#2 竹内アンナ 「ES-335は新しい発見をさせてくれるパートナー」

1958年に「世界初のセミ・アコースティックギター」として発売されたギブソンのESシリーズは、セミホロウ・ボディやダブル・カッタウェイのデザインといった独自の使用により、ロックやブルース、ジャズなど様々なジャンルのギタリストに愛されてきた。本記事ではESギターを愛用する魅力的なプレイヤーたちにフォーカスしていく。第2回目は、今年3月に3rdアルバム『DRAMAS』をリリースしたばかりの竹内アンナさんが登場。近年購入した「1961 ES-335 Reissue Ultra Light Aged」を今も曲作りやレコーディング、ライブのメイン器として愛用している竹内さんに、ESシリーズのカスタムオーダー・モデルである355を試奏してもらいながら、ギターを始めたきっかけや、ESとの出会い、最新アルバムについてなどたっぷりと語ってもらった。

 

――はじめに、竹内さんは、どんなきっかけで音楽を始めたのですか?

私の母は大の音楽好きで、新しいもの、古いもの、洋楽も邦楽もジャンルを問わずなんでも聴く人だったんです。そんな母が作ったごちゃ混ぜのプレイリストの中にはEarth, Wind & Fire(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)からK-POPまで本当にさまざまな楽曲が入っていたのですが、私もそのプレイリストを聴いて育ってきたんです。

その影響で、小さい頃から私も音楽を聴くのが好きだったのですが、小学校6年生の時にBUMP OF CHICKENの「カルマ」を聴いて、すごく衝撃を受けて。その曲がきっかけで、音楽を聴く側から、演奏する側に立ってみたいと思うようなりました。ただ、当時はまだ小学生だったので、バンドを組むまでは思い至らず一人でギターを弾くことから始めました。

 


――本格的にギターに取り組むようになったのは?

中一でギターを手に入れ、ギターの師匠から学ぶようになるんですけど、中三の時に初めてライブハウスに出させてもらう機会がありました。初ライブのために作詞作曲をするようになり、本格的にシンガーソングライターを目指しました。そこがまず大きなターニングポイントでしたね。

それに加えてもう一つ大きかったのが、John Mayer(ジョン・メイヤー)との出会いでした。確か高二の時、23歳くらいのジョンが、インストアライブで一人ギターを弾いている映像をたまたまYouTubeで見たんです。その映像から流れてくる音を、彼がたった一人で出しているとは信じられなかったんですよね。「何でこんなに弾けるんだろう?」と驚いたのと同時に、「私もこんなふうに弾けたら楽しいだろうな」と思い、さらにギターにのめり込んでいきました。

 

 

――他に影響を受けたアーティストは?

Taylor Swift(テイラー・スウィフト)やAvril Lavigne(アヴリル・ラヴィーン)、YUIさんのような女性のシンガーソングライターからはとても影響を受けていますし、自分の楽曲にラップを取り入れるようになったのは、K-POPのガールズグループにインスパイアされたからですね。

本当にいろんなジャンルの歌に影響を受けていますが、中でもアース・ウィンド&ファイアの「September」は、まだ音楽の良し悪しもよく分からなかった子供の頃からずっと記憶に残っています。この曲のように、子供から大人まで、悲しい時も嬉しい時も、どんな時でも聴けば「大丈夫」になるってすごいことだと思うんです。音楽を好きになった原点でもあるし、曲作りをするとき最終的に目指したいのは、曲が持つパワーですね。


――さまざまなギターがある中で、竹内さんがギブソンのESモデルを選んだ経緯について聞かせてもらえますか?

