ギタートーンの改善に向けたチェック項目10箇条
よりよいギタートーンの実現に日夜腐心しているプレイヤー達へ耳寄りな情報です。手持ちのギターや関連機材を確実に最大限活用できるよう、お金をかけずにプレイヤー自らが日常的に行えるちょっとしたコツが多々あります。さあ、皆さまのお持ちのエレクトリックギターのパフォーマンスに違いをもたらす10カ条の注意点を一緒に考えてみましょう。
1 – ピックアップの高さを確認してみよう
弦に対するピックアップの近接具合は、どのエレクトリックギターの場合でも出音の状態に大きな影響を及ぼします。大まかな経験則からいえば、ピックアップを弦に近づけるほどギターの出力は大きくなります。ところがあまりにも近づけすぎてしまった場合、みすぼらしく不快なトーンをもたらします。極端な場合、ピックアップの磁石が弦を引っ張ってしまうほどにピックアップが弦に近い場合、奇妙で不協和なハーモニクスやサスティンの減退をもたらします。
素晴らしいことに、ほとんどのピックアップにつきましてピックアップ全体の高さ調整が可能で、ご自分にフィットするようプレイヤー自ら調節いただけます。ギブソンが推奨するのは、ネック側ピックアップの上部と弦の下部との間隔が3/32インチ(2.38ミリ)の隙間となるよう、ブリッジ側のピックアップの上部と弦の下部が1/16インチ(1.58ミリ)となるよう調節することです。ところが、多くの腕利きのギターテクニシャンはその値よりも若干離すように調整することでしょう。出力のバランスが相対的にとれるよう、弦とポールピースの距離感についてハイE側よりもローE側のほうにより多くのスペースが確保できるように調整するでしょう。もしくは、ギタートーンに敏感な多くのギタリストがそうしているように、ピックアップを更に低く下げる(つまりポールピースと弦の隙間が増すのですが)ことで全体のサウンドの改善につなげ、サウンドの豊かさと明瞭さを向上させる(その場合、出力は僅かに下がりますが、アンプのヴォリュームを少し上げれば良いでしょう!)という方法論も一考の余地ありです。先ずは、皆さまご自身でいろいろと調整を試されることをお勧めいたします。そうすることで、皆さまにとってベストな調整状態をご理解いただけることでしょう。
2 – コードのプラグを清潔に保とう
近年、プレイヤーの中には高品位なハイエンドケーブルに大枚をはたく方も少なくないです。大抵のプレイヤーは、少なくともギターとアンプの間(もしくはギターとペダル類とアンプの間)にクオリティの高いケーブルを使用することの重要性については理解しています。しかしながらこういったハイエンドケーブルのサウンドの忠実度は、そのジャック部分が大気やプレイヤーの手より付着する塩分、オイル分、湿気などに長年晒され汚れることで、何年もの使用の間に劣化していくということを理解しているプレイヤーはあまりいません。
数ヶ月ごとに、接点復活剤か高品質な接点クリーナーを糸くずのでないクロスにひと噴きしゴシゴシと擦ってみましょう。そうすれば、あっという間にケーブル類は再びそのベストのパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう(ご注意として、潤滑剤の一種ではなく用途に即した接点クリーナーをご利用ください)。
3 – 2のチェックの最中、ケーブルの方向性を確認しよう
本件は一件奇抜に聞こえるかもしれません。しかしほんの数分でご自分でチェックできることなので、何も面倒なことではないです。更にいうと、これは機材の世界で最も尊敬を集める、トーンに関する第一人者である故ケン・フィッシャーによって推奨されたことです。筆者自身でも試しましたが、ケーブルごとに僅かな違いが存在することを確認しました。ですから仕方ないですが、まずやってみることをお勧めします。フィッシャーの理論によると、ギターケーブルの内部で使われている信号線は製造工程の中で方向性がつけられるので、信号線を通過するエレクトロン・電子、つまりギターのピックアップからの信号は、二通り中一方のある方向性の場合により効率よく流れるだろうということです。それによって、ある方向性の場合にもう一方の逆の方向性のケースと比べて、ケーブルのサウンドがよりよくなるということです。
お手持ちのギターを、部屋の中で最高のサウンドが鳴るように調整されたアンプに直接つなぎ、ギタートーンの印象を十分に把握できるよう長時間プレイしてみましょう。主にその明瞭さや高域成分に注意を払いながらです。そして、最初にアンプのところで素早くケーブルを抜き取り、次にギターのところで抜き取り、ケーブルの向きを変えてからギターとアンプを繋ぎ、もう少し演奏してみましょう。何かしら違いは聞き取れますか?もし違いが聞き取れるのならば、どちらの方向性のときに耳馴染みが良いのかをメモしましょう。もしその違いが聞き取れないとしても、それでもお時間を数分無駄にしてしまっただけのことです(電子ケーブルの中には、その電子的な方向性を示している外側の絶縁部分にブランドネームや伝説の偉人の名がプリントされて製造されているものがあります。しかし、それが本当なのかどうか判断することは難しいです。ですので、やはり皆さま自身でテストしてみるのがやはり最良の方法なのです)。
