「無骨な印象もあるけど、親しみやすい優しさも感じる。」

小学生の頃にギターを弾き始め以来、ずっとギターを側に置き続けてきた筋金入りの“ギター好き”である山本を惹き付けたギブソンならではの個性とは?その音色への愛着を語ってもらった。

取材、文/井戸沼尚也
写真/星野俊

昨年末に新作EP『U TA CARTE』をリリースしたシンガー・ソングライターの山本彩。女性アイドル・グループ、NMB48の元キャプテンとしても知られる山本は、アヴリル・ラヴィーンの影響でギターを手にしたギター女子としても有名だ。ギター好きだけあって、これまでに数々のギターを手にしてきた山本だが、現在アコースティック・ギターはギブソンの“1957 SJ-200”を愛用しているという。今回、山本に愛器との出会いやギブソン・アコースティック・ギターの魅力について話を伺った。

惹かれたポイントは音外観はむしろ後から

──山本さんがギブソンの1957 SJ-200を手に入れたのはいつ頃ですか?

2024年の秋のアコースティック・ツアー“Organic”の少し前ですね。

 

──きっかけは何だったのでしょうか?

その年の夏にアジア・ツアーをやらせていただきまして、その時は自分のギターを1本だけ持って行ったんです。向こうでもギターを1本レンタルして、それを使い分ける形にして。行く先々のライヴハウスで違うギターを使わせてもらって楽しかったんですけど、台湾だったかな、そこで借りたギターがギブソンのSJ-200だったんです。

──そのギターが良かった?

アンプに繋ぐ前から“良いな”という感覚があって。実際にリハーサルが始まったら感触がすごく良かったんです。

──その“良かった”と感じたのは、どういった点だったのでしょうか?

音、ですね。すごく綺麗な響きに感じたんですよ。耳に刺さる感じじゃなく、低音も聞き取りやすくて、和音を鳴らした時も音色がしっくりきました。

──SJ-200は華やかなギターなのでルックスに惹かれる方も多いのですが、山本さんのポイントは音色だったんですね。

完全に音でしたね。外見は、むしろ後からでした。よく見ればブリッジが可愛いなとか(笑)。もちろん、今は見た目もすごく気に入っています。

──SJ-200はジャンボ・サイズの大きなギターですが、大きさについては気になりませんでしたか?

音が凄く好みだったので、最初はそこはあまり見ていませんでした。後々、それまで使っていたギターから持ち替える時なんかに、“結構、ごついな”みたいなのはあるにはあったんですけどね。ギブソンのレスポールなんかもそうですが、私はごついギターの方が好きみたいなんですよ。ヴィジュアル的にも惹かれる傾向があるみたいです。ごついから好きっていうよりは、好きになったギターがごついやつだったという感じです。

──SJ-200の弾き心地についてはいかがですか?

やっぱり大きいし、ネックも割としっかりしているので、めっちゃ弾きやすいかと言われると、私にとってはそうではないかもしれません。でも、レスポールもそうだったんですけど、それが自分の手に馴染んでいくのが好きなんですよ。今後もっともっと自分の手に馴染んでいって、ネックの太さやボディの大きさが気にならなくなっていくと思うので、それが凄く楽しみです。実際、ライヴでも結構使わせてもらっていて、最近も弾き語りとかで使っているので、馴染んできているかなって思っています。

ギブソンは音の粒立ちがはっきりしています

──いろいろなギターを手にしてきた山本さんから見た、ギブソン・アコースティックの魅力とは何でしょう?

高域と低域のバランスが凄く良いなって思うのと、1音1音の粒立ちがはっきりしている点ですね。コードを弾いた時にも、その和音の成り立ちを感じるというか。鳴り方に綺麗なまとまりを感じますし、ライヴハウスでも響きやすいと思いました。あとは、ギブソンらしいドシッとしたところがあるので、弾き方次第でそういう音にもできるっていう可能性を感じます。

──そんなギブソンらしい音を楽しめるツアーの映像や音源はありますか?

去年の暮れに発売した『U TA CARTE』というEPの中に“カフェモカ”という曲が入っていて、その曲でSJ-200を弾いています。

──そこでSJ-200を使った理由は?

なんかちょっと秋冬の季節感のある楽曲で、カフェモカの温かさとほろ苦さをイメージするような楽曲だったので、軽い音というよりは、どちらかと言うと深みがあってしっかりとした感じの響きが良いかなって。ギターが軸になるような楽曲でもあるので、支えてくれるような音が合うと思ったんです。それでSJ-200を使いました。音数もそんなに多くない楽曲なので、SJ-200の音がしっかりメインで聴こえると思います。

──では、最後にギブソンのアコースティック・ギターが気になるという人に向けて、何かメッセージをお願いします。

ギブソンのギターは音が良いですし、それに並ぶくらいヴィジュアルも凄く素敵だと思うんです。無骨な感じの印象もありますけど、特にアコースティックには親しみやすい優しさも感じるんですよ。良いギターを弾くことは凄く気持ちが良いことなんですけど、そういう気持ち良さって、やっぱり実際に弾いてみないとわからないですよね。だから、気になっている人がいたら、ぜひ手に取って弾いてみてほしいなって思います。私自身ももっともっと弾いていって、SJ-200の良さを引き出していきたいですね。

▼他モデル試奏コメント

取材現場では山本に他のモデルも試してもらった。同じSJ-200でもライト・エイジド加工の施されたモデル(マーフィー・ラボ・コレクション)には興味津々の様子。カッタウェイ仕様のHummingbirdにも好印象を抱いたようだった。

↑1957 SJ-200 Light Aged

音色は、これまでずっと自分で弾いてきたギターの様に感じて、弾いていて凄くしっくりきます。音色の明るさが、“爽やかさ” を演出している感じが、今使用しているSJ-200と違うなって思いました。マーフィーラボの方がまっすぐで、すれていないというか、少年の様な感じの音がします。(経年で塗装上に入るひび割れを再現した)塗装も渋いですよね。

↑Hummingbird Standard Rosewood EC

高音のキラッとした感じが綺麗ですね。ストロークした時に、暴れないけど“優等生”とはまた違う感じがします。ルックスは言うことないくらい良いです!よりスマートで、スタイリッシュで、洗練されている感じがかっこいい。弾き心地は軽い感じがあります。カッタウェイなのが、座って弾く時とかに、より弾きやすさを実感します。ボディの収まり具合もいいですね。

Sayaka Yamamoto’s Gibson Acoustic

Custom Shop Historic Collection 1957 SJ-200 Antique Natural

↑本器は、ギブソン・カスタムショップ・ヒストリック・コレクションにラインナップする逸品。1957年の仕様を踏襲したナチュラル・フィニッシュが美しい個体だ。サーマリー・エイジド・トップを採用するなど、音色もヴィンテージのフィーリングが強く意識されている。「キング・オブ・ザ・フラットトップ」と謳われるSJ-200のゴージャスなルックスと美しいサウンドは、アコースティック・ギター・ファンの憧れの的と言えるだろう。ボディはジャンボ・サイズだが、くびれが大きく弾きやすいのが特徴で、実は女性ギタリストからも人気が高い。

↑サイド&バック材にはハンド・セレクトされたフレイム・メイプルを採用。杢目が美しいだけでなく、本器の明るいサウンドにも貢献している。

↑本器には後付けでL.R.バッグスのAnthemを装着。ライヴ・ステージでも使いやすい仕様にアレンジされている。