2024年、創立130周年を迎えたギブソンが、COEDO BREWERY自社醸造所で開催される麦ノ秋(むぎのとき)音楽祭で『Gibson Lager Stage』をプロデュース。併せて展開されたギブソン・ギターの試奏ブース『ギブソン・ステーション』を中心に、フェス2日目の模様をお届けする。

文: 田村 十七男
撮影:Ryoma Kawakami

子供から大人まで自由に弾けるギブソン試奏ブースを展開。
J-45とレスポールが人気を二分!

ジャパニーズ・クラフトビールの雄であるCOEDO BREWERの醸造所で、ビール主原料の麦を刈り取る5月と種蒔きをする11月に開催される麦ノ秋音楽祭 (注:次回は10月開催)。麦の穂が風にそよぐこの音楽フェスで、創立130周年を迎えたギブソンがGibson Lager Stageをプロデュースしたのは1日目のレポートでお伝えした通り。2日目のステージにも2組・4名のギブソン・プレイヤーが出演し、味わい豊かなビールと音楽の最高な相性を示してくれた。 その様子をお伝えする前に、今回ギブソンが提供した特別な体験を紹介する。

Gibson Lager Stageの脇に設けたブースの中には、ギブソンのギターがずらりと並んでいた。ロックミュージックのアイコン的存在のレスポールや、伝統的アコースティックギターのJ-45など、常時複数本のギターをブース内に用意し、来場者に自由に弾いてもらう機会を設けた。いわばビール醸造所内の出張楽器店という体裁だが、この試みの貴重さは、ギターを物色した経験がある人なら深く理解できたに違いない。

ギターが欲しくなった場合、試し弾きをしたくなるのは当然のこと。そのため楽器店に足を運ぶのだが、店員さんにいきなりギブソンを弾かせてほしいと頼むには少し躊躇してしまう人もいるのでは?ここでは、そんなギブソンを自由に試奏できるのだ。エレキギターに至ってはミニアンプまで用意されているとなれば、触れてみない手はないはず。ギターを弾いたことがない人でも、ロックスターのように一度はギブソンのギターを手にしてみたいと思うことだろう。これも、ギブソンが130周年を迎え、新たな音楽好きをつくりたいという願いから生まれた取り組みだった。

そんな試奏ブースには、ギターを久々に弾いてみたという経験者から、ステージで演奏するアーティストを見て興味を持ったという子供まで、多くの人がこの貴重な体験を楽しんでいた。

親子でギターを手にするファミリーの姿も見られた。

ブース内では麦ノ秋音楽祭がアコースティックセット中心だったこともあってか、J-45が最も弾かれ、続いて1968 Les Paul Customを手にする人が多かった。実際に演奏した人たちからは「まさかカスタムショップのレスポールにこの場で触れられるとは思わなかった!」といった声や「アコギしか触ったことがなかったのですが、今回ギブソンのエレキを弾かせてもらえて、とても新鮮な感じがしました」といった感想が寄せられた。

そして最も印象的だったのは、大人も子供もギターを抱えると自然と笑顔になることだった。ミュージシャンたちのプレイを間近で触れたそばでギターを弾くというのも、フェスの新たな醍醐味として期待する人が増えるかもしれない。

2日目のGibson Lager Stage出演アーティストは総勢4名。 まずはa flood of circleから、佐々木亮介×アオキテツのアコギ・デュオが登場!

前日の快晴夏日から一転して、醸造所の空は雲。しかし気温は23度前後と過ごしやすく、2日目もまたビールが進む気候に恵まれた。ちなみにCOEDOのスタッフによると、このフェスでは他のイベントより圧倒的に多い、1ブースで1日700ℓのビールが消費されるという。

2日目のGibson Lager Stageは午後4時前に開幕。最初に登場したのは、a flood of circleの2人。コラボレーション・エール「音ト鳴」を片手に登場したボーカル&ギターの佐々木亮介は、鮮やかなピンクのエピフォン J-180 LSを演奏。ギターのアオキテツはブラック・フィニッシュのギブソン J-45 Customをプレイした。

ステージに登場した佐々木がまず一言。

佐々木:「俺が今日言いたいのは、ギブソンのギターを買ってくれってことと、COEDOビールをたくさん飲んでくれってこと。それから8月のライブにも来てくれってことだ」

唐突ながらもそのストレートな一言にオーディエンスからも笑いが起こった。そして始まった二人のセッションは佐々木亮介の力強く、エネルギッシュなボーカルにアオキテツの確実なプレイで寄り添う姿が印象的だった。二人だけでつくったという『Peppermint Candy』をはじめ全6曲を披露した。