最初にエレキギターを購入する際、それまでずっとアコースティックギターを弾いていたのもあって「まずはセミアコかな?」と思いました。なので、最初からES-335目当てに楽器屋さんを回りました。それ以外のギターも試奏してはみたのですが、結局は最初に335を弾いたお店に戻ってきましたね。様々なモデルを試奏した中で、私が購入したのはマーフィー・ラボの「1961 ES-335 Reissue」でした。

そのギターは、見た目が真っ赤というのがとてもインパクトがあったし、ステージに立った自分の姿を想像したらすごく良さそうだなって。他にも64年製や、ドットじゃないタイプなど、同じ種類でも違う年代のものなど色々弾いて、持った時の馴染み具合や弾きやすさ、私好みの音のまろやかさだったので「これにしよう!」って。

 

 

――このギターには名前を付けているんですよね?

はい。毎回、ギターを手に入れると名前をつけているのですが、真っ赤で可愛い赤ちゃんだね、それならベイビー……ベビたんかな?って(笑)。

――名前をつけると、より愛着が湧きますよね。

そうなんです。初めて手にした時は、まだ自分の実力が追いついてなくて「いいギターだから、いい音が出ているんだよね?」という半信半疑な状態でしたが、そこから弾きこんで、ちゃんと「パートナー」として仲良くなるためにも名前をつけて愛着を持つことが大事なのかなと。今は、ファンの方たちもこのギターを「ベビたん」と呼んでくれているので嬉しいですね。

 

 

 

 


――弾き込んでいく中で、「ベビたん」にどんな魅力を感じるようになっていきましたか?

最初の頃は「弾き語りに合うだろう」と思い、そのままの音色のクリーンなトーンで弾いていたんですが、去年スリーピースバンドでツアーを回る機会があり、その中で必然的にもっと歪ませたサウンドが必要になったんです。その際に、ちゃんとアンサンブルの前に出てくるパワー系のサウンドも鳴らせるんだという発見がありました。セミアコなので響きもめちゃくちゃいいし、日々の曲作りでも、レコーディングでも、ライブでも愛用していて、その度に新しい発見があるパートナーだなと思っています。

 

 


――今回、ES現行モデルを弾いていただきましたが、普段愛用しているESとの違いなど感じましたか?

まずパッと見た印象として、真っ黒なボディにゴールドが映えているのがすごくかっこいいなと思いました。手にした時は、ビグスビーが搭載されているぶん私が普段使っているESより重厚感のある印象だったのですが、その存在感もいい感じでした。今回、ビグスビーを初めて使ってみたのですが、音作りの幅が広がりそうで、ワクワクしましたね。見た目も含め、ライブの最前線で活躍してくれそうです。

 

1961 ES-335 Reissue Ultra Light Aged /竹内アンナさん愛用ギター(1959 ES-355 Ebony Light Aged w/BigsbyES シリーズ:現行モデルをースとしたカスタムオーダー)

 

 

 

 

 

 

 


――これからESシリーズのギターを手にする方へ、おすすめポイントがあれば教えてください。

まず、見た目が「カワかっこいい」ので、ステージに立った時に自分自身のテンションが上がると思います。私はそんなに手が大きくないのですが、握り込みもすごくしやすいし、私のギターはミディアムスケールで弾きやすいので、女性の方やギター初心者の方にもやさしいギターだと思います。


――竹内さんの、最近の活動についてもお聞かせいただけますか?

先ほどお話した最新アルバム『DRAMAS』を、今年の3月にリリースしました。「なんてことのない瞬間も、切り取ればドラマになる」をテーマに、さまざまな「2人」を物語にした作品になっています。自分にとっては大したことがなくても、側から見ればすごくドラマティックなこともあるし、逆に人にとっては大したことがなくても、自分にとってはすごくドラマティックなこともある。そんなふうに、なんてことない瞬間が意外と大切なんだなと。喜怒哀楽、いろんな瞬間……感情のピークが訪れる時を見逃さずキャッチして、一つひとつ丁寧に物語にして綴った12曲です。

それと、私の音楽の軸にはデビュー時から一貫して「ギター」があり、今作でも全て私が弾いたギターの音が入っています。たまに「本当に弾いているの?」と言われることがあるのですが、この場をお借りして「ちゃんと弾いてます!」と言いたいですね(笑)。もちろんベビたんも、このアルバムのレコーディングでたくさん活躍してくれました。

 

 


――今年でデビュー5周年を迎え、7月6日の記念のワンマンライブが恵比寿ガーデンホールで開催されるそうですね。振り返ってみてどんな5年間でしたか?

