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会場内もギブソン一色! ミュージシャン使用モデルのギター展示から、江口寿史氏によるスペシャル・アートワークまで 2本のギブソン・ギターが重なるGLIM SPANKYの骨太ロック! ファンキーでメロディアスな村松と生形のコンビネーション! レスポールの可能性を示してくれた、ハイ・ボルテージなバニラズのステージ! ギブソンを愛するギタリストたちによるライブで、その魅力を再認識!文:オカミ・タカヒデ
撮影:横山 マサト
1894年、マンドリンの製作からスタートし、その後には現代にも通じるアコースティック・ギターの名器を数多く生み出してきたギター・ブランド、ギブソン。エレクトリック・ギターとしてはロック・ギターのアイコンとも言える「レスポール」や「フライングV」を世に送り出し、それらはジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)、エース・フレイリー(キッス)、スラッシュ(ガンズ・アンド・ローゼズ)、マイケル・シェンカー、松本孝弘(B'z)といった世界的プレイヤーがこぞって手にする、音楽シーンに欠かすことのできないサウンド・マテリアルのひとつとなった。
そんなブランドが2024年で130周年を迎え、それを記念したライブ・イベント『GIBSON 130th ANNIVERSARY LIVE “Go Beyond”』が、10月30日(水)に渋谷Spotify O-Eastにて開催された。出演するのはGLIM SPANKY、Nothing’s Carved In Stone、go!go!vanillasという、人気実力ともにトップクラスの3バンド。もちろん、どのバンドのギタリストも、日頃からギブソン/エピフォン製のギターやベースを愛用していることは言うまでもない。それぞれの楽曲を彩ったギブソン・サウンドを、一夜にして心行くまで聴かせてくれるという、ファンにはたまらない趣向のライブだ。
会場内もギブソン一色!ミュージシャン使用モデルのギター展示から、江口寿史氏によるスペシャル・アートワークまで。
まず会場に入ると、エントランスでは本日出演するミュージシャン所有のギターが出迎えてくれる。亀本寛貴(GLIM SPANKY)の「レスポール・デラックス」、生形真一(Nothing’s Carved In Stone)や柳沢進太郎 (go!go!vanillas)の「ES-335」など、ズラリと並んだギター群は圧巻だ。使い込まれた現物を触れられるほどの距離で見ることができるとあって、多くの来場者がまじまじと見つめては写真を撮っていた。
亀本寛貴(GLIM SPANKY)と柳沢進太郎 (go!go!vanillas)も本番前に姿を見せた
もうひとつ注目の的となっていたのが、漫画家/イラストレーターの江口寿史氏によるスペシャル・アートワークだ。ギブソンを代表するギターである「レスポール」と「フライングV」を持った女性を描いたもので、ハードなギターとキュートな女子というコントラストは、まさに江口氏の世界観。このアートワークを使った限定グッズも展開しており、こちらも興味津々にチェックしている人がたくさんいた。ギブソンにはまだまだ個性的なルックスのギターがあるわけなので、ぜひ今後も新しいイラストを見てみたいと思う。
2本のギブソン・ギターが重なるGLIM SPANKYの骨太ロック!
開場から約50分、ついに『GIBSON 130th ANNIVERSARY LIVE “Go Beyond”』のステージが開演する。1バンド目は、男女ロック・デュオのGLIM SPANKYだ。ゆったりとした「Circle Of Time」で始まり、ギターの亀本は「ES-345」を手に中域に太さのあるクランチで楽曲を盛り立てる。
「Breaking Down Blues」でのパワーのある松尾の歌声にもよく合うトーンだ。「怒りをくれよ」では黒のレスポール・カスタムに持ち替えたが、これがまた革ジャン姿の彼のシルエットとよく似合う。「ギブソンが楽器を作ったからロックが進化した」と亀本が言うように、サウンドはもちろん、ルックスでもロックのカッコよさを表現できるのがギブソン・ギターの素晴らしいところ。
セットの中盤には、オーディエンスをさらに盛り上げる演出が繰り広げられる。go!go!vanillasより、柳沢がゴールド・トップの「レスポール」を持ってジョインしたのである。ステージ中央でギタリスト同士が対峙し、ギター・バトル風セッションから始まったのは「愚か者たち」だ。本曲では松尾もギターを携えていたのでトリプル・ギター体制となり、やはりその音圧は抜群。ギタリスト同士の掛け合いによる相乗効果も生まれ、ファンはいつもと違うレアなアレンジを大いに楽しんだのだった。
松尾はハミングバードについて「ポロンと弾くと曲が生まれる」と語ってくれたが、この日はエレキを軸にプレイ。特に「大人になったら」で手にしていた「レスポール・スペシャル」は、中学3年生のときに父親の友人からもらったという思い出の一本。そのクリアなトーンにギラリとした亀本のクランチが重なり、彼女たちの原点にも近い生々しい音楽が紡がれていった。ラストはアップテンポな「ワイルド・サイドを行け」でフロアを熱くし締めくくった。なお、今回はサポート・ベーシストもノンリバースのサンダーバードとギブソン仕様バンドだったことも追記しておこう。
ファンキーでメロディアスな村松と生形のコンビネーション!