パフォーマンス中、ステージを降りて芝生で寝転がって歌う姿や、曲の合間に挟む佐々木のトークに終始笑顔が絶えない時間。ライブ前にはオーディエンスと触れ合い、ファンサービスもたっぷりだ。

パフォーマンス前に子供たちと交流する佐々木亮介。

演奏を終えた二人にアコギ・ライブを始めるきっかけやギターについて、バックステージで話を聞いた。

佐々木:「世の中がコロナ禍になったとき、バンド活動ができなくて凄くストレスを感じていたんですよね。何かやらなくちゃとテツに相談したら、二人で曲をつくろうと言ってくれて、それがアコギ・ライブを始めるきっかけになりました。だからテツにはすごく感謝しています」

アオキ:「それまでアコギすら持っていなかったんです。アコギをしっかり弾いたのも二人でやり始めたのがきっかけでした。エレキはずっとギブソンだったので、アコギを弾くなら黒いJ-45以外は持ちたくなかった。それにしても光栄ですよ。自分の大好きなギターブランドのステージに呼んでもらえるなんて」

佐々木:「テツはギブソンが好きでずっと弾いてきたので、今回ギブソンがサポートしてくれるステージで演奏できたのは、メンバーとしてもすごく誇らしく思います」

二人のユニット名は『サテツ』。神出鬼没らしいので、またどこかで会えるのを楽しみにしたい。

ファンとの集合写真も撮影。

絶妙なハーモニーを響かせた、 関口シンゴのクリーントーンと藤原さくらのスモーキーボイス。

日暮れ間近で空が暗くなっても、ついに雨が降らなかった午後5時20分。最後のステージに関口シンゴが上がった。手にしたエピフォン・カジノを掲げ、あえてボディ背面を観客に向けて一言。

関口:「見てください、この杢目。とってもキレイでしょう。大学時代にJAZZに目覚めてから、セミホロウ・ボディのクリーントーンに惹かれ続けているんです」

このギター紹介から、ギブソンの130周年を祝う『ハッピーバースデイ』と自身の曲をインストルメントで立て続けに演奏。そして、直前までメインステージで歌っていた藤原さくらをスペシャルゲストとして招き入れ、ノラ・ジョーンズの『Don’t know why』のカバーと、藤原さくらのオリジナル曲『maybe maybe』を披露した。

関口シンゴが奏でる心地よいカジノのサウンドと、藤原さくらの個性的なスモーキーボイス。旧知の仲が響かせた絶妙なハーモニーを楽しませてもらった後、二人に今回のステージと音楽祭の感想をたずねた。

関口:「自分のスタイル的にクリーントーンのエレキを聴いてもらいたくて、それで今日はカジノにしました。アコギとエレキが混じり合う感じがすごくいいんですよね。USラインの現行モデルで、良いギターは弾いていてとても気持ちがいい。このギターなら、急遽出演してくれることになったさくらちゃんの歌を引き立てるのにも合うと思って」

ギターチョイスの理由を語る関口シンゴに、藤原さくらが呼応する。

藤原:「シンゴさんがめちゃくちゃ歌いやすく弾いてくれるので、歌っていて本当に気持ちよかったです。私はこのフェスの参加が二度目なのですが、COEDOビールは美味しいし、ワンちゃんもOKという牧歌的な雰囲気がとても好きですね。また絶対に出たいです」

関口:「僕は東京の西のほうの生まれなんだけど、わりと近い東松山にこんな素敵な場所があるなんて知らなかった。こういう森の中でいいギターを弾くと、サスティーンが違う気がするんですよね」

2日間に渡る音楽祭でGibson Lager Stageの最後を飾った関口シンゴと藤原さくらのステージ。日が暮れ始めた夕映に響き渡る音楽が最高なチルタイムを提供してくれた。

あえて言葉にするまでもないことだが、やはりフェスは体験を楽しむ場だ。何よりも麦ノ秋音楽祭には、素晴らしい音楽といっしょに味わえるCOEDOがある。そこに今回加わったギブソンは、130年に渡ってつくり続けてきたギターに留まらず、1本1本のギターから育まれた、分厚い音楽カルチャーとともに寄り添った。そのコラボによって起きた化学反応は確実な体験の記憶となり、また新たな歴史として誰しもの胸に刻まれていくのだろう。

麦ノ秋音楽祭2024 #Harvest公式サイト:
https://muginotokiongakusai.jp/2024harvest/

COEDO BREWERY公式サイト:
https://coedobrewery.com/

a flood of circle公式サイト:
http://www.afloodofcircle.com/

関口シンゴ 公式サイト:
https://shingosekiguchi.com/

藤原さくら 公式サイト:
https://www.fujiwarasakura.com/