4 – お手持ちのギターのジャック部を清潔に磨こう
ちょうど皆さまのギターケーブルのプラグ部が汚れ易いように、お手持ちのギターのジャック部についても同様のことがいえるのです。通常その部分は目に触れることはないので、チェックされることはなかなかないと思います。ジャック部のクリーニング作業に取り組む際、埃まみれのクロスよりも綿棒を使用される方が遥かに好ましいです。布地を使用されますと、大きな抵抗により繊細なジャックの先端部の形状を損ねてしまいかねないためです。
綿棒に接点復活剤をひと噴きしてください。(手順としては、上記2の内容をご確認ください) 次に、ジャックの接点の先端部となる“V”に対応する部分を軽く擦ります。接点復活剤がこびりついた汚れに浸透するよう適度な圧力を加えながら進めます。注意点としては、ジャックの先端部を曲げてしまわないよう適度な力で、となります。(もしジャック部に触れることができるのならば、ジャック部の形状が変わらないよう、指でジャック部の裏側を支えながら作業されることをお勧めします) もしお持ちのギターのジャック部にアクセスすることが難しい場合や、ジャック部を覆い隠しているコントロールカヴァー類を取り除くことに自信が持てない場合、そういった場合は綿棒をジャック部に挿入し、適切にジャック部をクリーニングできるよう手探りの感覚に頼らざるを得ないでしょう。同様に、アースやコールド線との確実な接点をとれるよう、ジャック部を取り囲むボディの内部もクリーンに保つよう清掃することもお忘れなく。
5 – 弦を一直線にまっすぐに張ろう
これはちょっとした秘訣です。しかし、あまりにも多くのギタリストが見過ごしている習慣です。お手持ちのギターに新しい弦を張る時、テイルピースのアンカー部からブリッジサドルを横切り、ナットに至るまで、弦が一直線に走るように心がけてください。更に弦をタイトに巻き上げるストリングポストに至るまでを含め、弦の端から端までの全長の中でいかなる部分においても、弦のよじれ、曲がり、ねじれがないよう確実にチェックをしましょう。
弦のよじれやねじれについて、弦がタイトにチューニングされた状態では見つけられないような場合であっても、弦の本来有しているべき自然な振動・振幅を阻害し歪めてしまう可能性があります。それゆえ、本来備わっているトーンやサスティンのポテンシャルを活かしきれないかもしれません。皆様が新しい弦のボールエンドをテイルピースにセットする時、ほとんどの弦はその全長を通して僅かばかりの弧を描くようになっているはずです。弦がもともと小さなパッケージの中に収まるように円を描いて巻かれていたからです。しかし、弦の丸まったりねじれたりしている部分を無理にまっすぐにしようとはしないでください。弦のなだらかに弧を描いている部分を、ギターのボディや指板上でブリッジからナットに至るまで横切らせましょう。そして弦をしっかりと巻き上げ調弦しながら、弦の持つ自然な高品位を保つように心がけましょう。
6 – ビグズビー搭載ギターの場合、弦交換時、弦を予め曲げておこう
ビグズビーは今も変わらずに、多くのギブソンギターに搭載されている人気のヴィブラート装置です。そのセッティングが適切であれば最高の状態で機能します。しかしながら、このクールでレトロな外観のパーツは、その使い方や弦の張り方に十分な注意が払われていなければ、容易にチューニングの不安定という問題の原因となります。
弦を張り替える前に、弦のボールエンドがビグズビーのローラーバーやアンカーピンにぴったりくっつくように、以下の2つのコツを試してみてください。ひとつめは、先の尖ったラジオペンチ2本を両手に持ち、ボールエンドのあたりを弦全体の角度に対して適切な角度になるよう徐々に曲げます。次に、その折り曲げられたボールエンドを親指で掴み、弦半インチ分を逃がし、自然な弧を描くように徐々に曲げていきます。ボールエンドをビグズビーのアンカーピンにひっかけて留めて、ローラーバーのあたりに弦を通す際、ずっと容易に弦がビグズビー機構にフィットするようになるはずです。そしてチューニングの安定をより迅速に得られるようになるでしょう(ビグズビー搭載のギターへの弦交換におけるもうひとつのコツは、ストリングポストに弦を巻きつけて弦を巻き上げている間、カポを用いて3フレットか4フレットあたりに装着し、弦が暴れないようにすることです)。
7 – ギターに搭載されたコントロール類を活用しよう
