面が出ている状態となるよう、加えてサドルがブリッジのサドル溝に完全にフィットしていてギターのトップ板とサドルが直に接していないことを確認してください。

    もし演奏するのに快適な高さへと弦高調整することが困難な場合、ネックのリセットが必要な場合もあります。また別のケースでは、ブリッジを取り外し、かんなをかけてブリッジの厚みを薄くするか、ブリッジをより背丈の高いものに交換する必要がある場合もあります。フラットトップギターでの木製ブリッジベースの最適な高さ・厚みは3/8"です。(ここではサドルの高さは含まずブリッジベースの高さのみです)もし、お手持ちのギターがその値より大幅に上回っていたり下回っている場合、ネックのリセットを検討することになります。どちらにせよ、プロのリペアマンによる作業が必要となります。

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  12. ナット溝を掘り下げるためには、専用のナット・スロット・ファイル(ナット溝加工用の工具)が必要となります。
    Stewart-McDonaldのようなギター工具専門の販売サイトで入手可能です。前述の第1フレット上での弦高の値に合わせナット溝の深さを決定していきます。
    Gibson Guitars - Basic Guitar Setup - Fret check
  13. フレットバズ(ビビリ音)の有無をチェックしてください。
    ミディアムのピックで弾くか、軽めのタッチのフィンガーピッキングを用いて、全てのポジションにおいて弦のビビリ音の有無をチェックしてください。もし正常であれば、次のステップに進みます。もしビビリ音が出るようであれば、フレットの擦り合わせが必要な状況の可能性が高いです。この場合も、プロのリペアマンが適切な工具を用いて修理・調整を行う作業となります。
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  15. イントネーション(音程感)をチェックしましょう。
    12フレット上にてフレットに弦を押さえつけずに弦に触れるようにしてハーモニクス音を出し、"チャイム音"を鳴らしてください。右手で弦をはじいたら、すぐに左指を触れている弦から離してください。実音よりも1オクターヴ上の倍音が聞こえるでしょう。次に12フレットポジションで弦を押さえ実音を鳴らします。もしこの2通りの出音の音程がぴったり合っていれば、イントネーションは正確です。一点注意したいポイントは、12フレットポジションでのイントネーションは、弦を押さえつける強さ加減で変わりますので、強く押さえつけすぎないようご注意ください。
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  17. イントネーション(音程感)を調整します。
    チューンオーマチックブリッジ搭載のエレクトリックギターの場合、各弦ごとの弦長は調整可能です。もし12フレットで押さえた実音の音程が12フレット上の倍音(ナチュラルハーモニクス音)よりも高い場合、ギターのテイルピース方向にサドルを移動することでナットからサドルまでの弦長を伸ばします。もし12フレットの実音がハーモニクス音よりも低い場合、サドルをネック方向に動かし弦長が短くなるように調整を行います。

    ラップアラウンド・テイルピース搭載のエレクトリックギターの場合、テイルピースで調整できる箇所は、1弦側と6弦側の2箇所のみとなります。ラップアラウンド・テイルピース搭載のギターで各弦ごとに全ての弦で完璧なイントネーションを得ることは、構造的にほぼ不可能なことです。もし特定の弦のイントネーションが合わない場合、その弦をより細いゲージもしくはより太いゲージの弦に張替え、全体のイントネーションの釣り合いがとれるように調整します。

    フルアコースティックギターの場合、ブリッジ全体をボディエンド側かネック側に移動することで弦長を調節することができます。全ての弦を緩め、ギターのトップにスクラッチ傷が付かないように注意してブリッジ位置を調節してください。

    アコースティックギターの場合ブリッジ位置は移動できませんが、ブリッジ・サドル上に弦が載るポイントをサドルの前よりにするか後ろよりにするかを調整することで、イントネーションの調整ができます。多くの場合、厚み(幅)のあるサドルを搭載しているギターではこの調整が不可欠になります。サドルでのイントネーションの調整は、プロのリペアマンによって作業されるべき高度な調整内容となりますが、調整可能な程度はごく僅かなイントネーションのズレの調整となります。大幅に調子を外したアコースティックギターの場合、そのほとんどは数十年も前に製造された古いギターであることが多く、問題は不適切なブリッジ・サドル位置に起因します。その場合、完璧なイントネーションが得られるようにするためには、サドルが収まっているサドル溝の位置を切りなおして変更したり、ブリッジベースとサドルを新しいものに張り替えるなどの大規模な補修が必要となります。
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  19. アドヴァイスです。
    もし皆様が、フレット擦り合わせやネック調整、サドル交換などのより高度なセットアップやリペア作業を行おうという場合は、先ず適切で初歩的な工具を用意し、皆様のお気に入りのギターでいきなり作業を開始することはせず、壊れても差し支えないようなジャンクのギターなどで実験的に試してみることを強くお奨めいたします。本来、これらの作業はプロのリペアマンによってなされるべき修理内容となります。ギターのコンディションの変化に気付かれましたら、ご購入店舗にご相談いただくことがなによりの対処となります。

参考資料:パーツ、工具、リペアーに関する書籍について、Stewart McDonaldのウェブサイトにて確認が可能です。Dan Erlewineによるリペアに関するコラムも閲覧可能です。

Books and videos on guitar setup and repair: