ポール・マッカートニーが語るギター愛

Russell Hall | 2018.10.09 特集記事

今回は、ポール・マッカートニーに関するGibson.comによる過去のアーカイヴ記事(2013年当時)をお届けします。

2011年から2012年を通して、ポールは空前の規模となった“On the Run”ツアーを敢行し、数公演において、決して忘れることができないような一夜限りのステージを披露しました(その中には、オリンピックでのオープニング・セレモニーでのコンサートも含みます)。
そして素晴らしい新作、Kisses on the Bottomをリリースしました。2013年も同様、多忙なスケジュールとなることが予測されます。
数日前、伝説的なミュージシャンであるポールは、6月22日のポーランド公演を皮切りに“Out There!”と名づけられたワールド・ツアーを行うことを発表しました。更に、新たなスタジオ盤も製作中です。ポールの活動にまつわる話題が沸騰中の最中、Gibson.comは、あらゆるトピックに関してポールがこれまで発してきた数々のコメントの記録を編纂することとしました。

以下では、ポールがギター愛を語り、ベースプレイに関するアプローチを語り、どうして偉大なリフを拝借することは悪い方法論ではないのか等々についても語っています。


最初に入手したギターについてGuitar Player誌へのインタビュー・コメント (1990) :

最初に右利き用のギターを買ったんだ(注:ポールは左利きです)。Zenithという古いアコースティックギターで、いまだに所有しているよ。
家に居る時は小さなコード本を片手にじっくりと腹を据えて、何とか苦労しながらも弾けるようになるよう、取り組み始めたんだ。最初は全然、いい感じではなかったよ。ぎこちなかったね。その頃になってようやく、雑誌でSlim Whitmanの写真を見たんだ(注:Slim Whitmanは左利きです)。右利きのプレイヤーとは反対側の方向にギターを抱えている写真をね。そこで考えたんだ。“そうか!彼は弦を張る順番も反対になるように変えているに違いない"とね。
そうして、この問題に取り組むことになったんだ。それはいつもナットの部分の問題なんだ(注:ポールは右利き用のギターを左利き用として使用できるよう工夫をしていました)。昔はよくマッチ棒を使って、ナットの低音弦側を補強して高さを稼いでいたものだよ。もっともっと後になってから、ようやく左用のギターを買えるようになったんだ。


ビートルズでのお気に入りのギター・パートについてGuitar Player誌へのコメント (1990) :

なんといっても"Taxman"を気に入っているよ。私はジミ・ヘンドリックスにとてもインスパイアされていたんだ。あれは本当に、自分にとって初めてフィードバックを演奏に取り入れる試みだったんだ。
ジョージがフィードバックに関心を抱くようになる少し前のことだよ。実際、ジョージがこういったことにそこまで夢中になっていたとは思っていないよ。基本的にジョージは、ギタープレイの中でより抑制を効かせるタイプだったんだ。ジョージは強烈なフィードバックには関心はなかったから。



ポールとジョンがどのように楽曲を共作していたのか、Drowned in Soundへのコメント (2012) :

ジョンと私には自分達なりのやり方があったんだ。どういうことかというと、片方がメモ帳と鉛筆を持って腰掛けて、もう一方はギターかピアノのところに腰掛けるんだ。そして曲を作り、ものの3時間ほどで一曲仕上がっていた、というのがいつもの感じだったんだ。


Epiphone Casino に対するポールの想いについて、Drowned in Soundへのコメント (2012):

エピフォン・カジノについては、ビートルズでの活動期に手にしていたんだ。もともと、ジミ・ヘンドリクスに憧れがあるからさ。あるギターショップに出向いて、よくフィードバック音が出せるギターが欲しいんだと、ショップのスタッフに伝えたんだ。そのスタッフはこう答えたんだ。“それでは、こちらの1本でしょう”とね。
カジノはホロー・ボディ構造だったので、それが理由でもともとは手にしたんだ。そのギターを、“Taxman”でのギターソロや“Paperback Writer”で使用したんだ。ヴォックス・アンプを通すと、いい感じのちょっとしたダーティなノイズが得られたね。そのギターは今でもステージで使用しているよ。




偉大なギターリフを失敬(流用)することについて、Guitar Playerへのコメント (1990) :

