ギブソン・ギタリスト偉人伝:ディッキー・ベッツ

Michael Leonard | 2019.05.01 - 特集記事

今回はGibson.comによるアーカイヴ記事(2017年12月当時)をお届けします。

Gibson.comにて不定期連載を続けております当企画では、ギブソン・ギタリストの偉人と称賛されたプレイヤーのキャリアに敬意を表しています。今回の主役は、御年74歳を今週に迎えたばかりで、真の実力に反し過小評価されることもある偉人、オールマン・ブラザーズのディッキー・ベッツにスポットライトを当ててまいります。

 

ディッキー・ベッツとは?

ディッキー・ベッツは、俗人からすれば伝説的なオールマン・ブラザーズ・バンドのもうひとりのギタリスト、デュアンではないもうひとりのギタリストと過小評価されているかもしれません。しかし音楽通からすると、ディッキー・ベッツ(Forrest Richard “Dickey” Betts)はオールマン・ブラザーズ・バンドのオリジナルメンバーであるだけでなく、ロック史においてデュアンに全くひけをとることのない最も影響力のあるリード・ギタリストのひとりとして評価されているのです。ディッキー・ベッツが今まで公平な審理をほとんど受けたことがなかったことは明白です。また、彼自身が自分のキャリアを自ら難しいものにしてきたこともあるかもしれません。しかしながら、こと純粋な音楽性ということであれば、彼には最大級に称賛されリスナーから長きにわたり愛聴される価値が十分にあります。2017年はオールマンズのファンにとって、グレッグ・オールマンとブッチ・トラックスの死と向き合わざるをえない悲劇の年となりました。もしかしたら、存命中の今こそ、ディッキーが改めて称賛を浴びるべき時なのではないのでしょうか!

 

 

シグニチャーサウンド

ベッツはシンプルにプレイする達人です。オールマンズにおいて定番の喜びに満ち溢れたメロディシズムはベッツの存在を抜きにしては語れません。デュアン・オールマンの輝かしいスライド・プレイはさておき、ベッツは伝統のオールマンズに、ブルーズ旋律における彼の持ち味に加えカントリーやジャズ由来のスリル感をもたらしています。彼はギタリストとしての成長過程において馴染み深かったブルーグラスやカントリー・ミュージックにおいて定番である、シンプルなメジャー・ペンタトニック・スケールを主軸としてプレイしています。更に、彼はよく4音程度の旋律へと音数を減らし上昇形・下降形の旋律をプレイします。理論上は難解なことではありません。しかしながら、この方法論で繰り返し、ニュアンスを大事に粋にプレイすることは容易ではありません。試しにオールマン・ブラザーズの愛奏曲、“Jessica”、“Melissa”、“Ramblin’ Man”、“In Memory of Elizabeth Reed”、“Blue Sky”などを是非聴いてみてください。シンプルなスケールに基づいたソロをプレイする際、機械的なスケール練習とならないようにスケールっぽく聞かせないようにプレイすることは実はとても難しいのです。しかしながらベッツはこの点において達人なのです。

ベッツの持ち前のメロディシズムは、彼のプレイがいかにしてスペシャルなものになったかを読み解く鍵となります。自作した“Jessica”について、ベッツはGuitar World誌へこう語りました。“私のインスト曲では、怒り、喜び、愛情といった人間同士の交流における基本的なフィーリングの様相を表現しようと試みているんだ” “Jessica”に関しては後者(愛情)のケースでした。ベッツは 同楽曲について、自宅でハイハイする幼い愛娘を眺めている心境を捉えようと曲作りに取り組みました。勿論、実際にはそこまで単純なことではありません。“ジャンゴ・ラインハルトへ敬意を表して2本の指で爪弾きながらあのメロディを思いついたんだ” とベッツは語りこう続けました。“あの曲が結果的に上手くいったのはとても満足しているよ。一般的に見ても、良いインスト曲が書けるのは本当に素晴らしいことなんだ。言語を超越し、言葉でなくメロディで聴き手に訴えかけることができたわけだからね”

またベッツは、半音下げた音符を5音から成るペンタトニック・スケールに追加的に導入しています。勿論、マイナー3度や完全4度も加えたり(結果的には幾分好ましくない響きのヘクサトニック・6音階スケールになりますが)、経過音を加えたり、スラーでつなげたりという具合です。しかしながら、一般的にはその理論のなかで泥沼にはまって上手くいかないのが普通のはなしです。紛れもなく明白なことは、ベッツは実際に最上級の共演者・ギタリストのひとりに数えられるデュアン・オールマンとツイン・リード・ギターのコンビを組んでいたということです。“我々は意識的にはプレイしてなかったよ” とベッツはGibson.comに語りこう続けました。“我々は、互いがインプロヴァイズ(即興)を始めた時、バッチリ上手くいくとすぐに分かったんだ。だから分析などしなかったよ。デュアンはアーバン・ブルーズに対しより武断的・戦闘的なアプローチだったんだ。一方、私のほうは、ロックの演奏にウェスタン・スイング的な軽快さを掛け合わせたスタイルだったんだ。結果的に互いの異なるスタイルが美しくフィットしたということなんだ”

