リッチライト: 環境配慮型社会への貢献と環境に優しい極上のトーンの実現

Dave Hunter | 2018.02.05 特集記事

環境に優しくエコで再生可能な素材とは、新たに木を切り倒したりせず、その代わりに潜在的に無用な資源とみなされていた素材を持続可能な製品へと生まれ変わらせ、リサイクルできる素材のことです。そんなトーンウッドの代替材の一番手候補に挙げられる素材はリッチライトではないでしょうか?

“再生可能”というキーワードは、環境に配慮した企業行動を求められているギター製造業者にとって、未来にむかって進むべき途となっています。

ギブソン社は環境に優しい代替材の研究と開発を進めながら、完全な性能を持つ製品としてのギターを開発することで、このチャレンジの途の最前線で奮闘しております。

 

 

Beautifully Natural

リッチライトは複合材料のひとつです。リサイクル用途の紙材を堅く、滑らかで容易に加工可能な板材にしたものから作られた素材です。これは基本的なことです。但し、これだけではリッチライト材のもつ多くの利点は伝わってきませんね。エコ認定された素材から作られているという点に加えると、先ずリッチライトは毒性がありません。縮むような形状の変化がありません。加工時に擦り傷や打痕になりづらく、事実上見た目は理想的に木取りしたエボニー材のような質感です。

“リッチライトは、再利用された紙材と樹脂から作られた、目の詰まった、ダークな色合いで耐久性のある持続可能なバージョンのエボニーの位置づけなのです”とGibson CustomのプロダクトスペシャリストであるMat Koehlerはコメントしています。“リッチライトのもつフィーリング、トーン、サウンド特性は実際にはエボニーと同等なのです。カスタムショップはエボニーの供給が限られているので、エボニーはアーチトップやマンドリン、ヒストリックなモデルや特別オーダー品のために備蓄しています。但し、我々はリッチライトは素晴らしい人工的な代替材だと考えています。私の言葉だけを鵜呑みにするのではなく、是非既にリッチライトを使用したギターをお持ちのプレイヤーに訊いてみて下さい”

 

Crafting New Traditions       

 メタルを弾こうがアヴァンギャルドなジャズを弾こうが、またその中間的な音楽をプレイしようが、我々ギタリストは、自分達をワイルドで冒険心に富む人種だと考える傾向は強いですよね。しかしながら、ことギターに関することとなると、我々ギタリストは時に驚くべきほどに保守的になることがありますよね。

“ギタリストは、こと嗜好については常に保守的ですね” Koehlerも同意しています。“私達もその点は理解しています。しかしながら、ギター製造業者にとって、持続可能な木材を入手し続けることはどんどん困難になる一方なのです。ですから、思慮に富んだイノヴェーションが鍵になりますね”ひとたび、ある新素材が伝統的な原材料と同等の性質だと分かったら、それを使わない本当の理由とはいったい何なのでしょうか?“カスタムショップチームは、過去の何年間もの間、ファクトリー内で製造されているリッチライト搭載のギターとエボニー搭載のギターの両方を弾いたり、サウンドチェックすることを続けています。当初の認識は、‘リッチライトは木から直接とれたものではないので、木より劣っているに違いない’というものでした。しかし、実際に弾いてみて、音響特性を確認し、その結果を判断すると、その当初の認識はがらりと変わりました”

Koehlerはこう付け加えています。“リッチライトをはなから毛嫌いすることをデフォルトとすることは、極めて単純でイージーな考え方です。リッチライトの名前自体には大きな意味は無く、これは会社の名前なのです。伝統的な木材でもありません。以前から使っていれば、理解を得やすかっただろうに、と思います。以前はあまり使われていませんでした。プレイヤーとしては、私自身は指板がリッチライトだろうとエボニーだろうと気にかけてはいません。リッチライトでもエボニーでも同様のフィーリングとトーンが得られます。見た目では、多くの場合、リッチライトのほうがよりダークで深いブラックの色合いが強いので、リッチライトの搭載されたギターのほうが精悍に映るとおもいますよ”

 

The Tone Test

 リッチライトの一貫した強度、ダークな色合いと見た目はギターメーカーにとっては大きな副産物です。ギブソンのハイエンドモデルに対して、よりエレガントなルックスを求めるユーザーにとっても同様なのです。Koehlerによれば、“これはよくあることですが、カスタムショップでは、ぱっと見ただけではリッチライトとエボニーの違いの判別がつかないことがあります。時々、エボニー材自体に細い筋やはっきり目立つグレインが出ている場合がありますが、好まれるエボニー材はというとスムースで滑らかで一様にブラックの色あいの材なのです。リッチライトであれば常にそういった色合いと状態をキープできるのです”

ほぼ間違いなくこれは見た目以上に多くのプレイヤーにとって重要なことなのですが、リッチライトが搭載されたギターの全体のサウンドに対して、リッチライト材がどれだけ貢献しているのか、ということです。私達が特定のギターのファンであり続けているように、例えばヴィンテージ期の特徴・ルックスを捉えたLes Paul CustomやES-355などのファンであり続けているのと同じくらい、私達はしばしば、そういったギターがヴィンテージ期のトーンも正確に表現しきれているのか、ということをより重要視しますね。