これはある意味当然な内容ではないでしょうか? しかしながら、ギターのヴォリュームやトーンコントロールを無視しがちなプレイヤーやゲイン・EQの設定をアンプやペダルのみで行いがちなプレイヤーにとっては新たな発見となるでしょう。2ヴォリューム2トーンからなる伝統的なギブソンの4個のノブによるコントロール類と2基のピックアップを操る3ウェイスイッチは、想像以上に幅広いトーンの可能性を提供しているのです。
ギターのコントロール類の実験は、お気に入りのアンプ一式を使用した上で実践されるべきです。もし皆さまが主にロックをプレイするプレイヤーでアンプを飽和したサウンドに設定している場合、アンプやペダルボードのコントロールを触れずともギター側のコントロールだけで幅広いゲインレベルの可変幅を得られるでしょう。ひとたびその環境が整ったら、各ピックアップのヴォリュームコントロールのどのポイントで、サウンドの忠実度を失うことなく完全なクリーントーンが得られるのかどうかを確認してみましょう。(たいていはヴォリュームノブで4から7あたりの間です)そして、実際に目視することなくそのポイントを感覚で掴めるようになりましょう。しばらくプレイしてみて、クリーンからリード、そしてまたクリーンへ戻したりと、自然に滑らかに移行するようふたつのポジションの間をコントロールしてみましょう。そして、僅かにクランチがかったリズムサウンドの出る中間点で止めてみましょう。次に、トーンコントロールを動かし、各々を6か7まで下げてみましょう。そして、3ウェイスイッチをセンターポジションにして、各ピックアップの異なるヴォリュームレベルやトーンレベルの間でバランスをとるよう試みましょう。
結局は、お手持ちのギターのコントロールの幅広い活用法を理解するためには、この方法がもっともとっつき易いかもしれません。これらのノブが完全にフルに振り切っているポイント、すべて10の位置を出発点と考えないでください。そうではなく、活き活きとした素晴らしくクリアーなトーンがどのポイントで得られようとも、より控えめなセッティング、ヴォリュームとトーンを5、6、7あたりにしたところを出発点と捉えてください。先ずはそのポイントから始めていただき、いつでもフルにしたときのトーンへも移行できるよう備えておきましょう。
8 – お手持ちのギターのナット溝やサドル溝に溜まった汚れを取り除こう
お手持ちのギターのナット溝やブリッジ溝にこびりつく小さい砂やべとべとの汚れや整形不良他、こういったいかなる要素もチューニングの不安定や劣化したトーンをもたらすことに繋がります。しかしながら、皆さまが実際にこういった点を最後にチェックしたのはどれぐらい前だったのでしょうか?これらの溝におけるバリや突起した状態といったいかなる物理的な変形の症状については、有能なギターリペアマンによる助けが欠かせないでしょう。というのも、皆さま自身でそういった症状をヤスリがけするのかもしくは滑らかにならすということは、もし皆さまがその作業の全体像を完全に理解されていない場合、問題をさらに悪化させてしまう恐れがあるのです。もしくは、大切なギターを完全に破壊しかねないのです。(結局は、これらのナットやサドルといったポイントは、弦が自由闊達に発音する際の両側の区切り点であったりアンカーで留まっているポイントなのです。ですから、ナットやサドルの状態は直接的に弦振動に影響を与え、イントネーションやトーン、サスティンにまで影響を及ぼすことになるのです)
皆さまがご自分で手をくだせる内容としては、ワックスが施されていないデンタルフロスを各弦の溝に注意深く走らせてみることです。前後に数回動かし頃合のよい程度の圧力を下方にかけながら進め、堆積したべとべと汚れを清潔に取り除きます。もう少し先まで進みたい方は、ドライタイプかウェットタイプのグラファイトかシリコン入りのコンパウンドをごく少量、溝に塗布し、徐々に擦り始め、弦交換を行う前に余分なコンパウンドは拭いて取り除いてください。そういったケアは、チューニング、チョーキング、アーミングの最中、弦溝が最適に機能し続けるよう助けとなることでしょう。
9 – トーンキャパシターを何種類か試してみよう
この件について、ここでは一般的なご提案内容として書かせていただきます。もしご自分で手を下すとなると、ハンダの作業や基礎的なギターテクニシャンの技術が必要となるからです。もしくは、ご自分で手を下さない場合、有能なリペアマンのところまでギターを持っていかなくてはならないでしょう。しかしながら、もしお手持ちのギターのサウンドにおける最適なトーンキャパシターの効果について検討したことがないのならば、もしくはこれらのノブについて、いつも使い道がない、得られる効果は最低限、せいぜいパッとしない程度の効果だといつも感じられているのならば、このテーマは皆さまが一段進んで研究するのにうってつけかもしれません。
