
9月の大型連休“シルバーウィーク”は、各地でさまざまなイベントが開催される時期。今年もそのひとつとして、岐阜県中津川市の[中津川公園]にて、音楽フェスティバル《中津川 WILD WOOD 2026》が開催された。
Photo by:AZUSA TAKADA
事前の天気予報では悪天候の見込みが出ていたものの、初日は汗ばむ暑さのある屋外フェス日和となり、ユニコーンを筆頭に10-FEETや東京スカパラダイスオーケストラなど、いずれも音楽イベントの顔的ミュージシャンが大いに会場を盛り上げてくれた。公園内では芝生にレジャー・シートを敷いてライブを観ることができ、また近くにはキャンプ・サイトもあるため、初日のテンションそのままに、2日目に向けて宿泊も楽しむというファンも少なくない。

そうして迎えた2日目もやはり予報は芳しくなかったのだが、またしてもフェス日和な好天に恵まれた。3つあるステージでは10時台のオープニング・アクトを皮切りにパワフルなパフォーマンスが始まり、オーディエンスも思い思いに大自然と音楽を一緒に楽しんでいる。野外ライブならではの光景だ。自然のなかでの音楽祭ではあるが、もちろんどのステージでもロックなサウンドが鳴り響く。その刺激的なトーンを生み出す中核となるのがギター・サウンドで、古今東西多くのギタリストが手にしてきた王道モデルと言えるのがギブソン製ギターであり、それはこの中津川 WILD WOODでも同様だ。
出演する多くのプレイヤーがギブソン・モデルを使用したほか、“Gibson Presents”ステージ、展示・試奏エリア、ギブソン・クロストークなど、会場のさまざまな場所でギブソンのサウンドと魅力を体感できる2日間となった。
文: 岡見 高秀
撮影:後藤 薫
PARK LIFEステージ “Gibson presents” 竹内アンナ

出演する多くのバンドのプレイヤーがギブソン・モデルを使うなか、特に目を惹くプログラムとなったのが、“Gibson Presents”と銘打たれた竹内アンナのステージ。

小高い丘の傾斜を利用した“PARK LIFE”ステージに登場した彼女は、さまざまなスタイルの曲をプレイするシンガー・ソングライターだ。今回はバンドを従え、自身は愛用のエイジング加工が施されたギブソン・アコースティックの最高峰 Murphy Lab 1942 Banner J-45 Light Aged を構える。そして優しいストロークから「RIDE ON WEEKEND」が始まった。柔らかなアコースティックの響きは芝生に囲まれたこの環境にピッタリで、しかもJ-45は高音のきらびやかさも特徴のギターなので、バンド・セットでも決して埋もれないトーンを紡ぎ出してくれる。カッティングも軽快だ。

“今日は全部ギブソンです。そこも注目して観てください!”と語ったように、ステージはギブソン・モデルで溢れている。
竹内だけでなく、ES-335 50s を手にしたリード・ギターの谷川正憲はもちろん、ベーシストもノン・リバースの Thunderbird を使うなど、ギブソンにこだわった布陣である。当然竹内もそうで、続く「琥珀色の街、上海蟹の朝」(※くるりカバー)ではフル・アコースティック・モデルの ES-330 を使い、パキッとしたクランチ・トーンと甘い歌声のコントラストで、オーディエンスを魅了していく。本曲はギブソンの公式カバー動画シリーズ《Replays》で披露した思い入れのある一曲で、ギターのラインナップもそのときと同じだ。

その後も“色も好きで自分も嬉しくなれる。力強さも繊細さもどっちも出せる”と語ってくれたクラシック・ホワイトの Les Paul Standard を使った「サヨナラ」、「Free! Free! Free!」では強めのクランチによる刻みやカッティングを披露し、それに合わせて客席もダンサブルに盛り上がっていった。

ラストは Murphy Lab 1933 L-00 Ebony Light Aged を手に「ALRIGHT」を弾き語りでプレイ。ボディ・サイズの小さい同モデルは彼女にピッタリで、それでいてタイトで前に出る音色につき、素早いストロークも絡む本曲との相性も最高だ。“屋外だと自分の声もギターの音も、遠くまで飛んでいくようでとても気持ちよかった! 皆さんが純粋に音楽を楽しんでいるのが伝わってきて、全員でいい休日が作れたと思います!”という彼女の言葉どおり、昼下がりの青空がとても似合うライブとなった。

Nothing’s Carved In Stone

Photo by:ハタサトシ
中津川 WILD WOODらしいオーガニックなパフォーマンスだった竹内アンナとは対極に、非常にロッキンなアクションをキメてくれたのが、メイン・エリアとなる“FOOLS GOLD” ステージに上がったNothing’s Carved In Stone。こちらもシンガー&ギタリストの村松拓、ギタリストの生形真一ともにギブソン・ユーザーだ。
“イケるところまでいこうぜ!”という村松の煽りとともに「Out of Control」で始まった彼らのセット。自身のシグネチャー・モデルである ES-355 を手にした生形はまさにロック・ギター・ヒーローといった印象で、アルペジオとブラッシングを巧みに使い分けたプレイで曲中のシーンを彩りフロアを盛り上げていった。