続いては、今年2月に2度目の日本武道館公演も大盛況に終えたNothing’s Carved In Stoneが登場。ギタリストの生形はダイアモンド型fホールが印象的な自身のシグネチャー・モデルである「ES-355」を、村松拓はアームユニット付きの白い「SG」を手に、オープニングから「Spirit Inspiration」のアッパーなサウンドでフロアを一気に盛り上げていく!村松はストロークを中心としたプレイで自身の歌声を支え、生形は空間系エフェクトを生かした多彩なアプローチで、やはり楽曲を彩る。ベースとドラムがグルーヴを作っていく「Like a Shooting Star」ではラフさも交えソロもリズミカルにと、ギタリストとしての引き出しの多さを早くも披露してくれた。
セットはノンストップで進み、ノンリバースの「ファイヤーバード」に持ち替えた「Challengers」にて高域にも丸みのある太いトーンを聴かせ、中域の甘さが耳を惹くリフィニッシュされた「SGカスタム」での「Will」ではストローク一発で存在感を見せるなど、楽曲ごとに音と演奏で会場を大いに盛り上げていった。なお、ギブソン製のベースではないものの、"ひなっち"こと日向秀和が繰り出す力強いスラップは、パフォーマンスの重要な要素であったことを付け加えておきたい。
16ビート系ナンバー「Out of Control」でキレのいいカッティングを聴かせ、ラストはファンとコールを共にした「Dear Future」でステージを降りたナッシングス。35分という短いステージながら、MCは最小限に抑えられ、熱気あふれるノリと力強いロックが共存する、非常に見応えあるステージだった。
レスポールの可能性を示してくれた、ハイ・ボルテージなバニラズのステージ!
ギブソンの130周年を記念したライブも、いよいよgo!go!vanillasが最後のアクトとなる。多幸感満載のSE「RUN RUN RUN」で入場してきた彼らは、そのままの勢いで「平成ペイン」に突入。トリのステージともあり、会場全体も熱気に満ち、観客の声援がさらに高まっていった。ギターの柳沢は先に登壇したゴールド・トップの「レスポール」で、軽やかなストロークを聴かせていく。レスポールに「太くて粘りのある音を豪快に鳴らす」というイメージを持っている人は多いだろうが、バニラズはツイン・ギター体制になることが多く(このときもボーカルの牧達弥がエピフォンのコロネットをプレイしていた)、さらにサポート・キーボードが加わることで、音の帯域をうまくバラけさせたシャープなトーンで歌を気持ちよく支えるアプローチがとられていた。この楽器の持つ多彩な表現力が存分に引き出されていたと言える。
柳沢のギター1本となった「SHAKE」では、ギラッとしたハイが映えるカッティングを披露。ステップを踏みながら体全体でプレイし、長谷川プリティ敬祐のスラップとともに楽曲をより盛り上げていく。MCにて牧は「ギターを始めた頃からギブソンは花形だった。世の中にはいろいろ溢れているけど、憧れでいてください!」と熱いメッセージを発し、また柳沢はセット進行中に「ファイヤーバード」も手にするなど、彼らもまた、ギブソンをこよなく愛するバンドだ。
本篇ラスト「カウンターアクション」ではツイン・ギターがステージ中央で背中を合わせリードをとり、古き良きロックも感じさせていく。一旦ステージを後にし、アンコールで再び登場すると、ラストナンバーとして「エマ」を披露。キャッチーな “E・M・A” コールが響き渡るポップなチューンに、フロア全体が幸福感に包まれる。コーラス部分ではテンポが倍速になり、一層アッパーな展開に。弦楽器の3人が体を寄せ合いながらテーマ・フレーズを奏でる姿は、このイベントの盛り上がりを凝縮したようなラストシーンとなった。
ギブソンを愛するギタリストたちによるライブで、その魅力を再認識!
ギブソン創立130周年という記念すべき年に開催された、ライブ・イベント。しかし、ときに出演者が全員ギブソン・ユーザーだった……なんて対バン・ライブも、決して珍しいわけではない。今回登場した3バンドのミュージシャンたちも、きっと自然な成り行きでギブソンの楽器を手に取ったことだろう。
ひと口にロックと言っても多様なサブ・ジャンルがあるように、ギブソンの楽器にも、どのシーンで使っても最高の仕事をしてくれる一本がある。今回は周年での催しとなったが、こういった企画ならば、ぜひコンスタントな開催を期待したい!
Go Beyond with GIBSON!
GLIM SPANKY公式サイト:
https://www.glimspanky.com/
Nothing's Carved In Stone公式サイト:
https://www.ncis.jp/
go!go!vanillas公式サイト:
https://gogovanillas.com/