千里の道も一歩から : 10人の偉大なるギタリストによるギター初心者時代の回顧録

Russell Hall | 2018.09.03 特集記事

どんなギタリストでも一様に感じていることですが、ギターの習得はちょっとした冒険のようなものです。発見や興奮に満ち溢れ、もし熱心な弾き手であれば、献身的な気持ちやうれしい感情が合わさったようなフィーリングで満たされます。

これからギターを弾き始めようというプレイヤーが、その冒険の道中でどのようにギターにアプローチしていくのか、その方法論は無限に存在します。しかしそんな時はいつだって、ギタリストの先人達がビギナーだった頃にどのようにギターに向き合ってきたのかを知ると、非常にためになるはずです。

以下では、10人の偉大なギタリスト達の事例を引用し、編纂しています。ギター習得における、十人十色の考え方が開陳されています。

 

Vivian Campbell, 2011

13歳の頃ですが、当時、ある女の子に熱を上げていましてね。その娘のお母さんがギターを弾いていて、“Day Tripper”を弾いて見せてくれたのです。一番最初に覚えたのは、あの曲のリフでした。私の場合はほとんど、アルバムをじっくり聴きこんで曲を理解して練習することで、ギターを習得していったのです。

まず、手はじめに、ロリー・ギャラガーのLive! In Europeに取り組みました。その次は、シン・リジーのJailbreakでした。完全に独学です。もっとも影響を受けたギタリストはブルーズに根ざしたプレイヤーでしたね。ギター演奏のよりテクニカルな面よりも、もっとフレーズの内容の方に惹かれていましたし、そのほうが重要だと思っていました。

これは本当に今もそう思っていることですが、難解なテクニックに走るよりも、自分だけのヴォイスやサウンドを手にいれることの方がずっと大事だと思いますよ。例えば、ボブ・ディランを例にすると分かり易いでしょう。ボブ・ディランのことを、技術面で偉大なシンガーだとは、皆、思わないでしょう。ところが、ディランの作品が耳に入ると、ほぼ間違いなく、皆、それはボブ・ディランだって、分かるわけだからね。

 

Steve Lukather, 2011

当時6歳の頃でしたね。テレビ番組の“The Ed Sullivan Show”で、ビートルズを観たのです。あれは、忘れもしない特別な体験でしたね。これは今後自分が取り組むことになるだろうと、その時点で感じていたからね。私の両親は私のそんな様子を感じ取って、アコースティックギターとMeet The Beatlesというアルバムを買い与えてくれたのです。当時は、とにかくジョージ・ハリソンに憧れていましたね。“I Saw Her Standing There”ばかり、何度も繰り返して聴いていたね。

そうやっていくうちに、ある時、すべてを理解できるようになったんだ。ギターは特別なものに見えたし、特別に感じられたんだ。最初は、第一ポジションの全てのコードを習得していったんだ。先生はいなかったよ。やり方を教えてくれる人はいなかったのだけど、じぶんの耳で聞き取って演奏してみることはできたんだ。

その後、14歳になる頃、音楽の勉強に本格的にどっぷりと浸かることになったんだ。オーケストレーションやアレンジ、ギターのレッスン、ピアノのレッスン、即興演奏のレッスンなど、Dick Grove School of Musicで学ぶことになったんだ。

 

Gary Clark Jr., 2015

ちょうどクリスマス休暇のころ、学校が休みの頃でしたね。その後休み明けに学校に戻ると、学校の図書館に行って2冊の本を借りたのです。1冊目は“How to Play Guitar” (ギターの演奏法)という本でもう1冊は“Basic Guitar”(ギターの基礎)という本でした。コード(和音)表を学び始めまして、左手の指を正しいポジションにおいて慣らしていく、ということから始めたのです。指の痛みを感じなくなるくらいまで続けてましたね。

暫くして他のプレイヤー達を知ることで、リード・ギターの内容も理解できるようになっていきました。毎週土曜の夜にやっていた“Austin City Limits”というテレビ番組をとおしてですね。そんな感じで弾き始めたのです。加えて、ジャクソン・ファイヴや他のソウルの名盤を聴いたり、私の父が聴いていたジャズやブルースのレコードやそのときラジオでかかっていた音楽なども聴いていましたね。

 