本当にあっという間でした。でも決して流された感じではなく、「あの時はこうだったな」とちゃんと思い出せるような、すごく鮮やかな5年だったと思います。普通は5年も経つと、ちょっとは「慣れ」みたいなものが生じてしまいがちですが、常に新しいトライをし続けてきたおかげで、ずっと初心のまま走り続けてこられたなと。それはすごくありがたい環境だと思っています。


――最後に、これからの抱負を聞かせてください。

最近は、「アンナちゃんを見てギターを始めました」と言ってくださる方もすごく多いんです。私を見て「ギターってかっこいい楽器だな」「私もやってみたいかも」と思ってくれる子がもっと増えたら嬉しいですし、そうなってもらえるようにこれからも頑張りたいです。

 

 

Text:黒田隆憲
Photo:大石隼土

 

◎PROFILE

竹内アンナ

1998年4月25日、アメリカ・ロサンゼルス生まれ日本・京都出身。
ポップミュージックを基盤にしつつ、その世代や生い立ちからジャンルに捉われない解釈、卓越されたギタープレイで熱心な音楽ファンから、また同世代のアイコンとしても注目されているシンガー・ソングライター。
自身の音楽活動以外にもKinKiKids、坂本真綾、伊藤美来、菅沼千紗、UNCHAINなどへの楽曲提供のほか、ハウス食品株式会社のテレビCM歌唱、映画「SING/シング:ネクストステージ」の日本語吹き替え版ではウサギ役として配役されている。 重要文化財などでの弾き語りツアーからフロアを沸かすDJとのユニットスタイル、エレキギターもかき鳴らす3ピースや5ピース、ジャズバンドとのコラボなど多種多彩なライブスタイルも話題になっている。
アコースティック・ギターにスラッピングを取り入れたプレイスタイルと、透明感のある歌声が各所話題になり、弱冠19歳で2018年アメリカ・テキサス州オースティンで行われた大型フェス「SXSW 2018」に出演。
帰国後、2018年8月8日に4曲入りE.P『at ONE』でメジャー・デビュー、タイトルには「Anna Takeuchiの1枚目」という意味が込められている。収録楽曲「ALRIGHT」は全国22ヶ所のパワープレイを獲得した。 2020年3月18日に待望の1st ALBUM『MATOUSIC』をリリース。収録楽曲「RIDE ON WEEKEND」はWOWOWオリジナルドラマ「有村架純の撮休」主題歌としても話題になった。
2022年3月2日に2nd ALBUM『TICKETS』をリリース。収録楽曲「手のひら重ねれば」は日本テレビ系「スッキリ」のテーマ曲として起用された。他にもJ-WAVE「TOKIO HOT 100」キャンペーンソング「Love Your Love」、フジテレビ系列「セブンルール」インフォマーシャルソングであり、FM802の2020年10月度ヘビーローテーション楽曲「+imagination」などが収録されている。 2024年3月20日に3rd ALBUM『DRAMAS』をリリース。自身も出演する大阪・森ノ宮医療大学TV-CMに書き下ろした「Bye Bye, Hello」や、ロゼット「夢みるバーム」のWEB-CM楽曲「THANK ME」、coly社の新作ゲーム「ブレイクマイケース」の主題歌「BREAK MY CASE」などが収録されている。

オフィシャルサイト:https://takeuchianna.com/

竹内アンナ・ライブ情報
"THE BEST DRAMAS 2018-2024"
7月6日(土)恵比寿The Garden Hall
開場 16:30 / 開演 17:00
[チケット] 指定席一般 ¥6,500 / 指定席学割 ¥5,000(税込/ドリンク代別)
■一般発売中 https://linktr.ee/AnnaTakeuchi

RIFF n' VOICES of ES lovers

発売されて以来、今もなお愛され続けている
ESシリーズの魅力に迫る。