ベッツのトーンもまた、初期のオールマンズのレコードにおいて伝説的価値を帯びていました。彼の天空を舞う最上のトーンを追求する姿勢は、一件無縁に見えるきっかけによって突き動かされていました。“それは子供の頃の話に遡ることになるだろうよ” とべッツはGibson.comにコメントしこう続けました。“昔はよく、父さんがどうやってフィドルのサウンドに注意を払っているのかを観察したものだ。父さんは、フィドルの魂柱の取り付け方、魂柱によるトップの持ち上がり方によってフィドルのトーンを調整する術を知ってたんだ。父さんは、コレだというトーンが得られるまで魂柱の場所をあれやこれやと移動させていたものだよ。そんなこともあって、思うに最高のトーンを追求する姿勢は自分の性格に根付いているんだ。いつだって、自分のギターサウンドのエッジは少し立っていつつクリアなサウンドであって欲しかったんだ。異なるスピーカーのあらゆる組み合わせも試しに実験したよ。もちろん、トーンの大部分は自分の手の中にあるものではあるけどね” 

更に続けましょう。ベッツには、オールマンズの強力な音源の中で、単にもうひとりのギタリストとして耳を傾ける以上の価値があるのです。今は亡きデュアンは生前このように認めていました。 “私は有名なギタープレイヤーだ...だけれど、ディッキーは凄いプレイヤーさ” ベッツのクリーンなトーン、モーダルなスタイルのギターソロという方法論は、後続のあらゆるサザン・ロック・グループに受け継がれているのです。

 

 

ディッキー・ベッツとギブソンギター

決定版的なオールマンズのアルバム群の中で、ベッツは決まってギブソン・レスポールとSGを相棒としていました。そしてその多くは、そのオーナー・持ち主と同じくらい有名な存在となりました。長年にわたりギブソン・カスタムは、ベッツがデュアンにスライドプレイ用として渡した61/62 Gibson SGのレプリカの再現に尽力してきました。ギブソン・カスタムはベッツの1957 “Goldie” Goldtopについても復刻しました。両モデルともリミテッドエディションにて生産され、今となっては入手困難で貴重なコレクターズアイテムとなっています。復刻作業についてベッツはこう語っています。“ギブソンはあのSGの復刻で見事な仕事ぶりだったよ”更にはこうもコメントしました。 “(ゴールドトップについて)所有しているオリジナルのGoldieよりも実際こっち(復刻モデル)の方が好みかもしれないな” 更に、Dickey Betts ‘57 Redtop Les Paulモデルも過去にリリースされました。そのギターは、ベッツ所有のゴールドトップが酸化による経年変化を起こしたためベッツ自ら一度塗装を剝がしレッドカラーにリフィ二ッシュしたという史実に基づくモデルでした。そのオリジナルのレッドトップは1975年、Charlie Danielsがサザンロックに捧げた“The South’s Gonna Do It Again”という楽曲にて“Richard Betts picking that red guitar”という歌詞を込めたことにより、永遠不滅の存在となりました。

 

試聴必須の楽曲リスト

もし一作だけに絞らなければならないのなら、オールマン・ブラザーズ・バンドのLive At Fillmore East でしょう。同作品は紛れもなく伝説的名作です。ベッツ本人もコメントしています。“Fillmore East は正真正銘のライヴアルバムなんだ” とGibson.comに語りこう続けます。“あのアルバムはライヴ収録後の手直しは一切無しだ。他のライヴ盤とは違ってね…。そこに収まっているのはオーディエンスだけだ。デュアンと私は本当に互いに尊敬の念を抱いていたんだよ。お互いに単に技を見せびらかすようなプレイはしないし相手のプレイを打ち消すようなプレイもしなかったよ”  デュアンの突然の悲劇によりデュアンが全楽曲に参加できなかったEat A Peach では、同様にデュアン不在を余儀なくされたBrothers & Sisters同様、ベッツの計り知れないほどの才能の端々が光り輝いています。70年代後半のDickey Betts & Great Southernと Atlanta’s Burning Downの2作品もお勧めしたい作品です。1974年のHighway Callでのベッツのソロデビューは、当然のことですがデュアン亡き後だということを考慮すると、いたし方のない出来事でした。これらのお勧めした作品群は、ベッツの音楽に初めて触れる方向けのお勧めリストです。もし皆様が既にオールマンズやベッツの熱狂的ファンでしたら、もう今までに十分に深く掘り下げて聴かれてるでしょうから。

要注目! 

オールマンズ・オーガニゼイションは、公式YouTubeチャンネルを開設しています。コチラで1982年のオールマン・ブラザーズ・バンドのフロリダ大学でのフリーコンサートの内容をご覧いただけます。ディッキー・ベッツが実際にどんな感じでプレイしているか、ご確認いただけるでしょう。きっと参考になるのではないでしょうか!

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