たいていはいつだって、先ずちょっと試しにあれやこれやとやってみるんだ。それは、影響を受けてるとか盗用してるとか言われる、ということだね。それはどういうことかって?グッド・アーティストとは拝借するものだよ。つまり、グレイトなアーティストだったら、ちゃっかりと自分のものにして流用するということです。そうやって自分達もグレイトなアーティストになっているんです。実際、たくさんそうしてきたわけだから。
もし、誰かがこんなことを言ってきたら、"おっと!それの元アイデアはどこからかな?"なんて訊いて来たら、こう応えるでしょう。"うーん、チャック・ベリーかな"とか、もしくは、"I Saw Her Standing There"のリフの元ネタはチャック・ベリーの"I'm Talking about You"だよ、という具合にね。多くの楽曲からも着想を得ているんだ。ブルースの世界を見てごらんよ。みんな、そうでしょう。みんな、ブルースの先人達のリック(定石フレーズ)を盗んで流用して自分のものにしているよね。


ビートルズがどのように楽曲の多様性を重視してきたのかについて、Bass Player誌へのコメント (1995) :

私達ビートルズは、それぞれの楽曲が違ったサウンドになるよう、熱心に取り組んでたんだ。シングルの楽曲群という観点で考えていたね。Sgt. Pepper’sまでのビートルズのアルバムは、シングル曲の集まったアルバムだったんだ。
私達ビートルズは、The Supremesをちょっと退屈に感じていたんだ。たいてい、どの曲も同じ感じか、とても似通った曲に聞こえてたからね。でも、彼らはモータウンのシュープリームス・サウンドを変わらずにキープしたかったんだね。私達ビートルズは、ビートルズ・サウンドを変わらずにキープしようとは考えなかったんだよ。ビートルズは常に変化・前進したかったんだ。リリースするシングルごとに新しいサウンドを試みたかったんだよ。


ポールのベース愛について、Bass Player誌へのコメント (1995) :

おかしな話かもしれないけれど、私はいつだってベースを愛してきたものだよ。私の父はミュージシャンだったんだ。父はよくちょっとしたレッスンをしてくれたんだ。かしこまったレッスンではなくて、ラジオから流れてくる音楽についてよくこんな感じのことを言っていたっけ。“ちょっとその低い音程が鳴っているの、聞こえてるかい?それがベースだよ”という具合にね。
そうこうしているうちに、いろいろなベース・プレイヤーを聴き始めたんだ。主にはモータウンだね。ジェームス・ジェマーソンが私のヒーローだったよ。ジェマーソンと後期のブライアン・ウィルソンが私にとっての二大ヒーローだね。ジェームスは非常に名手でメロディックだったし、ブライアンはとても予想外な方向に楽曲を弾き進めていってたね。


“Michelle”がポールのベースプレイにおけるターニングポイントとなったことについて、Bass Player誌へのコメント (1995) :

あの冒頭の導入部のベースラインは、実際にその場で思いついたものだったんだ。下降するコード進行に対するあの6音のフレーズを思いついたことは、自分の人生の中で感慨深い瞬間だったね。今考えてみても、当時既に演奏活動を何年も経てきていたわけで、あの時点で十二分に音楽経験を持ち合わせていたから、自分の中から湧き出てきたものだと思うよ。上手くできたぞと、自分でも思えていたし。
あれは、実際にはよく知られたトリックなんだけどね。ジャズ・ミュージシャンが下降するコード進行に対して、昔からよくそうやっていると思うんだ。但し、私がどこかからそのアイデアを得ようとも、私の内なる声はこういったんだ。“やれよ。アレンジとしては幾分クレヴァーな感じになるぞ。実際、下降するコード進行には本当にとても合うと思うんだ"


ポールのレスポール愛について、CNNへのコメント (2010) :

Les Paulモデルのギターについては、とにかく美しいギターだと思うんだ。レス・ポール氏の楽器に対する知見と技術的な知識が反映されているわけだからね。こうして、レス・ポール氏とギブソン社は協力して驚くべきギターを生み出したんだね。
自分にとっては、レスポール・ギターはプレイするには最高だしクラシックな感じだね。私が所有するレスポール・ギターのうち1本は、50年前に製造されたものだよ。クラシックな感じもありつつ、それはもうアンティーク・名器と呼べるわけさ。とても弾きやすいしね。それはもう、レス・ポール氏の知見や専門技術の賜物だね。もし、他の誰かがちょっとでも弾いてみることがあれば、間違いなくすぐにその虜になってしまうだろうね。




ソロ活動を続ける喜びについて、Pitchforkへのコメント (2007) :

大雑把に言って、ソロ活動は自分のキャリアの初期からずっと行ってきたことなんだ。
ビートルズを離れたとき、McCartneyというアルバムを制作したんだけど、そこでは全ての楽器を演奏したんだ。あれは素晴らしい経験だったね。まるで自分が研究室の教授にでもなったかのような感じだったね。楽曲を作り、加工や編集をしたり、マイクロフォンの収録位置を変えたりね。本当に自家製の感じでね、ある意味ベッドルームでの制作という感じだったね。そんな感じだと制作作業もより手早くこなせるんだよ。


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