自身の歌とギターをかき鳴らして始める「Isolation」は、村松の声と Murphy Lab 1964 SG Standard のマッチングが感じられる一曲。マホガニー・ボディのSGは中域の粘りと太さが特徴で、ハリのある彼の歌声を的確に支えていく。

エッジが立ちすぎない分ほかの楽器との混ざり方も良く、生形がプロトタイプのシグネイチャー[1965 Non-Reverse Firebird Ⅲ]に持ち替えた「Challengers」でも、一体感のあるギター・サウンドを大きなステージいっぱいに轟かせていったのだった。

“355に比べると重厚さに違いがあって、少し腰高なニュアンスが出せるんです”という、最近新たに製作されたオリーブ・ドラブの Murphy Lab 1964 ES-335をセレクトした「Black Train」やハイポジ低音弦からヘヴィに展開する「All We Have」などを経て、ラストは大きなグルーヴのイントロからドラムが16フィールを作る「November 15th」で客席を終始ヒートさせた。

広い空の下で激しくも気持ちよくロックするという、ある意味大人のステージを見せてもらった気がした。フロアをあとにするお客さんのなかから“決めた! 私もギターをやる!”といううれしい声が聞こえてきた。バンドへの憧れを次の世代へつないでいくことも、ロック・バンドの大切な役割なのかもしれない。

Photo by:ハタサトシ
Gibsonスポット(展示・試奏エリア)

このように多様なスタイルの音楽を彩るギブソン・ギターだが、ステージでプロ・ミュージシャンが使用するだけがその役割ではない。ギター&ベースをやりたいというすべての人のために楽器は存在するのである。そんなギブソン・ファン垂涎のブースが、会場の中心部に位置する「ふれあいセンター」内に特設された“Gibsonスポット(展示・試奏エリア)”だ。
また会場には、ギブソンのオリジナルグッズを購入できる物販スペースも展開。定番アイテムに加え、中津川フェスとのコラボによる会場限定のオリジナルマフラータオルも登場し、多くの来場者が実際に手に取る姿が見られた。ライブだけでなく、会場ならではのアイテムを通してギブソンの世界観を楽しめる空間となっていた。

ここには同社のエレクトリック&アコースティック・ギターが展示され、しかもどのモデルも実際に試奏をすることができる。今回はマーフィ・ラボ製の 1958 Korina Flying V と 1958 Korina Explorer を始め、エピフォンのFuturaシリーズ各種、アコースティックの代表機種 SJ-200 Standard など、コアなプレイヤーはもちろん、これからギターを始めようという人にも手に取りやすいさまざまなモデルが並ぶ。実際にライブとライブの間には行列ができるほどの盛況ぶりで、世代を問わず多くの音楽好きが憧れのギターを手に取っていた。

普段から家でギターを弾いているという男性は、家族が見守るなか ES-335 60s を試奏。“まず見た目がカッコいいですよね。ふらっと寄ってこんなギターが弾けるんだからスゴいブースです(笑)”と語ってくれた。

カップルで立ち寄った青年は J-45 Standard について“すべての音が鮮明に聴こえました! 普段はなかなか手が出ませんが、こういった機会で弾くことができて良かったです”と目を輝かせる。

ほかにも“ Dove Original は丸みのあるきれいな音がしました。楽器店では弾きづらいけど、このブースはオシャレで入りやすかった(女子中学生)”
“ギブソンは好きなギタリストが使っている。エピフォンのFutura Explorer Custom を弾いてプロになった気分になれました!(男子高校生)”と、それぞれ特別な経験ができたようだ。このなかから、将来本イベントに登場するギタリストは現われるか!?

サバシスター

フェスも後半戦に突入し、チェアリングでチルアウトした人もちらほら見かける“WONDER WALL”のステージに登場したのは、3ピース・ガールズ・ロック・バンドのサバシスター。ヴォーカル&ギターのなちはメンフィス製 1959 ES-335 Dot]のプロトタイプ、ギターのるみなすは Gibson USA SG Standard を使うが、彼女たちのギター的ポイントは、なんといってもそのコンビネーションだろう。

1曲目「台風」はサバシスターらしさ全開の元気な夏ソングで、バンドを初見だった人もすぐに彼女たちのノリがわかったはずだ。ふたりはオクターヴの違うコードを弾き合うが、セミアコとソリッド・ボディながら出音が近く、さらに息がピッタリということもあって、ひとつの大きなコードに聴こえる。「!」ではジャンプもネックを上下させるムーブもシンクロしていて、それに引っ張られたオーディエンスもギュッと一体となっていった。