Lindsey Buckingham, 2011

当時、兄さんがロックンロールのレコードを持ち帰ってくるようになったんだ。エルヴィス・プレスリーを初めて聴いたとき、とても大きな衝撃を受けたんだよ。コードブックを直ぐに手に入れたね。ギターについては、曲を理解するための道具としか見ていなかったんだ。何よりも曲を習得し歌い、レコードと同じようにできるようになることこそが重要だったからね。兄の45回転のシングル盤を聴きながら、兄の部屋で長いこと過ごしていましたね。

両親はというと、私が長時間にわたってひとりで過ごしているのを、どうしたものかと思っていただろうと思いますよ。私にとって音楽は、自発的に積極的になれるものだったんですね。他者からの応援などなくても、自ら進んで取り組めることだったのです。家族には音楽家やミュージシャンはいなかったのですが、私の場合はラッキーでしたね。ロックンロールに夢中な兄が居て、シングル盤の名盤を持ち帰ってきてくれてたのだから。それがなかったら、おそらく音楽の道には進んでなかったんだろうと思いますよ。

 

Joe Walsh, 2012

当時、1955年頃から1962年頃、私が夢中になっていたのはロックンロールでしたね。doo-wop(ドゥ-ワップ)などですね。それを聴いて育ったんです。曲を覚え、すべて理解し、コード進行も覚えたんです。

やがてバンドに入り、カヴァー曲を演奏しましたね。人前で演奏することは重要ですよ。そして徐々に、既存の楽曲にアレンジを加えるようになったのです。ギターソロを取る場面がきた時も、必ずしもレコードとおりの演奏はしなかったのです。レコード通りではなく、自分が良いと思った弾き方をよくしていましたね。

長い時間をかけ自分のギターに向き合ってともに過ごし、何度も何度も練習を繰り返すうちに、自分自身のアイデアが思いつくようになります。二点、重要な点があると思います。ひとつは、個人練習する時に、自分のパートも他の楽器のパートもよく聴いて理解を深めようということです。それには、昔の偉大なブルーズプレイヤーの演奏に耳を傾けることも含みます。そうすることで、頭の中で情報が蓄積され、欲しい時に引き出せるようになります。ふたつめは、個人練習だけでなく、人前で演奏しようということです。ミュージシャンとしては、この点は非常に重要になります。たくさんの若いプレーヤー達が自宅のガレージでリハーサルをして、その環境では最高の演奏が出来ているのかもしれません。しかし、それでは不十分なのです。聴衆のためにプレイしているとはいえないわけですから。

 

Richie Sambora, 2012

私の場合は、ちょっと通常のアプローチとは違ってました。当時は、よくジョニー・ウィンターのライヴ盤、Live Johnny Winter Andを真似てジョニーになりきろうとしていました。そのアルバムには、速弾きのリードギターソロが多く収められていたんです。ジョニー・ウィンターがプレイしているのとほぼ同じくらいと思われる高速スピードで、自分の指を速く動かそうと頑張っていたものです。当時は、いま自分が何の音程を弾いているのかなんて分からなかったんですが。ただ、ジョニー・ウィンターがやっているのと同じような感じのフレーズを弾いてみようと、奮闘していたのです。結構長い間、そのような感じで他のアルバムにも同様に取り組んでいました。

そうしていると、自分の両手には、ある種のマッスル・メモリーのようなものが蓄積されていったんです。自分がプレイしたい方向に沿って音符を配置できるようになる頃までには、その時点で実際にかなり上達していたと思います。

自分は貪欲なリスナーでもあったので、その点も良い方向に働いたと思います。当時は毎週ないしは2週間に1枚のペースで新譜を購入していましたから。また、スクールバンドでアコーディオンやサックスやトランペットなどをプレイしたことがあったことも役立ちました。そのような楽器は自分にとっては身近だったから、ギターを弾き始めたときも、音楽を聞き分ける耳はもう既に充分に鋭くなっているな、と自覚していたんだ。

 

Randy Bachman, 2001

テレビでエルヴィス・プレスリーを観たとき、初めてギターというものを強力に意識したんだ。当時、いとこ達は既にギターを弾いていたんだけど、たいていはカントリー・ウェスタン音楽で、ジョニー・キャッシュやレイ・プライスなどの音楽だったんだ。エルヴィスを観たとき、それはエキサイティングに感じられたよ。スコッティ・ムーアも聴いてね、あんな感じのギターを弾きたいな、と思ったのさ。

