ギブソン・アコースティック・モデルの魅力を発信するイベント
『Gibson Acoustic Weekend』| 江口寿史×竹内アンナによるトーク・セッション&アコースティック・ライブ レポート (3月28日)

その誕生から絶えることなく革新的な挑戦を続け、世界中のミュージシャン/ギタリストを魅了し続けてきたギブソン・アコースティック・モデル。そのサウンドをリスペクトするアーティストが一堂に介するカルチャー&ライブ・イベント『Gibson Acoustic Weekend』が3月28日・29日の2日間に渡って、代官山蔦屋書店 SHARE LOUNGEで開催された。本記事では、3月28日に行われた、漫画家/イラストレーターの江口寿史と、シンガー・ソングライターの竹内アンナのトーク・セッション&竹内アンナのアコースティック・ライブの様子をレポートする。

文: 金子 厚武
撮影:横山 マサト

会場に入ると眼前に、カスタムショップ、ヒストリック・コレクション、モダン・コレクション、オリジナル・コレクションとシリーズによって区分されたJ-45、L-00、SJ-200、Hummingbird、Dove Originalといったギブソンの名機がずらりと並び、ギター好きならずとも心躍る光景が広がる。

写真撮影も可能で、SNSには「#アコギブソン」のハッシュタグとともにお気に入りのギターを載せたポストが溢れかえった。またラウンジの奥には実際に試奏もできるコーナーが設けられ、場内にはトータル35本ものギターを常設。音楽をはじめとした様々なカルチャーを紹介する代官山蔦谷書店の雰囲気をよりゴージャスかつ、華やかに彩った。

江口寿史×竹内アンナ トークセッション

初夏のような陽気となった本イベントの初日、MCタカノシンヤによる呼び込みから、漫画家/イラストレーターの江口寿史と、シンガー・ソングライターの竹内アンナがアコースティック・ギターに彩られた花道を通りながら、それぞれ登場。大きな拍手があがった。

お互いのファンを公言する初対面の2人の貴重なトークセッションが開幕。 江口と竹内がステージに上がると、「お互いを知ったきっかけ」からトークがスタート。竹内は、江口の描き下ろしたShiggy Jr.のアルバムのアートワークを挙げ、「ポップでキュートでかわいい」と話した。

一方江口は、竹内を知ったきっかけをSpotifyのおすすめ機能だと語り、「アンナさんは声もすごくいいし、メロディーもギターもボーカルも跳ねている感じがかっこいい」と絶賛。「普段プライベートでどのような音楽を聴いているか?」という質問には、江口がルーツにある細野晴臣を挙げ、「絵を描くときは、夜中の2~3時でもめっちゃ歌っています」と笑いながら語り、竹内は中国など日本以外の国のプレイリストを聴いて、新しい音楽をチェックしているとの回答が。

竹内から江口への「アーティストからアートワークの依頼を受けたときの制作順序」についての質問には、「Gmailのアドレスで直接アーティストとやりとりをしている」という話から、Shiggy Jr.や銀杏BOYZとのエピソードが披露された。

なかでも、カジヒデキからは江口に「最高傑作ができたので、アートワークをお願いします」との連絡があったそう。その言葉を受けて竹内が「私も江口さんのGmailに連絡してもいいですか?」と話すと、江口は「最高傑作ができたら」と返し、今後の期待に場内から拍手が起こる一幕も。

江口は竹内に対し、ギターを始めたきっかけについて質問をし、竹内は当時BUMP OF CHICKENが好きで、中1のときの誕生日プレゼントでアコギを買ってもらったエピソードを披露。江口も吉田拓郎に憧れた話をしつつ、竹内のアコギの腕前に「憎たらしい。羨ましい」と返し、場内からは笑いが起きた。

加えて、ギブソンとの出会いについて聞かれた竹内は、2年くらい前に楽器屋さんを回って、初めてのエレキギターとしてES-335を購入したことを語った。さらに、今回のアコースティック・ライブで演奏するマーフィー・ラボの1942 Banner J-45 Light Agedを紹介。