そんな彼女たちはそれぞれの愛器について“事務所の社長でもある横山健さんから借りている一本なんです。健さんが育ててくれたおかげで、カッコよく鳴ってくれるところが大好き(なち)”、“以前よりももっと太くて元気な音が出てくるようになったんです。私は衣装が緑なので、TVイエローのカラーもスゴく映えるんですよ!(るみなす)”と語る。るみなすは曲によってギター・ソロもとり、「君が笑うほど夢中に夏っ!」でのオーバードライブしたトーンは、SGらしい中域とハムバッカーの太さを生かした王道のギブソン・サウンドだった。

なちがハンド・マイクで歌う「ポテサラ」、新曲となる「来て」と終始アッパーなテンションでセットは進行し、ラストはパンキッシュでハネ感もある「ハッピーなんて」でオーディエンスの声を出し切らせたサバシスター。“去年も出ているんですけど、そのときは土砂降りだったのでリベンジのつもりもありました。今年は私たちを知ってくれている人が増えた気がして嬉しかったです(なち)”、“天気も良くて、お客さんの顔が隅から隅まで見えました。私もすごく楽しかった(るみなす)”と、自身たちも大満足のライブになったようだ。そしてここからもうひとつ、彼女たちには重要なステージがある。

Beautiful Ones “Gibsonクロストーク”

午後5時を過ぎ、陽も落ちてきた中津川公園。懸念されていた雨は降らず、近くに高い建物のない広大な敷地は端々まで夕日に照らされている。そしてメイン会場から少しはずれた“Beautiful Ones”ステージには、先にライブ・ステージを終えた生形真一と、サバシスターのなちとるみなすが登壇。ギブソン・ラヴァ―である3名が自身の愛用機について語り尽くす、“Gibsonクロストーク”が繰り広げられた。

MCのみの氏に促され、それぞれが自身のモデルを紹介する。前述のようになちの ES-335……通称“チャック”は横山健に借りているものだが、裏面にはもともとのシールの横に自身もシールを貼っていて“借りパクの予定です”と笑顔で話す。るみなすは初めて買ったギターもSGだったそうで、それで最初に弾いた曲もオリジナルだったそう。同器を持って大きなステージに立つ今の姿は、そのときから決まっていたのかもしれない。

またサバシスターのふたりからは、生形に向けて“シグネチャー・モデルを作るなら?”という質問が。日本人ギタリストとして初めてES-355でシグネチャー・モデルを作った生形は、製作について“最初は断ったんですけど、作るのには時間がかかるから、やるなら早くやっておけば良かった(苦笑)。基本、できないオーダーはないけれど、エイジングを再現したカラーリングはけっこう難しい”といった、経験から来る具体的なアドバイスを送り、ふたりは“なるほど〜”、“いつかやりたい!”と真面目顔。なお、最も重要なポイントは“見た目にこだわれ!”とのことだった。

その後もギターに名前はつけるか?などトーク・セッションはにこやかに進み、30分という短い時間ながら、ギブソンにまつわる3人の貴重な意見が聞けるひとときとなった。クロストークが終わった頃、いよいよ会場は真っ赤な夕日に包まれた。都会ではまず見られない、本当にきれいな夕焼けだった。

大自然のなかで音楽を楽しむというコンセプトを持った中津川 WILD WOODは、9月らしいとても過ごしやすい気候のなか、どのステージも賑わい、多くの人がエレキ・ギターのワイルドなサウンド、アコースティック・ギターのウッディなトーンを堪能したことだろう。
悪天候をはねのけ緑とバンド・サウンドに浸れたこの時間は、きっと音楽の神様からの贈り物だったのではないだろうか。ジャンルも世代も異なるアーティストたちが、それぞれのスタイルでギブソンを鳴らし、来場者自身も実際にギターを手に取った《中津川 WILD WOOD 2026》。大自然の中で、演奏する人と音楽を楽しむ人をギターの音がつないだ、濃密な2日間となった。

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ギブソンについて
ギターブランドとして世界でアイコン的な存在であるギブソン・ブランズは、創業から120年以上にわたり、ジャンルを越え、何世代にもわたるミュージシャン達や音楽愛好家のサウンドを形作ってきました。1894年に設立され、テネシー州ナッシュヴィルに本社を置き、モンタナ州ボーズマンにアコースティックギターの工場を持つギブソン・ブランズは、ワールドクラスのクラフツマンシップ、伝説的な音楽パートナーシップ、楽器業界の中でもこれまで他の追随を許さない先進的な製品を生み出してきました。ギブソン・ブランズのポートフォリオには、ナンバーワンギターブランドであるギブソンをはじめ、エピフォン、クレイマー、スタインバーガー、ギブソン・プロオーディオのKRK システムなど、最も愛され、有名な音楽ブランドの多くが含まれています。ギブソン・ブランズは、何世代にもわたって音楽愛好家がギブソン・ブランズによって形作られた音楽を体験し続けることができるように、品質、革新、卓越したサウンドを実現していきます。
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