いとこ達がフィッシングで小旅行に出かけるという時があったので、その不在の間、ギターを貸してくれるよう、またスリーコードのやり方を教えてもらえないか、いとこ達に頼んだんだ。いとこ達が旅行から戻ってくる頃には、もうスリーコードはばっちり会得していたし、ラジオで聴いた曲は何でも弾けるようになっていたんだ。

私はヴァイオリンをやっていたし、基本コードを覚えれば第二第三ポジションと平行移動するだけで、EのコードはFにもF#にもGにもなるわけだからね。いとこ達が戻ってくるころには、もう既に彼らよりもずっと上手に弾けるようになっていたのさ。たった4-5日での出来事だったんだけど。

 

Tom Morello, 2011

私の場合は、17歳まではギターをやったことはなかったんだ。その時、当時の友達が、こと音楽に限っていえばベストと思えるアドヴァイスをしてくれたんだ。

彼はこんなことを言ってくれたんだ。“どんなことがあっても、最低でも1日1時間は毎日練習すること” 私はしっかりとその言葉を受け止め、おかげで腕前は上達したんだ。その後、1日2時間から4時間へと練習時間を延ばしていき、遂には、1日8時間も練習するまでになっていったんだ。

それはどういうことかと言うと、例えば家族とアイルランドに旅行しているとしても、あるバス停で降りて、割り当てられた練習時間として45分間ギターを弾くというようなことなんだ。私は強迫観念にかられて実際にやってきたんだけど、みんなにはお勧めしないな。社会生活が犠牲になるからね。しかし、私の場合は、ギターにぞっこん惚れこんでしまったっていうわけなんだ。

1日に8時間も練習すれば、テクニックは上がるよね。だけど、ミュージシャンであるということと、アーティストであるということの間には大きな違いがあるんだ。私の場合、テクニック面ではすぐに完成の域に達したんだ。実際にもの凄いソロだって弾けるようになったから。

でもね、本当にイケルぞと思えたブレイクスルーが起こったのは、DJのスクラッチを真似しようとしてトグルスイッチを活用しだした時なんだ。それは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの初期の頃だね。その時点で、1日に4時間スケール練習するようなことは止め、ユニークで自然発生的な演奏内容について意識を集中し、それをどうにかして音楽や楽曲に込めていけるようにトライし始めたんだ。その時こそ、自分のギターのヴォイス、自分ならではのサウンドに気付けた瞬間だったね。

 

Joe Bonamassa, 2011

私が最初にギターを抱えたのは、3歳の頃だったんだ。そして、4歳の頃にはもう弾き始めていたんだ。最初はクラシカルギターで弾き始めたんだけど、ご存知のとおり、それはそれは多くの鍛錬が求められるよね。クラシックギターのそういう部分は、なかなかやる気も起きないよね。

一方、ブルースについては、まるで真っ白のキャンヴァスみたいなもんだね。ルールなんてないんだ。自分の解釈したいように解釈すればいいんだから。ブルースのそういうところを、とても気にいったんだ。今もその気持ちは変わらないよ。

最初は、自分にとってのヒーローの演奏をなぞることから始めたんだ。初期のころに影響を受けたのは、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ロリー・ギャラガー、そしてポール・コゾフのような名手達さ。彼らのような、もともとはアメリカのアーティストからの影響をもとに、偉大なるブリティッシュ・ブルーズのスタイルを確立したプレイヤー達を、偶然にも見つけていくことができて最高だったね。

 

Robby Krieger, 2014

私の場合、14歳か15歳頃にギターをちょっと鳴らしてみたことがあったんだ。でも、本当にやってみようと思ったのは、16歳のころだね。

何人かの友達はギターを持っていて、ギターのもつフィーリングに憧れてたんだ。家にはピアノがあって、ピアノも自分は気に入っていたんだけど、そこまで夢中にはなっていなかったんだ。また、トランペットも演奏していたしね。

でもね、友達と会うたびに、彼らの持つギターにどんどん心を奪われていったのさ。最初に弾き始めたとき、当時はフラメンコに興味があったんだ。父さんがフラメンコのレコードをもっていて、自分も気に入っていたからね。

仲間のビル・ウルフと私はいっしょにレッスンを受けるようになったんだ。ギターでプレイするには自分には馴染みのない音楽だったんだけど、そこから、フォークミュージックやみんながギターでプレイするような音楽の方に進んでいったんだ。

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