THE COLLECTION: 北島健二

2022.12.26 THE COLLECTION

THE COLLECTIONとはTAOS (The Art of Strings) に登場するギタリストが所有、愛用するギブソンを紹介するシリーズです。

 

● Gibson Les Paul Classic Plus Trans Red (Year 2000)

1990年に発売されたレスポール・クラシックは、ヴィンテージ・スタイルのハードウェアを新しいレスポールに組み合わせたモデルで、グリップは1960年モデルに準じたスリムな形状。出荷時からのオープン・スタイルのハムバッキング・ピックアップは、はっきりとした音像に加えて、各ポジションに合わせて出力差がつけられている。2000年製となる北島氏のギターは、ボディ・トップにフィギュアード・メイプルを使用したレスポール・クラシック・プラス。美しい木目を生かしたトランスルーセント・レッドにフィニッシュされ、ピックガードは取りつけられていない。

音のまとまり方、チョーキングのしやすさが大きな魅力と本人が語るこのギターは、ネック/ボディのセット角は標準/やや浅めで、高めの状態にセットされたテイルピースが、ギターのテンションを和らげる方向へと導いている。使い込まれたブリッジは、ニッケル色がくすみ、メッキの剥がれたサドル上部からはブラス材がのぞいている。自分で試行錯誤したと語るピックアップの高さは、ネック側が標準よりやや高め、ブリッジ側ピックアップは出力を考慮して僅かに下げることで、ポジションごとのキャラクタをはっきりとさせている。とても大切に扱われているようで、目立つ傷等はないものの、実戦によるバックル傷がボティ裏側全体に及んでいる。

 

● Gibson Les Paul 30th Anniversary (Year1982)

凄みのあるゴールド・トップが目を引くこのギターは、レスポール誕生30周年を記念したアニヴァーサリー・モデルで、この時期に発売されていたヘリテイジ・シリーズ(レスポール80)から、翌年に発売されるレスポール・リイシューを繋ぐモデルでもある。
ヒストリック・コレクションになるまでには、この後およそ10年を要するが、当時ヴィンテージ・スタイルのレスポールに憧れていた多くのギタリストを魅了したことは想像に難くない。


ローズウッド指板に施されたインレイには本物のマザー・オヴ・パールが使われ、19フレット位置に30周年を示す文字が彫り込まれている。ギブソン初となるヴィンテージ・スペックを持つPat. App. For TM ハムバッカーは、その口当たりの良さとファット/メロウなトーンから多くのファンを生んできた。
1ピースのマホガニーから削り出されたネックは、時代ならではの無骨さを残すが薄めのグリップ。フレットは前記のチェリーよりも一回り太めとなる1982年の標準サイズ。チューナーは、シャーラーのM6が取り付けられていた跡が残るものの、ヴィンテージ・タイプへと戻されている。ボディ・トップのアーチは深く、ネックのセット角は標準。両ピックアップ共にセッティングは高めで、特にブリッジ側はポールピースの高さを少し上げた状態に調整されている。ゴールド・カラーが沈んだ色合いへと経年変化していることに加えて、トップ外周部分にはラッカー塗装ならではのウェザー・チェックが生じており、今やヴィンテージの風合いとなっている。

 

OWNER MODEL DESCRIPTION YEAR OF MANUFACTURE OR SHIPPING SERIAL NUMBER NUT WIDTH NECK THICKNESS BODY THICKNESS STRINGS HEIGHT@12TH FRET PICKUP DC WEIGHT STRINGS
1st 12th NECK END LOW-E HIGH-E RHYTHM TREBLE
KENJI KITAJIMA GIBSON USA LES PAUL CLASIC+ TRANS RED 2000 002875 43.34mm 20.98mm 22.4mm 51.57mm 50.3mm 1.4mm 1.4mm 8.3 14.45 3.79kg EXL120+ 0095-044
KENJI KITAJIMA GIBSON 35TH ANNIVERSARY LES PAUL GOLDTOP 1982 A0076 43.66mm 21.09mm 24.38mm 50.16mm 49.85mm 1.6mm 1.6mm 7.06 7.08 4.55kg EXL120+ 0095-044

 

文:關野淳(ヴィンテージギター・エキスパート、ライター)
ギター・インスペクション:福嶋優太 Gibson Brands Japan