伝説のレスポール・プレイヤー: ジェフ・ベック

Dave Hunter | 2018.02.07 特集記事

 

Gibson.comにて不定期連載を続けておりますLegends of the Les Paulでは、特定の個体のLes Paulモデルに魅せられた偉大なギタリスト達をご紹介しています。アーティストとギターが一体となり、伝説的な音楽が創造されていったストーリーです。

この連載の中で登場するアーティストの多くは、彼らの特別な1本のLes Paulとの強烈な結びつきにより神格化され注目を集めているのですが、今回ご紹介する伝説的な guitarists’ guitarist(ギタリストからの絶大な支持を受けているギタリスト)は、ミュージシャンとしてのキャリア形成期を通じて3本のLes Paulを使用し、その3本のギターはどれも神格化されています。真の巨匠、ジェフ・べックは歴代のエレクトリック・ギター・プレイヤーの中で最もクリエイティヴで独創的なギタリストのひとりです。彼がキャリアを通じてもっともパワフルな演奏を行った時期が60年代後期から70年代初頭であり、ジェフ・べックは3本のヴィンテージのLes Paulとともに音楽を発展させていったのです。

 

Beck’s First ’Burst

エリック・クラプトンが66年の初頭にブルース・ブレイカーズでサンバーストのLes Paulで快演を響かせた後、イギリスのあらゆるギタリスト達はこぞって、バースト・レス・ポールを自分の愛器にしようと探し求め始めました。ジェフ・べックも例外ではありません。程なくジェフは彼にとっての最初のLes Paulを手に入れることになります。深いサンバーストの色合いを持つ58年製でロンドンのSelmer’sという楽器店でした。そこはキース・リチャーズが既に数年前にあの有名な59年製のLes Paulを購入していた楽器店で、著名なミュージシャンにとっての溜り場のようなショップだったのです。ベックはその58年製のLes Paulをヤードバーズを離れる前の在籍時代にメインで使用していただけではなく、ジェフ・べック・グループの68年のデビュー作(Truth)での大半の楽曲で使用しました。“Happenings Ten Years Time Ago”、“Beck’s Bolero”、“Over, Under, Sideways, Down”などの楽曲で存分に彼のLes Paulがフィーチャーされており、Les Paulならではの重厚感のあるよく歌うトーンを確認することができます。

べックによるその58年製のLes Paulの使用時期の中で、そのLes Paulのルックスは当時のべック自身の嗜好に応じて次第に変貌を遂げることになりました。ピックアップ・カヴァーは両方とも外され、ダブル・クリームのPAFが顕になりました。(この改良は高域のレスポンスの改善を促すよう意図されたと考えられています。)加えて、特徴的だったサンバーストのフィニッシュは剝がされました。(木部の振動を高めようという試みでした。)その後暫くしてアメリカツアー中に、べックにとってこの最初のBurst Les Paulは不幸にもダメージを受けることになり、別の個体で鮮やかなフィガード・フレーム・メイプルの杢をもつ58年製のLes Paulを代わりに使用することとなりました。そのギターは1969年のジェフ・べック・グループ終焉までの間、修理のためにリペア工房送りとなっている、塗装が剝がされた“un-’Burst”の代役を務めることとなりました。

 

 

Crazy Conversion: the “Oxblood”

これら2本の50年台後半のオリジナルのバーストLes Paulが、今日のギター・コレクターにとり垂涎の的となっていただろうことは想像に難くありません。もし、ジェフ・べック本人が後にまったく異なったタイプのギブソン・ギター(後に自分の名前を冠するようなギター)を実際に手にしていなかったら?の話です。実際には、現在彼はそのモデルとは最も密接な結びつきがあります。大幅にモディファイが施された1954年製のLes Paulです。ひとつ間違えれば、当時のギタリスト達により、改造が大幅に施されすぎたため価値を大幅に落としたギターと見なされていたかもしれません。しかし、そのギターはジェフ・べックを虜にしたのです。

1970年代初頭にテネシー州、メンフィスでのレコーディング作業の合間を縫って、べックは有名なStrings and Thingsというギター・ショップを訪れ、ショップの壁にかかっていた運命の1本と出会うことになります。そして即座にそのギターに心奪われてしまいます。そのギターは1954年製のLes Paulであり、もともとはそのギターのオーナーが特殊な改造目的でショップに持ち込んでいたものだったのです。そのオーナーの改造のリクエストのひとつは、ボディのカラーをオリジナルのゴールド・カラーから深みのあるチョコレート・ブラウンのカラーにリフィニッシュすることでした。それはある特定の照明環境でオックス・ブラッドの色合いを醸し出すカラーでした。他の改造のリクエストは、P90ピックアップの代わりにフル・サイズのハムバッキング・ピックアップを装着すること、50年代初期型の丸みの強く厚みのあるネックシェイプを僅かに削り込むことで若干ネックの厚みを薄くすること、弦巻きをオリジナルパーツからモダンなリプレイスメントパーツへ変更することでした。これらすべての改造後、オリジナルパーツである“wraptail”ブリッジはそのまま変更無しで装着されたままとなり、このパーツのみがそのギターがもともと54年製であったことの証となっていました。

伝説のギタリスト、ジェフ・べックはそのギターを手にすることになります。もともとのオーナーはこれらすべての改造の結果に満足していなかったのです。しかし、ジェフ・べックはこのギターをいたく気に入りました。べックは、改造により本来のオリジナルの仕様から大きくかけ離れた、もともとは54年製のLes Paul Gold Topであったそのギターを購入し、ツアー、スタジオ問わず頻繁に使用しました。1975年の画期的名盤であるBlow By Blowのアルバムのジャケット写真にも起用され、そのことで伝説のLes Paulという評価が不動のものとなりました。

1970年代の多くのべックの演奏の中に、その時代の最上のLes Paulの美学と見て取れる扇動的な熱いトーンを感じることができます。しかし、その演奏は同時にキレがあり、丸みもあり、しなやかさもあるもので、60年代に通ずるsemi-clean blues-rockのトーンのテイストも感じさせるものでした。最終的にこれら3本のLes Paulは、多くの世界中のファンが今も変わらずロックフュージョンの分野で第一人者と信奉するアーティスト、ジェフ・べックの作品になくてはならないものとして大きな貢献をしてきたと言えます。2009年にギブソン・カスタム・ショップは、リミテッド・エデイションでのトリビュート企画としてモディファイされた1954 Les Paul Gold TopJeff Beck Oxblood Les Paulとして製品リリースしました。このモデルは現在も変わらずに、全世界のコレクターやプレイヤーから高い評価をいただいております。

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