リッチライトの材の密度、重量、そして剛性は非常にエボニーのそれとそっくりなので、同様のサイズのエボニー材とリッチライト材の音響特性はほぼ同じなのです。それは、ギター製作前に音響特性をテストするために、両方の材をルシアーが指でタップする時のトーンでも同じことが言えます。“リッチライトの材が高密度なので、エボニーの時と同様に個々の音がしっかりと際立つのです” とKoehlerは語っています。 “エボニーは、ハードロックやメタルのプレイヤーに特に支持されています。ディストーション使用下で和音をプレイしたときも、エボニーは明瞭さを増してくれるからです。リッチライトもこの点において、まったく同様に作用するのです”

 

 

 

 

Ruggedly Renewable

 リッチライトのルックスとサウンドについては満足しても、まだ耐久性については、不安視されているギタリストもいるかもしれません。ギターの世界では実はまだ比較的に新しい素材なのです。ですので、どのくらいの耐久性があるのか?と考えるのは当然のことですね。“ギブソン・カスタムショップでもっとも多く寄せられる質問のひとつですね” とKoehlerは語っています。“その質問はこうです。‘リッチライトは50年から100年程度の耐久性はあるのですか?’ ”

そのためにも、ギブソンギターをお求めになるギタープレイヤーはリッチライトの成り立ちを知っておいたほうが良さそうです。The Richlite companyという会社は1943年に設立され、もともとは航空・宇宙産業で使用される工作機械製品を製造していました。そうです、リッチライトは50年はおろか100年程度でも耐久性がありますし、ギターの指板に要求される環境以上に並外れて過酷な環境での耐久性がもともと想定されているのです。産業用途レベルの備品からカウンターの表面部分、スケートリンク、海の用途やその他の用途まで、この再生可能な製品は非常に過酷な環境下でも持続できる耐久性をもちあわせています。

さあ、ここでもうひとつ別のsustainability(持続性)の問題について考えてみましょう。我々ギタリストは、ギター製造で一般的に使用されているトーンウッドのルックス・フィーリング・サウンドの価値感にしっかりと縛られていますが、再生可能な代替材が存在することを知ることが重要なのです。ひとたび伝統という偏見を後ろに引っ込めて、よりゆかりのある木材に比肩するルックスとサウンドの代替材があるということを知ることが大事です。熱帯雨林の保全に貢献しましょう。そしてこれからも、ゴージャスでリッチで、ダイナミックな、伝統のギブソン・トーンを楽しんでまいりましょう。ウィン・ウィンの関係ですね。

 

Where You’ll Find It

Koehlerがコメントしているように、特別なオーダー品やトゥルー・ヴィンテージ・スペックのリイシュー以外について、過去にエボニーを使用して生産されていたほとんどのモデルについて、現在はリッチライトを使用して製造されています。“カスタムショップでは、ヒストリックな仕様のレプリカや特定の指定オーダー製品ではないLes Paul Customはリッチライト指板が基本仕様となっています”とKoehlerは語りこうつけ加えています。“その他のリミテッドランによる様々なヴァリエーションのLes Paul Customの商品群も同様です”

但し、カスタムショップのみが再生可能な素材を使い始めたということではありません。Gibson Memphisからは、過去の数ヴァリエーションのB.B. King Signature ES-355モデルに加えて、

Alex Lifeson Signature ES-Les Paul,2016 ES-355 Vintage Ebony Bigsby, ES-355 Classic White BigsbyB.B. King Signature ES-355などでリッチライトを使用しています。モンタナ州のボーズマンにあるアコースティックギター工場のクラフツマンも、この汎用性のある素材がいかにアコースティックギターの製造にフィットしているかを証明してみせてくれています。2018 Parlor Rosewoodでは、伝統的なローズウッド・サイド・バックと革新的な新素材であるリッチライト指板の仕様とし、サウンド面で驚くべき成果をあげています。

皆様、ギターへの嗜好はそれぞれのプレイヤーごとに異なりますが、リッチライト指板を搭載したギブソンギターをお試しする機会が今後増えることになるでしょう。お近くのギブソンディーラーで、是非お手にとってお試しください。

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ギブソンについて

ギターブランドとして世界でアイコン的な存在であるギブソン・ブランズは、創業から120年以上にわたり、ジャンルを越え、何世代にもわたるミュージシャン達や音楽愛好家のサウンドを形作ってきました。1894年に設立され、テネシー州ナッシュヴィルに本社を置き、モンタナ州ボーズマンにアコースティックギターの工場を持つギブソン・ブランズは、ワールドクラスのクラフツマンシップ、伝説的な音楽パートナーシップ、楽器業界の中でもこれまで他の追随を許さない先進的な製品を生み出してきました。ギブソン・ブランズのポートフォリオには、ナンバーワンギターブランドであるギブソンをはじめ、エピフォン、クレイマー、スタインバーガー、ギブソン・プロオーディオのKRK システムなど、最も愛され、有名な音楽ブランドの多くが含まれています。ギブソン・ブランズは、何世代にもわたって音楽愛好家がギブソン・ブランズによって形作られた音楽を体験し続けることができるように、品質、革新、卓越したサウンドを実現していきます。

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