マーフィー・ラボは、最新のエイジング技術を用いて新品でありながら、ヴィンテージ・ギターの外観・手触り・音色を再現したシリーズ。ギブソン生え抜きの熟練した職人がモンタナ工場で手作りで仕上げた、最高峰に位置する存在である。

1942 Banner J-45は、ギブソン・アコースティックのフラッグシップ「J-45」がデビューした1942年当時の仕様を再現したモデルで、ギブソン・アコースティックの歴史と、最新テクノロジーが融合した最強のモデルと言っても過言ではない。

竹内はこのスペシャルなギターに対して、「初めて弾かせていただいて、最初の一音をジャーンっと鳴らしたときに、そこにいたみんなが『わぁ、すごい』と口を揃えて言うくらい、本当に鳴りがいいギター」と語った。

そして話題は、江口が昨年、2024年のギブソン130周年を記念して描き下ろした、レスポールガールとフライングVガールのスペシャルアートワークに焦点が当てられた。竹内はこの日のスタイリングについて、「(レスポールガールに)寄せて来ました」と明かし、ここでも会場は拍手に包まれた。

この後もトークは続き、ジャンルこそ違えど、イラスト/漫画と音楽、それぞれの創作活動における共通点、続けるコツや完成の見極め方などについて、真面目な話からユーモラスなやりとりまで、さまざまな角度から語られた。

作り手同士ならではの感覚の共有が繰り広げられる中、1時間弱のトークセッションはあっという間に終盤を迎え、最後に「これからチャレンジしたいこと、今年やりたいこと」について聞かれると、竹内は「音楽活動はもちろん、音楽以外にも自分を発信する場所を作りたい」と話し、江口は「今年は漫画を描きます」と宣言。さらには「アンナさんの絵を描きたい」という言葉に、竹内が「描いてもらえるようにいい曲を作ります。頑張ります!」と応えて、貴重なトークセッションが締め括られた。

竹内アンナ アコースティック・ライブ

小休憩を挟んでの竹内によるアコースティック・ライブは〈TOKYO NITE〉からスタート。トークセッションで江口も竹内の「跳ね感」を褒めていたが、スラップにも近いアタック、強めのパーカッシブな奏法によるグルーヴが抜群に心地よく、クールとキュートを併せ持ったボーカル・パフォーマンスでも会場を魅了した。

ライブ・パフォーマンスでは初めて使うことになる、1942 Banner J-45 Light Agedについては、「誰でも弾きやすい。最初の一音を鳴らしただけでも『私、ギター弾けるかも』と思わせてくれるすごいモデル」と話した。

続いてはTLCのカバー〈No Scrubs〉を披露。繊細なアルペジオを奏でつつ、ギター一本でも思わず体を揺らしたくなるノリを生み出していく。J-45の生音の良さに触れ、「欲しいギターが増えることは自分の目標になる。このギターが欲しいから、そのためにもっと頑張ろうと思える」と語った一幕も印象的だった。

ここからはピックを用いてのコードストロークで〈Lovin’ Drivin’ Darlin’〉を軽快に奏でた。「この15分くらいでまたギターが上手くなったような感覚。何十年も使い込んだような味のある音」とJ-45の感想を語ると、デビュー曲の〈ALRIGHT〉を軽快なカッティングで続けていく。「しっとりと終わろうと思っていたけど、弾いていて気持ち良くなってしまい、ストロークの曲に変えていいですか?」と話し、急遽最後に演奏されたのは〈Free! Free! Free!〉。力強いストロークとラップも交えた歌唱にこの日最大の盛り上がりが生まれた。アウトロでは「弾くのが気持ちよくて終わりたくない」と笑顔で話し、盛大な拍手と歓声の中でアコースティック・ライブが終了した。

最後にもう一度、江口と竹内の2人がステージに上がると、翌日に誕生日を迎える江口に竹内から花束が渡される場面もあり、『Gibson Acoustic Weekend』の初日は春の日差しのように温かなムードで幕を閉じた。

3月29日「ACOUSTIC LIVE SHOWCASE」レポート記事に続く。