お手持ちのギターのトーンコントロールに取り付けられたトーンキャパシター(短縮して“cap”といいます)により、トーンコントロールのキャラクターや可変範囲が決まります。そして、このキャパシターの値(例として.022µF vs .046µF vs. .1µF)とその構造(例としてpolyester vs. paper-in-oil)がそのキャパシターの機能に影響を及ぼします。ある特定のタイプのキャパシターがあらゆるギターにどのように作用するのかを正確に事前に読みきることは難しいですが、ポイントとなるのは(これは予測できることですが)、皆さまにとって好ましい結果を生む要素は何かを決められるよう、自分でキャパシターごとの違いがもたらす影響の度合を知っておく必要があるということです。これらの要素を考えると、どのトーンキャパシターが自分にフィットするかを決定するための唯一の実に効果的な方法は、実際に実験にとりかかり試してみることです。
ギブソン社は、オレンジドロップからハイエンドモデルで使われる復刻版のバンブルビーのトーンキャパシターまであらゆるキャパシターを使用しています。ギブソンギターの各モデルではキャパシターの精密さについてより検討されているので、ギブソンで使われているキャパシターは十分に試験・テスト済みの状態です。もしお手持ちのギターに前述の銘柄のキャパシターが搭載されていなくても、パーツ店などで入手することができるでしょう。もしくは、いろいろと研究してみて別のタイプを試すこともできるでしょう。決して大きな出費とはならないのでご自分でお試しいただくことをお勧めします。いろいろなキャパシターをとっかえひっかえ交換して試すのに一番手軽な方法は、一時的にミニチュアのワニ口クリップにハンダづけをし、数種類の異なるトーンキャパシターのリード線のそれぞれを都度触れさせるというやり方です。実際にギターで音だししながら個別のキャパシターを次から次へとクリップで留めていくのです。ひとたび皆さまのお気に入りの傾向のサウンドが決まれば、別々の銘柄のキャパシターを試してみてそれぞれのサウンドの違いを聞き分けてみましょう。
10 - 普段とは異なるピックを使ってみよう
我々ほとんどのギタープレーヤーはほぼ例外なく、シェイプや硬さなどの点でお気に入りの同じタイプのピックを使用することに拘ります。そして、こういった些細な要素の変更がいったい何をもたらすのかということに、滅多に思いを馳せることはありません。しかしながら、ここで考えてみてください。皆さまのかけがえのないギタートーンが生成されるのは、まさにこのポイントからなのです。そして、厚さや密度や素材の異なる様々なピックが僅かずつではあるがそれぞれに異なるサウンドを導き出すという事実も付け加えましょう。ギタリストであるならば、手に入る選択肢はあれやこれやと試してみるべきなのです。
おおよその目安では、より薄いピックは弦の当たるカツッとしたパッカーシヴなアタック音を伴い、より明るめで軽快なサウンドを導き出します。一方、より厚みのあるピックは、より深みのあり肉付きの良いサウンドを導き出します。どちらが皆さまにとって適切なのかは、演奏される曲や演奏スタイル次第で変わります。セルロース、プラスティック、ヴィニール、フェイクのトータスシェル(フェイクべっ甲)など異なる素材からなるピックのそれぞれのサウンドは異なります。今の今まで理想のピックについて見逃してきたのかどうか確認しようと、あらゆるタイプの厚みの異なるピックを試してみることは容易ですし、実際お金もあまりかかりません。事実、熟達したプレイヤーは皆、演奏の現場ごとに異なる音楽的なリクエストに応じて適切なピックを選択しようと、いろいろなピックを手元に置こうとするものなのです。
ギブソンについて
ギターブランドとして世界でアイコン的な存在であるギブソン・ブランズは、創業から120年以上にわたり、ジャンルを越え、何世代にもわたるミュージシャン達や音楽愛好家のサウンドを形作ってきました。1894年に設立され、テネシー州ナッシュヴィルに本社を置き、モンタナ州ボーズマンにアコースティックギターの工場を持つギブソン・ブランズは、ワールドクラスのクラフツマンシップ、伝説的な音楽パートナーシップ、楽器業界の中でもこれまで他の追随を許さない先進的な製品を生み出してきました。ギブソン・ブランズのポートフォリオには、ナンバーワンギターブランドであるギブソンをはじめ、エピフォン、クレイマー、スタインバーガー、ギブソン・プロオーディオのKRK システムなど、最も愛され、有名な音楽ブランドの多くが含まれています。ギブソン・ブランズは、何世代にもわたって音楽愛好家がギブソン・ブランズによって形作られた音楽を体験し続けることができるように、品質、革新、卓越したサウンドを実現していきます。